雨樹一期のトイカメラの教科書 第12回 「クロスプロセスのメカニズム」
こんにちは雨樹です。まだまだ暑い日が続きますね。でも夜には涼しげな風が吹き、外では虫が鳴いています。そんな秋の気配は僕をセンチメンタルな気分にします(笑)。とはいえ、写真を撮るにはこれからいい季節でしょうか。僕は夏が好きなので、夏バテもなく、食欲も増して、汗もかいて身体はキレてます。暑い中撮ってられないどころか、よく撮る季節でもあります。入道雲が撮りたくって撮影にも出かけたり、家のベランダから撮影したりしています(外出とはいわない)。
昨年の今頃からこの夏までたくさんの写真を撮ってきました。フィルム本数は200本くらいあるのかなーと。さて、そこから選りすぐった写真を9月29日~30日に原宿のデザインフェスタギャラリーにて開催、ARTALK3にて展示致します。のっけから宣伝すいません。お近くの方はぜひお越し下さい。これがなかなかね、なかなかな展示になるはずですので。
さて本題に。今回はクロスプロセス現像について書かせて頂きます。フィルムカメラ、特にトイカメラを使っている方ならご存知な方も多いですよね。やったことはなくても、言葉くらいは聞いたことがあるかと思います。鮮やかな写真というイメージが強いでしょうか。とにかくぶっ飛んだ色ですよね。
ただ、言葉が先行しちゃって、それがどういう処理をしてるかっていうのは知らない方がほとんど。なのでまず今回はクロスプロセスのメカニズムを、そして次回にフィルム別の特徴を書いていきます。
まずクロスプロセスはフィルムが前提。デジタルクロスプロセスなんていうのもありますが、もうなんかそれは無茶苦茶です。ただのクロスプロセスされたっぽい加工です。ま、それはそれでいいと思います(笑)。僕もたまにiPhoneで撮って加工して遊んでます。簡単にいい写真が出来るけど飽きやすい。なんというか、加工するほどに自分で撮った感覚も薄れちゃうんですね。後からどうこうよりも理想はその瞬間というんでしょうか。やはりフィルムで一枚一枚、その場の雰囲気を閉じ込めるように撮りたい。そこに表れてくる目には映らない撮影者のココロをまずは大切にしたいです。
今回は少し難しいコラムになるかもしれないし、全てを覚えておく必要はないです。でもやっぱりちゃんとメカニズムを書いておこうかなと。これが書籍ならチラ見で、頭の上にハテナマークが出て、すっとばれそうです。でも連載コラムだし、飛ばした次のページはまだ白紙ですからスルーはせず目を通してくれたら嬉しいです。お口直しに、ちょくちょく写真を挟んで行きますので。
さて、いきますよ。クロスプロセスは現像方法のことです。フィルムにはモノクロとネガとリバーサルがありますね。ひとまずモノクロはおいといて。
ネガフィルムで撮れば、ネガ現像(C-41処理)します。リバーサルフィルムで撮ればリバーサル現像(E-6処理)します。って当然のことですが。
フィルムのコラムでも書いたんですが、ネガ現像すると赤褐色の反転されたフィルムになるのに対し、リバーサル現像するとそのままでも像が分かるものになります。出来上がりが違うのだから、もちろんそれぞれの現像の液や工程は違います。
一応書いておきますが、それぞれ以下のように処理されています。
リバーサルの「第一現像」とはモノクロ現像をしています。この液に浸す時間を変えることで、減感や増感を行います。他にも「水洗」と言って水洗いの処理もあります。ま、簡単に言うと、像を出して、余分な銀を落として、洗って、最後に長期保存出来る薬品に浸します。
この処理の過程を覚える必要はありません。全ての現像がこの手順という訳ではないです。自宅で現像出来るナニワのカラーキットなどはもっと単純な処理をします。とにかく雰囲気だけ伝わればオッケーってことで(笑)。厳密には液の温度や浸す時間はとても重要っだりもします。
で、クロスプロセスというのはこの過程(プロセス)をクロスすることなんですね。ネガフィルムをリバーサル現像、リバーサルフィルムをネガ現像することなんです。
ただ、一般的に言われてるクロスプロセスは、リバーサルフィルムをネガ現像すること。上の図で言うと青色の矢印です。逆(赤色の矢印)のクロスプロセスはやりません。やってくれる現像所もないと思います。やってもまぁつまんないです(笑)。色もなくなってしまい、かなりアンダーに写るので、どうしてもやるのならオーバーに撮影を。ちなみにやってみたら下記のようになりました。全滅です。旅先で撮った写真だったので泣きそうになりました。
とにかくリバーサルフィルムで撮ればいいってことです。そして注文の際に「クロスプロセス」を選択すればいいんですね。現像後のフィルムはネガと同じく反転しなくちゃ分からないものとなるのですが、通常の赤褐色とは少し違ったものになりますね。コダックは茶色っぽいのですが、富士はなんともいえない色に。
何度も書きますが、クロスプロセスは通常と違う現像です。正しくない処理をする、いわゆる誤現像なんですね。よくあるといえば語弊がありますが、フィルム全盛期の話。現像所のスタッフの方が処理するフィルムを間違えて、ネガフィルムなのにリバーサル現像してしまったり。
今よりもフィルムの種類が豊富な時代ということもあり、お客さんもリバーサルを知らずにネガ現像で注文したりと。お店もそのままネガとして処理したと。クロスプロセスはそんなミスからうまれたんだと思います(たぶん)。で、気付いたんです「めっちゃええ色になるやん」って。きっと、そんな感じじゃないでしょうか(適当)。
ただ、この処理をすることで現像液の劣化などが早まるといわれています。通常の現像所ならばネガの現像機が一台あればいいんですが、クロスプロセスすることでネガのノーマル現像の品質が落ちるかもしれない。なのでトイラボさんでは、ネガの現像機とは別にクロスプロセス専用の現像機があるんですね。これってなかなか徹底されている部分と思います。僕がはじめてトイラボさんに現像をお願いした時も、そこを見て「おー、すごいな」って感心してました。かなりマニアックな部分ですが(笑)。
さてさて、どうでしょう。ややこしいですかねー?そろそろ頭がピンクパンクポンクですよね。実は僕もネガとリバーサルを何度も書き間違えてます(笑)。
はい、ここからは簡単に。クロスプロセスするとどうなるかというとですね。色彩に革命がおきます。良くも悪くも。ノーマル現像と比べると現実離れした色になっているのが分かるかと思います。
基本的にはどんな色になるのか分からないので博打的な面があります。
一度やってしまうと、ネガのノーマル現像じゃコントラストや色彩的に物足りなくなってしまいます。博打的な要素にはまっちゃうかもしれません。予想不可能な無限の可能性は面白いです。ただ、なんでもない写真が派手になるので、自分の写真の腕があがったと勘違いしてしまう面もあります(笑)。ほんとはですね、写真の腕をあげたいのならノーマルの現像がオススメです。モノを立体的に捉える練習にもなりますから。それでもやっぱりやってみたいんだって方はいますよね。ぜひやりましょう(どないやねん)。
でも何度も書いている通り、博打的な一面があって写真が台無しになる可能性も秘めてます。僕は「クロスプロセスする人」のイメージが強いみたいなんですが(実際は5割り前後かな)、確かにこれまでたくさんやってきました。お陰で色の傾向も分かってきました。このフィルムはこんな色になるよ、こういうものを撮ればいいよと。こういうのはやめといた方がいいかなと。そんなフィルム別の彩りやコツを、次回のコラム(9月下旬予定)で書きたいと思います。お楽しみに♪
さて、私事をのっけからも書きましたが、デザインフェスタギャラリーWESTにて開催「ARTALK3」に参加します。トイラボ&nocos&雨樹一期ブースにて雨樹一期個展開催。日程は9/29(土)〜30日(日)です。当日は僕も会場にいるのでぜひ会いにきて下さいね。素敵な来場者プレゼントもありますよー。
■ ARTALK3
http://artalk.jp/
NEW OSAKA HOTEL心斎橋さんを丸ごと借り切って開催される、日本初のイベント「ボダイジュエキスポ」に参加します。開催は11/24(土)〜25日(日)。写真での参加は少なめですが、絵画やイラスト、クラフトや立体作品、とにかく前線で活躍されている「人を呼べるアーティストさん」が100組参加されます。続々と参加者が発表されているのですが、相当レベルが高いので、尻込みしているところです。いいもの作らなくては。
■ BODAIJU EXPO|ボダイジュエキスポ2012
http://expo.bodaiju-cafe.com/
詳細についてはオフィシャルサイトやブログにて。
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