わたしのカメラ三昧 第13回 ボルタ判カメラ「Anny-10」

インターネットオークションで手に入れた。
写真1で見るとおり外観は非常に綺麗だ。ファインダー対物面に2つの点状のごみが認められるが,特に支障とはならない。何となくニコンのレンジファインダーカメラを彷彿とさせるではないか?すると,向かって左の小さな四角い窓は測距用かと思われるが・・・。
写真1.Anny-10の外観(正面から)

つぎの写真は斜め前から撮ったものだ。シャッターボタンの前の四角い窓が赤くなっているのがわかるであろう。その窓の上の小さなレバー(○の中)の位置が写真1と2とでは違っているのがわかるだろうか?このレバーはシャッターボタンをロックするためのものである。つまり,多重露光を防ぐための機構である。

写真2.Anny-10の外観(斜め前から)

シャッターがロックされたとき小さな四角い窓が赤くなるのである。残念ながら測距用の窓ではなかった。
写真2で,レンズ鏡筒周囲の筋状の刻み(ローレットと言うのだろうか?)と向かって右側の小さなノブはいずれも飾りである。固定されていてまったく動かない。
このカメラを専用ソフトケースに収納したところを写真3に示す。ケースは合成樹脂製であり,非常に柔らかい。


写真3.Anny-10のケース

ここでこのカメラの仕様を確認しておこう。現物を眺めて亀吉がまとめたものを下に示す。現物を見ただけではどうしても分からない項目はインターネットその他の文献を参考にした。もちろん,間違いもあるかも知れないことをあらかじめご承知置き願いたい。

(1)名称 : Anny-10
(2)型式 : 35 mm固定焦点レンズシャッターカメラ
(3)適合フィルム : ボルタ判(35mm 幅裏紙付き)
(4)フィルム送り : ノブ巻上げ(巻き戻し不要)
(5)フィルム計数 : 赤窓式
(6)画面寸法 : 24×36 mm(実測25×36 mm)
(7)レンズ : UTACAR,単玉レンズ 50 mm f8
(8)ファインダー : 素通し(?)
(9)焦点調節 : 固定(最短撮影距離2 m)
(10)露出調節 : 手動,絞りf8,11
(11)シャッター : 回転式ギロチン(?): B,I(≒1/100秒?)
(12)シンクロ接点 : あり
(13)電池 : 不要
(14)質量 : 182 g(実測)
(15)寸法 : 約70 H×116 W×60 D mm(実測)
(16)発売年 : 1958(昭和33)年
(17)発売価格 : 1,400円
(18)製造・販売元 : 豊栄産業

動作はほとんど問題ないが,シャッターの動きがときどき不完全なことが認められた。どうもばねが油切れしているようなので少量の油を差した。その結果,動作は完璧になった。

では,試写してみよう。

まず,ボルタ判フィルムを作らなければならない。前回作ったときの残りがあるのでそれを使ってボルタ判用スプールに巻き替えた。フィルム感度100のモノクロフィルムである。
写真4は遠景である。当日は久々の晴天にめぐまれ,屋外での写真撮影には最適な状況であった。しかし,このカメラはやはり遠距離には適さないようだ。写真4である。
写真4.遠景

つぎに15~20 mほどの距離から撮ってみた。写真5である。建物などは割りによく写っているようであるが,文字が判然としない。やはり,この距離での撮影もあまり適していないといえる。画面の左右下隅が若干黒ずんで見える。周辺光量の不足だろうか?

写真5.中距離

 最後に3 mほどの距離から撮ってみた。写真6である。さすがにこの距離だと文字もはっきりしている。背景もほどよくボケている。つまり,遠景はこの「背景のボケ」に相当する程度にしか写らないということである。
 ただし,よく見ると窓枠の左側が斜めに曲がっているのがわかる。

写真6.近景

以上の試写結果を要約する。

(1)距離3~5 m程度の撮影に適しており,遠景撮影には向かない。
(2)左右下隅に若干の光量落ちが認められる。ただし,あまり気にならない。
(3)周辺の歪もあまり気にならない。
 また,カメラの機能・性能ではないが,得られた写真の一部に繊維状のごみが見られた。これは亀吉がフィルムを巻き替えたときに混入したものと考えられる。如何にごみを排除するか?今後の課題となった。

■2012年6月22日 木下亀吉

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