わたしのカメラ三昧 第30回 「コニカ 現場監督」

1.はじめに
行きつけのリサイクルショップで新たに仕入れたカメラ,「現場監督」。 このカメラはリサイクルショップでよく見かけるのだが,これまで無視してきた。その理由は,電池を使う全自動型カメラであり,特徴的なところもないからである。しかも,多くは汚れ,傷ついている。 しかし,最近になって,ちょっと気になってきたのである。写真1でその正面をご覧いただきたい。このカメラもかなり使い込まれたようである。

写真1.正面から

背面には写真2のとおり,ジャンク品であることが大きく表示されている。しかし,このカメラ,電池が装填されていて,スイッチを入れると液晶の表示が現れた。シャッターも切れるようだし,ストロボも発光した。

写真2.背面

店頭でそこまで確認したのである。価格は200円だったが,電池だけでも(新品なら)1,000円近くするだろう。レンズキャップと速写ケースを探したが見つからなかった。

2.仕様など
まず,このカメラの仕様を確認しておこう。小生がまとめたので間違いがあるかもしれない。あらかじめご承知おき願いたい。
(1)名称 : 現場監督WB
(2)型式 : AF全自動レンズシャッターカメラ
(3)適合フィルム : 135判(ASA25~3200)DXコード付き
(4)フィルム送り : 電動,自動巻き上げ,自動巻き戻し
(5)フィルム計数 : 自動リセット順算式
(6)画面寸法 : 24×36 mm
(7)レンズ : 35 mm F3.5(3群3枚)
(8)ファインダー : アルバダ式ブライトフレーム
(9)距離調節 : 自動,最短撮影距離0.8 m
(10)露出調節 : 自動
(11)シャッター : 絞り兼用プログラム電子シャッター,1/4~1/280秒
(12)シンクロ接点 : なし(ストロボ一体搭載)
(13)電池 : 2CR5(6 V)
(14)質量 : 385 g(実測値)
(15)概略寸法 : 78 H×137 W×55 D〔mm〕(突起物を除く実測値)
(16)発売(製造)年 : 1994年
(17)発売価格 : 37,000円
(18)製造・販売元 : コニカ

写真3.フィルム室

 ここで現場監督の系譜をまとめておこう。インターネットから拾い集めた。20世紀から21世紀への移り変わりあたりでフィルムからデジタルへ移行したようである。表1をご覧いただきたい。

表1.現場監督の系譜

発売年月 型 名 備  考
1988 現場監督 初代現場監督,防水・防塵・防砂・耐衝撃
1989~9 現場監督DD 二焦点式レンズ
1990~7 現場監督28 28mm, F3.5レンズ
1992~4 NEW現場監督28 35mm(?), F3.5レンズ
1993~2 NEW現場監督 35mm, F3.5レンズ
1994~2 現場監督28WB,WB 28mm(WBは35mm), F3.5レンズ
1995~1 現場監督28HG 28mm, F3.5レンズ
1996~12 現場監督ズーム コニカズームレンズ28mm, F3.5~56mm,F6.7
1998~9 デジタル現場監督DG-1 現場監督シリーズ初のデジタルカメラ,100万画素
2001~8 現場監督28WB ECO、35WB ECO フィルム式最後の現場監督(?)
2001 デジタル現場監督DG-2 211万画素

表1で、NEW現場監督28のレンズが35mmとなっているのを不審に思われるかもしれない。小生も変に思うのだが,取扱説明書にそのように記載されているので如何ともしがたい。

 

3.初期状態と問題点
 とにかく薄汚れて汚いというのが第一印象であった。凹みの部分などには泥がつまっている。シャッターボタンの近くにあるスイッチ “POWER” と “MODE” の印刷が消えていて,当初何のスイッチかわからなかった。良く使い込まれていることをうかがわせる。
 機能的なことは電池の残量も含めて店頭で点検済み。細かなことを言えばこのカメラの問題点はつぎのようになる。

写真4.軍艦部

(1)全体的に(外観も内部も)汚れている
(2)フラッシュの窓にひびが入っている
(3)パッキンがよじれている

 

4.手入れ
 まず,汚れであるが,これはもう拭い去るしかない。最初はウェットティッシュで大まかに汚れを落とし,つぎに綿棒の先にアルコールを染ませて細部の汚れを拭き取った。残念ながら,長年過酷な状況で「愛用」されたためか,期待したほど綺麗にはならなかった。
 つぎに,フラッシュの窓のヒビであるが,これはどうにもならない。同じカメラを手に入れて二個一にするしかなかろう。まあ,ヒビが入ってはいるが,通常の使用には支障がなかろう。このままでいこう。
 最後にパッキンのよじれ。パッキンはカメラの裏蓋と本体との気密の保持のために必要なのであろう。一般のカメラではモルトであるが,このカメラ「現場監督」ではそのようなヤワなものでは役に立たない。
 パッキンはゴム製であり,ビンセットで摘まんで引っ張ると簡単に外れた。そこでそのゴムと溝の中の汚れを綺麗に拭って再度溝に収めると,よじれは簡単にとれた。問題解決。

 

5.操作方法
 電池とフィルムの装填に関しては特に難しいことはない。ただし,フィルムはDXコードの表示されたものを使わなければならない。DXコードのないフィルムを装填した場合は,ASA(ISO)感度が25に設定される。
 撮影に関しても特別難しいことはないのであるが,切り替えスイッチと液晶パネルの表示などに関して若干注意しておこう。
 写真4をご覧いただきたい。シャッターボタンの下に長方形の小さな液晶表示パネルがわかるだろう。その右と下に細長いスイッチが見える。右は電源スイッチである。本来
“POWER” と表示されているはずであるが,この個体では消えてしまい,判読できなくなっている。
 液晶画面の下側の細長いスイッチは “MODE” スイッチであり,このスイッチを押すたびに以下のように撮影モードが変わる:

 ①フラッシュ・オート(一般撮影モード)
 ②フラッシュ・オン
 ③フラッシュ・オフ
 ④セルフタイマー(フラッシュ・オート)
 ⑤遠景(フラッシュ・オート)
以降は①から繰り返す。

 通常は電源を入れれば「フラッシュ・オート」モードになっているので,そのまま構図を決めてシャッターを押せばいい。
 フィルムは自動で巻きあがり,写し終えると自動で巻き戻される。もし,途中で巻き戻したいのなら,モードスイッチの右にある小さなスイッチ
“R” を押せばいい。

 

6.試写結果
 コダックのASA200のカラーネガフィルムを装填していつもの山に出かけた。当日は運良く晴天に恵まれた。
 頂上に着いて一休み。そこに犬が1匹現れた。首輪をしているが,どうも挙動がおかしい。捨てられたのか?あるいは飼い主とはぐれたのか?餌を欲しがるが,決して手の届く距離にまでは近寄らない。野良犬の態度である。
 犬の食べそうなものを放ってやりながら1枚撮った。写真5である。距離は3メートルほどだっただろうか?割と良く写っているではないか?この程度の距離が最適なのかもしれない。発色も悪くない。何と言っても背景の青空がいい。

写真5.中距離景

 <帰途まだこの犬がいたら,そしてついて来るなら家に連れて帰ってやろう>そう思いながら縦走路に踏み込んだ。
 しばらく尾根を歩いた後,振り返ると先ほど登った頂上が見えた。そこで撮影モードを「遠景」にして1枚パチリ。写真6をご覧いただきたい。まあ,そこそこと言うところだろう。

写真6.遠景

この山では毎春楽しみにしている花がある。翁草(おきなぐさ)である。今年はどうか?やっとたどり着いたところが,すでに白髪の翁になっていた。写真7である。背景に紛れて認めにくいが,3本の白髪頭をもたげた茎がお分かりいただけるであろうか?
写真7.近景

 翁草までは1メートル足らずであったと思う。このカメラとしては至近距離での撮影であった。正直なところ,この被写体では写りの良し悪しは判然としない。しかし,そこそこの写りではあろう。
他の場所の翁草もほとんど白髪になっていた。今年はやはり季節の移り変わりが例年より早いのであろう。

 

7.おわりに

 カメラの名前が独特である。「現場監督」。これだけでこのカメラの特質を余すところなく表現している。逆に,あまりにもズバリの命名なので工事用途以外には使いづらい気もする。と言うより使えないのではないかとさえ思ってしまう。
しかし,試写結果は意外であった。すべて綺麗に写った。これなら普通のスナップ用カメラとしても充分使えると思う。

 

参考文献
(1)歴史的カメラ審査委員会(編): 「日本の歴史的カメラ」,日本カメラ博物館,2004

■2013年6月12日   木下亀吉

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