わたしのカメラ三昧 第19回 「コニレットとフィルムの巻き替え」


1.はじめに
 市井の(リサイクルショップでの)中古カメラの枯渇に伴ってインターネットオークションのお世話になることが多くなった。このことはこれまでもたびたび述べた。
 それでインターネットオークションへの出品物を検索することが増えたのであるが,このことによってカメラに関する知識も増えた。また,気になるカメラもおのずと定まってくるというものだ。
 今回ご紹介するカメラもずっと気になっていたものである。コニカが小西六と言っていた頃の製品で,コニレット(Konilette)という。写真1をご覧いただきたい。35ミリレンズシャッター式蛇腹カメラであり,手のひらに乗るほどの大きさである。

写真1.コニレットの外観

ただし,このカメラに適用できるフィルムは35ミリ幅ではあるが無孔であり,さらにパトローネが135判とは違うのである。
写真では上部(トップカバー)は空色,下部は黒に見えるが,実際は下部は濃い茶色である。いずれもベークライトでできているということである。つまり,このカメラは廉価品であって,初心者・入門者向けであったようだ。それでも,「日本の歴史的カメラ」という書物に収録されていることから,かなり特徴的なカメラに違いない。
このカメラには革製の速写ケースが付属していた。写真2である。吊り紐を補強すれば今でも充分実用に耐えそうだ。
昔のカメラは今と違ってケースが豪華であった。豪華というとちょっと語弊があるかもしれない。何と言ったらいか,昔の「モノ」は一つひとつに存在感あり,丈夫で長持ちするように丁寧に作られていた。使えば使うほど味が出てくるのである。価格が安く見た目に良ければいいという発想からは得られないものである。いわば職人の技に通ずるものがあったと言えようか?

写真2.速写ケース

そのケースの裏側には,何と露出と被写界深度の表が貼られているではないか。写真3をご覧いただきたい。この一事からして,前所有者がこのカメラに愛着を持って大切に使いこなしていたということが偲ばれる。こういうカメラに巡りあえたというのも喜びの一つである。

写真3.速写ケースの内側

2.仕様など
小生の目視鑑定によると,このカメラの仕様などはつぎのようにまとめられる。なお,発売年や価格など,現物を見ただけではわからない項目については参考文献のお世話になった。

(1)名称 : Konilette
(2)型式 : 35ミリレンズシャッター式蛇腹カメラ
(3)適合フィルム : 専用パトローネ入り35 mm幅無孔フィルム
(4)フィルム送り : ノブ巻上げ,ノブ巻き戻し
(5)フィルム計数 : 順算式
(6)画面寸法 : 30×36 mm
(7)レンズ : コニター 50 mm,f4.5
(8)ファインダー : 逆ガリレオ(?)
(9)距離調節 : 目測手動設定,前玉回転式,最短撮影距離1 m
(10)露出調節 : 手動設定,f4.5~22
(11)シャッター : KONIX(手動チャージ) B,25,50,100,200
(12)シンクロ接点 : あり
(13)電池 : 不要
(14)質量 : 約280 g(実測)
(15)寸法 : 約73 H×110 W×35 D〔mm〕(突起物を除く実測値)
(16)発売(製造)年 : 1953年1月
(17)発売価格 : 5,500円
(18)製造・販売元 : 小西六(後のコニカ,現在のコニカミノルタ)

このカメラはコニレットI型とも呼ばれるようだ。その理由はこのカメラのモデルチェンジ品としてコニレットII等があるからであろう。つまり,コニレットIはIIなどと区別するためのおくり名と考えられる。モデルチェンジを時系列的に並べてみるとつぎのようになる。

コニレット : 1953,初期型
コニレット(コパル付き) : 1956,シャッターをコパル製に変更
コニレットII : 1957,トップカバーを金属製に変更
コニレットIIM : 1959,レンズをコニター55 mm,f3.5に変更し,単独露出計を搭載
コニレット35 : 1959,輸出用(?)

上記のことから,コニレットI型にもシャッターが自社製(KONIX)のものとコパル製のものの2機種あったことがわかる。

3.問題点など
この種のカメラを手にしてまず気になるのは蛇腹の状態である。ついで,シャッターの動きとレンズの状態となる。このカメラではいずれも重大な問題があるとは認められなかった。

いろいろ調べた結果,実用するにはつぎのことがらが問題点として確認された。
(1)レンズがやや曇っている。
(2)ファインダーがやや曇っている。
(3)フィルム計数ができない。
(4)適合するフィルムが手に入らない
最後の問題は,これを承知でこのカメラを入手したものである。ただし,これが今回の最大の問題であり,記事の大半をなすことになった。

4.手入れ
まず,レンズの手入れ。
前後のレンズをはずし,無水アルコールで拭いた。しかし,後ろのレンズはどうしても汚れ(カビ?)が取れなかった。そこで,ハンドソープで洗ったところ,綺麗に取れた。レンズを組み立てて裏から覗いてみると見違えるほど綺麗になっていた。やはりハンドソープは素晴らしい。(レンズの汚れにはハンドソープ!)問題(1)解決。
つぎに,ファインダーの汚れ。
実は問題(3)の対策のためにトップカバーを外したのであるが,このとき対物・接眼両方のレンズが露出したので無水アルコールで汚れを拭った。ファインダーは透明になった。問題(2)が解決。
さて,問題(3)のフィルム計数であるが,これの不動の原因調査のためにはトップカバーを外さなければならない。ちょっと躊躇したが,思い切って開けることにした。意外に簡単に外れた。写真4をご覧いただきたい。巻き上げノブを外せば,あとはねじを5本外すだけでカバーが外せた。

写真4.トップカバーを外したところ

さて,フィルム計数機構であるが,これがどうしても理解できなかった。フィルムの巻き上げは支障なくできるのに,計数文字板が回転しないのである。動作原理がわからないのでは,汚れを取り除き,注油する程度のことしかできない。どうしても原因がわからないので一旦元に戻してしまった。
一両日経って再びトップカバーを開けた。前回よりさらに子細に動きを観察したのであるが,やはりその動作原理がわからなかった。
ところが,何度も巻き上げ操作を繰り返しているうちに計数文字板が回転し始めた。正しく言うと「(いつの間にか)回転していることに気づいた」ということである。なぜかわからないが,とにかく動くようになったので問題解決!
さて,最後で最大の問題。適合フィルムの準備である。
繰り返しになるが,コニレットは専用のフィルムを使う。幅は135判と同じ35 mmであるが,パトローネが違う。135判より径が小さいのである。小生は実物を見たことがないが,フィルムはパーフォレーションがないそうで,一説によると裏紙がついていたとのことである。パーフォレーションがないのは画面寸法からうなずけるが,裏紙が付いていたというのはちょっと解せない。裏紙の必要性が考えられないのである。
今では専用フィルムは手に入らない。そこで何らかの工夫が必要なのだが,以前同じくコニカから売られていた「撮りっきりコニカ」というレンズ付きフィルムのパトローネがうまく収まるらしい。しかし,これもすでに生産中止で手に入らない。
ダメ元でトイラボさんに問い合わせたところ,幸いにも1個保存しているとのことであり,その貴重な1個を提供していただいた。
写真5をご覧いただきたい。左が普通の135フィルムで右が撮りっきりコニカのパトローネである。標準は直径24 mmであるのに対し,撮りっきりコニカは20 mmである。4 mm小さいだけなのにずいぶん細く見える。

写真5.135判フィルム(左)と撮りっきりコニカのパトローネ

まず,撮りっきりコニカのパトローネをコニレットのフィルム室に装填してみた。窮屈だが何とか収まる。しかし,裏蓋がきっちりとは閉まらない。
よって,ここでの問題点の解決のための作業はつぎの2つになる:
(4.1)フィルムを巻き替えること
(4.2)パトローネを装填して裏蓋がしまるように改造すること

写真6.撮りっきりコニカのパトローネの蓋をはずしたところ

まず,撮りっきりコニカのパトローネを分解してみた。分解とは言っても,写真6に示すように片方の蓋を外して中のスプールを引き出しただけである。蓋は加締められてないのでマイナスドライバの先などで引っかけて引っ張ればすぐ外れる。
スプールを取り出したが,フィルムは容易にスプールから外れない。それは写真7に示すように2つの穴が開いていて,その穴にスプールの突起が引っかかるようになっているからであった。

写真7.スプールとフィルムの端

巻き替える135判フィルムの先端をこれと同じに加工しなければならない。写真8をご覧いただきたい。ちょっといびつだが,これを撮りっきりコニカのスプールに挿入・固定してパトローネに収めた上,巻き取ろうという考えである。こうすると,フィルムの方向が逆になるが,一工程減る分だけ傷がついたり,ごみが混入したりする機会が減ることになろう。

写真8.フィルム先端の加工

フィルムをスプールに挿入・固定したところを写真9に示す。

写真9.フィルムをスプールに挿入・固定した

そのスプールをパトローネに収納して蓋をしたところが写真10である。鋏はフィルムの巻き癖で写りにくくなることを防ぐために単なるおもりとして置いたものである。

写真10.スプールをパトローネに収め,蓋をしたところ

ここまでできれば,あとは暗箱の中で粛々と巻きかえればよい。
元来,コニレットは12枚撮りであるが(フィルム計数も12までしかない),撮りっきりコニカのパトローネは24枚用であるから,135判の24枚仕様のものからすべての長さを巻き取ることができる。
巻き終わった後,フィルムを75 mmほど残して切り取り,先端を図11のように加工すれば完了である。問題(4.1)が解決した。

写真11.フィルムの先端を成形して完成

以上,フィルムの巻き替えについて記したが,念のため一言ご注意申し上げる。それは,ここに示したものは自分の練習として明るい環境のもとで行った作業を記録したもので,実際に試写に使ったフィルムとは違うということである。
つぎに問題(4.2)への取り組み。
裏蓋を見ると,パトローネを押さえるためのひだが2列付いていた。これが高過ぎるのである。このひだを削ればよいのだろうが,かなり躊躇した。というのは,小生はできるだけ原形を変えないというのが基本的な考えである。また,将来もし本来のパトローネが手に入ったときガタが生じてそのままでは使いづらくなろう。
しかし,そのパトローネが手に入る可能性は非常に低く,また仮に手に入ったときは詰め物をすればいいだろうと考え,思い切って1 mmほどやすりで削った。削ったところを写真12に示す。パトローネを装填して裏蓋を締めることができるようになった。問題(4.2)が解決した。

写真12.画面寸法の変更と裏蓋の加工

しかし,裏蓋を何度か開けたり閉めたりしているうちに隙間が気になってきた。よく見ると溝の一部にモルトの残骸らしきものが認められた。その残骸をはがしてさらに仔細に検分すると,2種類の材質にわかれることが明らかになった。一つはもともとからあったモルトであり,いま一つは前所有者が貼り付けたものであろう。なぜなら,後者は黒い毛糸に違いないからである。
そこで,この際モルトをすべて貼り替えることにした。残骸のモルトを綺麗に取り除き,アルコールで拭った後,習字で使う下敷きを細長く裁断して両面テープで貼り付けた。繊維くずがちょっと気になるが,これまでもこの方法で特に問題は発生しなかった。
ここまで来ると,画面寸法が気になってきた。
35ミリの標準画面寸法は24×36 mmであるが,すでに述べたようにこのカメラの画面は30×36 mmである。無孔フィルムならいいが,画像がパーフォレーションにかかってしまう。もっとも,これはまたこれで一つの面白味ではあるが,縦横比が1.2になり,正方形に近くなるため迫力に欠ける気がする。そこで画面寸法を標準の24×36 mmにすることにした。
やり方は簡単で,厚さ1 mm(本当はもっと薄い方がよい)ほどの黒いアクリル板を幅3 mmに切り取ってカメラ本体内部開口部の上下に貼り付けるだけである。ただし,フィルムを送るとき引っかかったり,傷をつけたりしないよう充分気をつけなければならない。結果は写真12のとおりである。

5.操作方法
試写する前にこのカメラの操作方法を見ておこう。フィルムの装填を終えた状態から出発する。
まず,フィルムの巻き上げ。写真12の上の写真でファインダーと巻き上げノブの中間にあるツメのようなレバーを左に倒して拘束を外すと巻き上げノブが回せるようになる。反時計方向にノブを回すと最後にカチッと音がしてフィルム計数が進んで拘束状態になる。つまり,これ以上ノブが回らなくなる。
被写体が決まったら,距離・絞り・シャッター速度を設定する。
シャッターボタンを押す前にシャッターチャージが必要。そのレバーはレンズに向かって右にあるシンクロ接点出力コネクタの手前にある。かなり認めづらいが,写真1の該当箇所をよく見ていただきたい。
シャッターレバー(ボタンではない)はレンズに向かって左側にある。(写真1参照。)
注意すべきことは,フィルムを巻き上げなくてもシャッターをチャージし,シャッターを切ることができるということである。つまり,多重露光に対する保護機構がないのである。

6.試写結果
ASA100のフィルムを使ってさっそく写してみた。ところが,結果はすべて駄目。
写真13をご覧いただきたい。全体にボケている。ピントの合っているところがない。すべての写真がこのようであった。

写真13.公園のキリン

原因を考えてみた。結論から言うとレンズの前に装着している追加レンズのせいであろうということになった。レンズの手入れのところで「前後のレンズをはずし,無水アルコールで拭いた。」と書いたが,前のレンズは固有のレンズではなかった。前所有者が取り付けたのであろう。
では,このレンズは何だろうか?
裏蓋を開けてフィルム面にトレース用紙を貼って光源を覗いたところ,距離を無限遠に設定した状態でもピントの合う距離は極端に短く,50 cmほどであった。このことからすると,このレンズは近接撮影用ではなかろうか?
さて,現像に出していたフィルムがパトローネとともに戻ってきたのでフィルムを詰め,再度試写に挑戦した。(この種のパトローネやスプールは,ラボに現像を依頼したら,必ず返却してもらうこと!)
まず,写真14をご覧いただきたい。写真13で示したキリンを撮り直したものである。結果は歴然としている。やはり,レンズの前の追加レンズが原因だったのだ。

写真14.公園のキリン(再度)

今度は近くの母子像を撮ってみた。写真15をご覧いただきたい。距離は最短の1メートル。目測であるがよく撮れているではないか?この距離だとさすがに背景のボケが著しく,いい感じに仕上がっている。

写真15.母子象

季節は秋たけなわ。街路樹は紅葉している。当地の紅葉は東北地方のそれとは異なり,紅葉というよりはやや枯葉に近い感じがするのは否めない。それでもやはり紅葉はいいものだ。多分ケヤキが多いのだろうと思う。写真16である。

写真16.街路樹の紅葉

以上いずれも朝8時頃撮ったものである。本当は日中の陽光まぶしいときの輝く美しさを撮りたいのであるが,最近の週末は天気が悪く,平日は仕事なので思うようにならない。この辺の事情を差し引いて試写画像を評価していただきたい。

7.終わりに
最初の試写結果には失望したが,二度目の試写結果は充分満足のいくものであった。手のひらに乗るサイズの廉価品カメラであるが,その描写力には正直驚いた。もちろん,ネガをスキャナでデータ化したほかはトリミングその他の加工を一切していない。
なお,第2回目の試写ではフィルム計数は12を示したところで撮影をやめて現像に出した。ところが,仕上がった写真は15枚であった。ということは,3枚だけ少なく計数していたことになる。計数機構に問題があって,いじっているうちに直ったと思っていたがそうではなかったということになる。
実は計数がおかしいこととは思わず,二重露光を2度ほどやらかしたと思っていた。つまり,フィルムを巻き上げずにシャッターを切ったと思ったのである。
小生も歳のせいでこのようなことをやらかし始めたかと一人苦笑したものだが,そうではなかった。
それはともかく,計数機構の不具合を何とかしなければ!「カメラは美しくかつ完璧でなければならない。」

参考文献
(1)(財)日本カメラ財団歴史的カメラ審査委員会編集: 「日本の歴史的カメラ(増補改訂版)」,日本カメラ博物館,2004
(2)アサヒカメラ編集部編:「広告にみる国産カメラの歴史」,朝日新聞社,1994
(3)日本カメラ財団歴史的カメラ審査委員会編: 「日本の歴史的カメラ」(増補改訂版),日本カメラ博物館,2004

 

■2012年11月21日   木下亀吉

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