雨樹一期のトイカメラの教科書 第51回「ゆるふわ(ハイキー)写真の撮り方」

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こんにちは雨樹一期です。春満開ですね。花も咲き乱れていて、撮影のテンションがマックスです。年々ポピーが可愛く見えてきます。今回でこのコラムも51回。ここまで書いていると100回を目指したくなりますね。トイカメラの教科書というより、フィルムの教科書という感じでもありますが。
さて、折り返しの第51回は、女性に人気の『ゆるふわ写真』の撮り方について書いてみます。 その前に「ゆるふわ写真ってなんぞや?」ってことですよね。これも人によって解釈が変わりそうなのですが、はじまりはハイキー写真のことだったと思います。7,8年くらい前に流行りました。
ハイキーとは露出オーバーのことです。簡単に言うと『明るい写真』。それが少し変化して広がり、写真界にも『ゆるふわ』が溢れるようになりました。10年前にはなかった言葉だと思います。
さて。この「ゆるふわ」ですが、デジタルとフィルムでは撮り方が少し違います。デジタルはホワイトバランスやピクチャーコントロール(Nikonでの設定名)をいじったり、後から加工することで作り上げることも出来ますが、今回はフィルムでゆるふわを撮るにはどうすればいいかを書いてみようと思います。
ちなみにLOMO LC-AよりもNATURA CLASSICAや一眼、二眼などの、しっかり撮れるフィルムカメラがオススメ。トイカメラってピントが甘くて緩いイメージがあるかもしれませんが、写真の四隅が暗くなる周辺光量落ちが「ゆるふわ感」を邪魔しちゃうからです。 なんて書いておきながら紹介する写真にはHOLGAやLC-Aもありますけどね。


大切なのは『明暗差』と使用する『フィルム』
勘違いされがちですが、ハイキーってただ明るく撮ればいいってわけでもないんですね。気を付けた方がいい点もあります。
たとえば真夏のお日様ギラギラの日に木漏れ日の下で撮影すると、明るい部分と暗い部分が出来ますよね。仮にそこで明るく撮ってしまうと、その明るい部分が白飛びしちゃいます。かといってそれを避けようとすると、暗い写真になってしまう。
なので、明るさと暗さの差があまりない場所で(被写体を)撮る方が好ましいです。さらに、コントラストがあまり強くないフィルムを使いましょう。
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おすすめのフィルム
フィルムは現在、FUJIやコダック、ロモグラフィーやローライなどが販売していますが、それぞれ特徴が違います。鮮やかに撮れるもの〜柔らかく撮れるものまでさまざま。ゆるふわに適したフィルムもあります。
てことで、おすすめの3点をご紹介します。いずれも販売価格は1,000円前後です。

■ FUJI PRO400H(ネガフィルム)
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ハイキー写真のはしり的存在のフィルムで、描写は柔らかく低彩度。青空は水色っぽくなります。コツですが、「そんなに!?」というくらい明るく撮りましょう。ネガフィルムは明るく撮っても、色がしっかり残ってくれます。露出補正でいうと、+2〜3ですね。補正の出来ないHOLGAならバルブ(B)撮影をしてもいいと思います。 ちなみに上記の写真は無補正(トイラボさんは無補正)ですが、写真屋さんに飾られているサンプル写真は、やや大袈裟に補正されて、青味がかったパステル調になっていることがあります。普通に撮ってもそうはなりません。明るく撮るだけで青味が自然と出て来る、なんてことはありません。 分かりやすくいうとプリントする時に、明るくして青や緑味を足しています。お店によって名称は変わりますが、『PRO400H仕上げ』『ハイキー仕上げ』などにする必要があります。 ただ、カメラ屋さんに大幅に調整してもらうと、自分で撮った感じもなくなっちゃいますからね。補正が悪いなんてことはありませんが、せっかくですから自分の撮影でそこに近付けましょう。 まずは、明るく撮って無補正で仕上げるという形が一番だと思います。
■Kodak PORTRA400(ネガフィルム)
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ふんわり写真の定番ですね。僕の中の印象では白がキレイなフィルム。白といっても、本当に真っ白なものなんてありませんよね。どんなものでも少しグレーが混じっています。 ポートラは感度が160と400と800がありますが、いずれも白〜黒のグラデーションの滑らかさが抜群にいいです。失敗例として紹介した写真とは違い、明るい部分も白飛びせずに、しっかりと白が残ってくれますし、明暗差がある場所でも色が潰れることもありません。これはデジタルでも表現出来ない部分なので、フィルムの良さも感じることが出来ますね。 PRO400hと同じく、ネガフィルムにしては高価です。でも、少し安いフィルムってグラデーションがあまりキレイに表現されないし、明るい部分は白飛びしちゃうし、暗い部分はザラザラになるので、ゆるふわに撮りにくいです。

 

■ ローライ クロームCR200 PRO(リバーサルフィルム)
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ここのコラムでも何度かご紹介しています。鮮やか過ぎず、でもしっかりと色も残り、描写はふんわり柔らかい。こちらも同じく明るく撮りましょう。リバーサルフィルムなので、あまり明るく撮り過ぎると、真っ白になってしまいます。+1補正くらいがいいですね。
それぞれ少しタイプの違うゆるふわに適したフィルムをご紹介しました。自分の中のイメージに近い仕上がりのフィルムで、明暗差が少ない場所で、明るく撮る。これだけでグンと近付くと思います。 後は基本的にはあまりごちゃごちゃしない方がいいので、空を多めに入れて撮るといいですね。


おまけ。
■ FUJI T-64
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こちらはすでに生産終了したタングステンフィルムです。これぞゆるふわですかね? デジタルのホワイトバランスで『電球マーク』にすると同じ効果があります。ゆるふわ系の教室に行くと、おそらくこちらの設定を教えてくれると思います、たぶんですが。 ただ、その設定でばかり撮っているとあまり光を意識しないでもそこそこな写真になりがちなので(笑)、気を付けましょう。

※4月14日熊本地震発生前に雨樹様に執筆頂きましたコラムです、4月の掲載予定でしたが遅くなりましたことをお詫び申し上げます。(株式会社トイラボ)


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雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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