わたしのカメラ三昧 第49回 「ヤシカYK」


1.はじめに
九州最大の都市でほぼ毎月開催されている蚤の市/骨董市で手に入れた。
薄汚れて店頭に転がっていた。取り上げて見ると,シャッター羽根がはずれていた。それでも,フィルム巻き上げレバーを回してシャッターボタンを押すと,シャッターの動作する音がした。電池の蓋がないので完全マニュアル機である。修理はちょっと手強そうだが,遊ぶには面白いかも知れない。
値段を聞くと500円という。「シャッター羽根がはずれているのに500円は高い」と言いながら出て行こうとすると,「300円でいい」という。
下の写真でその外観をご覧いただきたい。これは修理・手入れ後の姿であることにご注意願いたい。手に入れたときは埃にまみれ,錆びが出て見るからにみすぼらしい外観を呈していたのである。
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写真1.修理後のヤシカYK

ところで,ヤシカ35というカメラをご存知の方はこのカメラがそれに似ているとは思わないだろうか?どうもこのカメラはヤシカ35の廉価版のようである。YKとはYashicaとKidの頭文字だろうか?調べてもよくわからないカメラである。

 

2.仕様と特徴
このカメラは廉価版で影が薄かった存在と見え,わたしの蔵書の中には見当たらない。そこで,インターネットのお世話になるのであるが,こちらも記事としては内容が薄い。そんなことで,このカメラの確かな仕様などは不明。以下はわたしが現物を見ながらまとめたものである。(ただし,発売年と価格はインターネットの記事によった。)よって,間違いがあるかも知れないことをあらかじめご承知おき願いたい。

(1)名称:Yashica YK
(2)型式:35ミリレンズシャッター式レンジファインダーカメラ
(3)感光材料:135判フィルム
(4)フィルム送り:レバー巻き上げ,クランク巻き戻し
(5)フィルム計数:手動復元順算式
(6)画面寸法:24×36 mm
(7)レンズ:Yashinon 1:2.8, f=4.5cm
(8)ファインダー:逆ガリレオ?
(9)距離調節:二重像合致式距離計連動(最短撮影距離=1m)
(10)露出調節:手動
(11)シャッター:Copal,B, 25/50/100/300
(12)シンクロ接点:あり
(13)電池:不要
(14)概略質量:715 g
(15)概略寸法:140 W×85 H×70 D mm(実測)
(16)発売(製造)年:1959(昭和34)年?
(17)発売価格:10,000円?

特徴は何だろう?繰り返しになるが,ヤシカ35の廉価版ということ以外にはないのではなかろうか?この廉価版という判定はわたしが単独になしたものであるが,その根拠は①シャッタースピードに低速がない,②セルフタイマーがない,の2点にある。
しかし,そういうことはどうでもいい。なかなかいい面構えだと思う。インターネットの記事によれば輸出専用であったらしいが,本当だろうか?

 

3.初期状態と問題点
汚れて,シャッター羽根がはずれていることはすでに述べた。(写真2参照。)
帰宅して詳細に調べているとピント合わせのために指をかけるノブ(と言うのだろうか?)が欠けていることが分かった。あまりに見事に(きれいに)根元から折れていたので店頭では気づかなかったのである。そういえば,わたしの持っているヤシカ35も折れている。してみるとヤシカのカメラはこの部分が基本的に弱いのだろう。
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写真2.はずれたシャッター羽根

レンズは比較的綺麗だが,ファインダーは汚れている。モルトは当然劣化しているが,このまま使えないことはなさそうな程度である。

問題点をまとめると以下のとおり。
(1)シャッター羽根がはずれている。
(2)ファインダーが汚れている。
(3)全体に汚れがひどく,金属部分には一部錆びが出ている。
(4)ピントリングのノブが欠損している。

 

4.手入れ・修理
何と言っても最大の問題はシャッター羽根である。これが正常に戻らなければカメラとしては機能しない。
ご存知のとおり,シャッター羽根はレンズに挟まっている。したがって,シャッター羽根をさわるには前後いずれかのレンズを外さなければならない。レンズ鏡胴部分をはずして,バラバラにしてしまえばシャッター部分を単独に取り出せるのであるが,まずは鏡胴部分を本体につけたまま挑戦した。はずしてしまえば後で距離調節が面倒だからである。
しかし,前のレンズは外れなかった。ヤシカ35ではレンズはねじ込み式になっていて,捻ると簡単に外れたのであった。このYKもきっとそうだと思うのだが,かなり力をかけても回らない。無理に力をかけると破壊するかもしれないのでやめた。(これまで,無理に力を加えて木端微塵にしたカメラが幾つもある。カメラは絶対に無理をしてはいけない!)
今度は後ろのレンズ,すなわち,フィルム室から挑戦した。こちらは蟹目のようなナットを回せば簡単に外れた。しかし,シャッター羽根には届かない。まあ,当然と言えば当然のことではある。
再度前面から挑戦。今度は鏡胴最先端リングの止めねじを緩めようとしたが,固着して回らない。どうしようもないのでドリルでこのねじを削り取った。しかし,それでもレンズは外れなかった。
ところが,そうこうしているうちに突然レンズが回ったのである。やはり,ヤシカ35同様前のレンズはねじ込み式であった。

これでシャッターには手が届くようになったが,シャッター羽根はその下(裏側)にあって,どうしても触れない。無理に触っていると,外れたシャッター羽根がどこか隅の方に隠れてしまった。

もうこうなったら仕方がない。レンズ鏡胴をはずすことにした。これで良くならなければそれまでと腹をくくった。

さて,トップカバーと底板をはずし,前面の貼り革を一部剥したのち,4本のねじを外すとエプロンごとレンズ鏡胴がはずれた。写真3をご覧いただきたい。この段階ではレンズもはずしてシャッターの機構が露出している。シャッター羽根が完全に閉じていないのがお分かりいただけるであろうか?
ところで,ドーナツ状に配置されたシャッターの機構の中で,下半分が空になっている。この部分に本来低速とセルフタイマーの機構が納まるのであろう。
なお,分解する過程で気づいたのであるが,どうもこのカメラは過去に少なくとも1度は分解されたようである。しかも,実行者は素人らしい。その痕跡が明瞭に残っているのである。ひどいのはねじの頭が俗に言うなめられた状態になっているのである。そう考えると,鏡胴もぐらぐらして隙間があった。もしかしたら,シャッター羽根が外れたのはそのせいかもしれない。あるいは,シャッター羽根の外れたのを修理しようとして途中であきらめたのかもしれない。

話を元に戻そう。
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写真3.カメラの分解

さらに分解を進めると,ついにシャッター羽根に到達した。写真4をご覧いただきたい。はずれた羽根が6枚ある。(この写真では5枚のようであるが,左上の1枚と見える羽根は実は2枚が重なっているのである。これだけ他と形状の違うことがお分かり頂けるであろう。)この中の1枚だけ形状が異なっていた。最初,これは折れたためだろうと思ったのであるが,そうではなかった。
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写真4.シャッター羽根

とにかく,元来はこうだったのだろうなと想像しながらシャッター羽根を組み付けた。その結果が写真5である。こう書くと簡単なようだが,実際組み付けてもすぐに脱落して大変であった。
なお,写真4でも5でも,黒いリード線が見えるであろう。これはストロボ用の接点信号を接続するための電線である。絶縁被覆の劣化が著しかったことと,ストロボを使うことはなかろうということで切断除去してしまった。張り替えたらいいではないか?と言われそうだが,正直面倒だったのである。何しろ,シャッター羽根を無事修復することで頭がいっぱいであった。
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写真5.組み付けられたシャッター羽根

シャッターを鏡胴に組み込んだらカメラ本体に取り付けなければならない。これもなかなか面倒な作業であった。
下の写真をご覧いただきたい。鏡胴側と〇,△,□の部分で連結(連動)されている。〇の部分はシャッターレリーズ,△はシャッターチャージ,□は距離計との連動である。この中で□だけはレンズの出し入れによってこの部分が押されるだけであるから鏡胴の組み付けに関しては特に問題はない。
問題は〇と△である。これら2つはシャッターの機構と組み合さなければならないので面倒である。特に△の部分がややこしかった。さらに,何とか△部分をうまく組み付けることができても,〇部分がはずれていたりとか,その逆とかがあって非常に難航した。
とにかく試行錯誤を経て組み戻すことに成功した。まずは問題(1)が解決したのである。
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写真6.カメラ本体側

一段落したら,つぎはファインダーの汚れの問題。
これはシャッター羽根の修理の過程でトップカバーを外したので,ついでに汚れを拭き取って解決した。ただし,問題が発生した。それは,ハーフミラーが単なる透明ガラスになってしまったことである。この部分はアルコールなどの溶剤は禁物なので,水だけで拭ったのであるが,剥げてしまった。やはり劣化が相当に進んでいたのである。
対策として自動車のガラスに貼る半透明フィルムを裁断して貼り付けた。これはハーフミラーになっていて代用できるのである。
二重像はやや見づらいが,問題(2)は解決したことにしよう。
鏡胴をばらしたついでにレンズの汚れも拭っておいた。

全体的な汚れと錆の問題。
これは水を含んだ布や綿棒などで丁寧に汚れを拭い取るしかない。金属部分の錆やくすみについてはコンパウンドを使って表面を磨き上げた。だいぶ綺麗にはなったが,どうしてもシミやソバカスのような汚れは残ってしまった。
まあ,この程度は止むを得ないこととして問題(3)を終えた。

最後にピントリングのノブの欠損の問題。
ジャンク品の中から適当なものを切り取って貼り付けることも考えたが,そのままでも何とか操作できることからそのままにすることにした。
以上で修理・手入れは完了した。再度写真1でその結果をご覧いただきたい。鏡胴先端部分の上面に白い突起が認められるであろうか?これは,鏡胴を分解する過程でドリルで破壊したねじの代わりにねじ込んだM2の鍋ねじである。ちょうどシャッター速度や絞りの設定の目印になるような位置にした。写真7のほうがわかり安いであろうか?

 

5.使い方
古いカメラの使い方を知っている人にとっては,このカメラの使い方に関して特に言うべきことはない。
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写真7.軍艦部

それでも,注意点を2つほど指摘しておこう。
まず,フィルムカウンターであるが,このカメラは自動的には復元(リセット)されない。よって,フィルムを装填したら指を使って初期値(0)に合わせなければならない。
写真7をご覧いただきたい。フィルムカウンターの中心のカニ目ねじの周囲に刻まれているギザギザが認められるであろう。これに指を押し付けて摩擦を使って回すのである。もちろん,爪を使ってもよい。フィルムカウンターは順算式である。

つぎに,フィルムを巻き戻すときの手順。
まず,写真8をご覧いただきたい。カメラの底の左側にギザギザの彫り込まれた円盤が認められるであろう。その外周にA←→Rという文字と図形が記入されている。フィルムを巻き戻すときはこの円盤をR側に回すのである。これも指とギザギザの間の摩擦を利用するので結構やりづらい。
写真を撮影するときはA側に回しておかなければならない。
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写真8.カメラの底

当時のヤシカは,どうもギザギザが好きだったようだ。

 

6.試写結果
さて,修理がうまくいったかどうか確認するため試写してみよう。感度100のフジカラー業務記録用カラーネガフィルム36枚撮りを装填した。ずいぶん前に買いだめしておいたものだが,まだ有効期限には達していない。
休日。久しぶりに地元のまちを撮ってみた。今回は露出計を携行した。
まず,どこかの門柱の上に置かれていた置き物を至近距離から撮った。写真9をご覧いただきたい。なぜか中央上部にもやがかかったような気がする写りである。何だろう?写真が小さいので細部は不明だが,ピントは合っているように思える。もちろん,露出も適正。とにかく,まずはこの1枚でシャッターの修復が確認された!
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写真9.置き物

つぎは公共の建物の中で撮った。距離は2~3メートルほど。写真10である。一応室内であるので絞りは開き気味に撮ったはずである。遠くがかなりボケている。まあまあ,よく取れていると思いきや,わたしが狙った(ピントを合わせた)のは中央やや右の鬼とその左側の作品だったはずである。それが,手前の神輿と祭と書かれた団扇にピントがあっているようだ。撮影記録がないので厳密なことは言えないが,神輿や団扇にピントを合わせるとしたらもう少し画面に取り込むはずだ。
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写真10.室内写真

ピントのずれはつぎの写真でも明らかと思われる。写真11をご覧いただきたい。
ここでは,中央やや右あたりにピントを合わせたつもりである。それが,その手前の金網付近に合っているようだ。幾ら記録がないとしても,この構図で金網にピントを合わせるはずがない。
見かけのピント(二重像およびピントリングの距離表示)と実際のピントが一致していないのだ。分解するときに心配していたことがやっぱり起こってしまった。
yashica_yk11写真11.蒸気機関車

実は,修理のところでは記述を省略したが,ピント合わせには一苦労したのである。
一旦組み上げてピントを確認したところ,どうも表示より実際のピントの方が近いことがわかった。たとえば,目盛を数メートルにしたとき,実際に像を結ぶのは1メートルほどだったのである。つまり,レンズが本来の位置より前にとび出していると考えられるのであった。
そこで,レンズ鏡胴を再度はずして組みなおしたのである。このとき,レンズがカメラ本体に密着するよう力いっぱい締め付けた。
その上で再度ピントを確認したら,やはり狂っているようでもあったが,詳細は撮影してみないとわからないということで試写に臨んだのである。
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写真12.大通り

最後に遠景を撮ってみた。写真12をご覧いただきたい。よく晴れていたのでシャッター速度100分の1秒,絞り11であった(と思う)。まあ,これだけ距離があり,被写界深度が深ければ特に問題は現れない。レンズに歪みはなさそうである。

 

7.おわりに
致命的な問題であったシャッター羽根は修理できたが,ピントが狂ってしまったようだ。しかし,まだすっきりしない。と言うのは,もし本当にピントが狂っているのであれば,最短距離で撮影した写真9は大ボケにボケていいと思うのである。
さらに,本当にピントがずれているとしたら,どうしたらいいのかわからない。もう調整しろがないのである。
なお,距離目盛と二重像の合致に関しては完璧に校正した。無限遠でも合っている。
なんだかすっきりしない状態でこの記事を終えることになったが,ど素人のわたしのことだからたまにはこんなことがあってもよかろう。

参考文献
(1)ヤシカカメラ,八洲光学精機: http://3rd.geocities.jp/ta14hi/old-camera/Yashica/yashica.htm
(2)35RFDシリーズ: http://asacame.webcrow.jp/hsp35rfdaz/yashica.htm

■2014年11月4日   木下亀吉
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