わたしのカメラ三昧 第41回 連写できるスプリングモータ式カメラ「リコー AD-1 」


1.はじめに
 インターネットでカメラを探していて偶然発見した,リコーAD-1。リコー製スプリングモータ搭載カメラの最後の型と思われる。早速手に入れた。950円であった。
 最初に手にしたとき,軽くて小さいことに新鮮な驚きを感じた。まずは写真1でその外観をご覧いただきたい。
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写真1.リコー AD-1の外観

 外観は非常によく,レンズやファインダーに傷などもなく,いい状態に保たれていたことがうかがえた。さらに良く見ると,日付を設定する機構が備えられているではないか?つまり,このカメラでは撮影時に年月日をフィルムに焼き付けることができるのである。

 

2.仕様と特徴
 まず,仕様を確認しておこう。製造元のリコーからインターネット上に仕様が紹介されているのでそれを援用してまとめてみた。ただし,間違っている箇所があるかも知れないことをあらかじめご承知おき願いたい。
(1)名称:Ricoh AD-1
(2)型式:スプリングモータ巻き上げ式35ミリレンズシャッターカメラ
(3)感光材料:135判フィルム
(4)フィルム送り:スプリングモータによる自動巻き上げ,クランク巻き戻し
(5)フィルム計数:自動復元順算式
(6)画面寸法:24×36 mm
(7)レンズ:カラーリケノン35 mm F2.8,3群4枚構成
(8)ファインダー:採光式フレームファインダー
(9)距離調節:前玉回転ゾーンフォーカス
(10)露出調節:CdSメータ針押さえ式AE
(11)シャッター:プログラムシャッター,1/30~1/250秒,セルフタイマー付き
(12)シンクロ接点:あり
(13)電池:(SR44またはLR44)×2個
(14)概略質量:365 g(実測)
(15)概略寸法:110 W×850 H×51 D〔mm〕(突起物を含まず)
(16)発売(製造)年:1979(昭和54)年
(17)発売価格:33,500円,ケース1,500円
(18)製造・販売元:リコー

 このカメラの特徴は何と言っても連写できることであろう。ぜんまい仕掛けのスプリングモータによるフィルム自動巻き上げながら,連写できるカメラをわたしはこのカメラのほかに知らない。
 また,日付を記録できるのも特徴だろうか?残念ながら機械式であるので1979年から1993年までしか対応できていない。
 兄弟機種でA-2というのがあるらしい。それは,このAD-1から日付機能を除いたものだということである。すると,このカメラの型名のAD-1のDはDateの意味であろう。

 

3.初期状態と問題点
 このカメラは電池が必要である。(電池の必要なカメラはわたしの興味の対象外であるが,ぜんまい巻き上げ式ということで惹かれたものである。)
 電池を入れ,B.C.と示されたスイッチを押してファインダーを覗くと,その右下にDの文字が赤く現れた。電池の起電力に問題のないことを示しているのだろう。すると,電子回路に問題はなさそうである。
シャッターも問題なく切れているようである。
 そこで,裏蓋を開けると・・・やはりリコーのカメラであった。大量の遮光材が劣化していた。写真2をご覧いただきたい。触るとボロボロとこぼれ落ちてくる。
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写真2.遮光材の劣化
 レンズもファインダーも綺麗であり,遮光材以外には問題なさそうである。

 

4.手入れ・修理
 遮光材のみが手入れの対象となった。
まず,劣化した遮光材を綺麗に取り除かなければならない。竹のヘラを使って丁寧に取り除いた。写真3をご覧いただきたい。裏蓋の白いところが遮光材の取り除かれた部分である。
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写真3.遮光材をはぎとったあと

 きれいにはぎ取ったあとは遮光材の代用品である習字の下敷きを裁断して貼り付けた。もちろん,両面テープを使用し,修正を楽にするためにアルコールを塗布しておいた。

写真4をご覧いただきたい。ほぼ初期状態に修復できたと思う。
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写真4.遮光材の回復
 なお,今回は遮光材としてプロテクトシートなるものは使わなかった。

ところで,写真3をよく見ると,裏蓋の内側の下の方に長方形の貼物が認められるであろう。当初わたしもこれが何か不思議に思ったのであるが,どうもフィルム計数の自動復元時に突起を押すための補強材であろうとの認識に至った。同じ写真の右端にこの突起が白く見えるであろう。補強材がなければこの突起によって裏蓋が陥没するのであろう。

 

5.使い方
 フィルムの装填に関しては特別なことはない。
 フィルムを装填したらぜんまいを一杯に巻いておく。また,フィルム感度(ASA/DIN)の設定も忘れないように。
 このカメラは電池を使うので,事前に電圧を確認する必要がある。電池の起電力が正常範囲内であれば,B.C.と示されたスイッチ(写真5参照。)を押したときファインダーの右下にDの文字が赤く現れる。
 ところが,シャッターボタンを押すたびにこのDの文字がファインダーの中に現れるのである。シャッターを押すたびに電池を点検しているのかと思ったらさにあらず,日付焼き付けモードのときのみ現れ,そうでないときは現れないことがわかった。つまり,シャッターを押すたびに日付焼き付けモードかどうかを確認できるようになっているのである。何と細やかな配慮だろう!
 その日付はカメラの背面左側上部にあるダイヤルを回して設定する。写真5でおわかりいただけるであろうか?また,日付を写し込むか,写し込まないかの設定スイッチもある。これは任意に操作できるので,コマごとに設定可能である。
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写真5.背面

日付は(19)79年から93年まで用意されている。と言うことは,当時のカメラは寿命を15年に設定していたのだろうか?また,このことからこのカメラは1979年に製造されたことがわかる。
単写/連写の切換スイッチはカメラ前面のシャッターボタンに近いところにある。再度写真1をご覧いただきたい。この写真ではCの文字が現れている。Cは連写である。丸いつまみを上にずらすとSの文字が現れ,単写となる。

 

6.試写結果
 例によってASA感度100の36枚撮り業務記録用カラーネガフィルムを装填した。このフィルム,20本ほど買いだめしておいたのでまだまだある。
今回の作例に一貫性はない。方々で見つけた被写体を脈絡なく撮ったのである。
建物の壁にモップが吊り下げられていた。まだ濡れていたので一仕事した直後だろう。写真6をご覧いただきたい。いい色合いが出ているとは思わないだろうか?ピントもよく合っていて,モップの紐(?)の様子がよく捉えられた。ad16
写真6.一仕事のあと

 40年ほど前に廃線になった地方鉄道の車輛を保存しているところがある。写真7をご覧いただきたい。手前に客車2輌が,その奥に蒸気機関車が写っている。この蒸気機関車のみ例外で,外国から引き取ったものだそうである。
 この,廃線になった地方鉄道,実は40年ほど前一度乗ってみようと友人と約束していた。しかし,なかなか実行に移されず,そうこうしているうちに廃線となってしまった。今でも非常に残念に思っている。教訓: 思いついたらすぐ実行!(≒善は急げ)
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写真7.懐かしい車輛

 その蒸気機関車の先頭部分を撮ってみた。写真8である。高い煙突が何となく時代を感じさせる。もっとも,今の人は蒸気機関車そのものに時代を感じるであろう。
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写真8.蒸気機関車

 さて,場所は大きく変わって鉄橋の橋脚を写してみた。写真9をご覧いただきたい。旧国鉄の○○本線の鉄橋である。古めかしいレンガの肌合いがよく出ているではないか?煉瓦はやはり赤煉瓦がいい。
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写真9.橋脚

 その鉄橋から少し離れたところに河童(かっぱ)の像がたっている。すわっていると言った方がいいかもしれない。写真10をご覧いただきたい。
 当地の川には河童伝説があるのだろうか?旧国鉄の第三セクターにも河童のつく駅名がある。
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写真10.交通安全河童

 ところで,河童の語源は何だろう?当地の近隣地方ではエンコウとも呼ばれるそうだ。
かつて,韓国を訪れたとき某山頂でカッパウィという仏像(石仏)を見た。頭に大きな平たい岩を載せていた。見た瞬間「河童だ!」と心の中で叫んだ。写真11をご覧いただきたい。
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写真11.韓国のカッパウィ(オリンパスのコンデジで2008年に撮影)

 しかし,カッパウィというのはカッパ・ウィではなく,カッ・パウィなのである。カッは笠,パウィは岩である。言葉の成り立ちからすると河童の語源にはなりにくいようであるが,たとえばテレビはテレビジョンから来ている。そのテレビジョンを分解すると,テレビ・ジョンではなく,テレ・ビジョンである。すると,もともとの言葉の成り立ちは考えなくていいのかも知れない。
 また,脱線してしまった。

 

7.おわりに
 期待以上であった。やや枯れた感じはするが,かなりいい発色ではなかろうか?特に,写真6のモップの色がいい。写真8の機関車の黒光りする鉄の色合いもいい。
 ところで,このカメラの特徴である「連写」による撮影はしなかった。どうもわたしのような古い人間は1コマ1コマ丁寧に・真剣に撮る習性があって,連写などもってのほかというような気になってしまう。
 真剣と言えば,わたしたちの年代の者はシャッターボタンを押す直前に息を止める人が少なくないであろう。手振れを防ぐためである。もちろん,両脚は少し広げて踏ん張り,肘を胴に付け,カメラを額にくっつけてファインダーを覗くのである。最近のデジタルカメラなどによる撮影の,両手を突出し,液晶モニターを見ながら撮るというスタイルにはどうしても馴染めない。

 過日デジタル一眼レフに望遠レンズを装着して渡り鳥か何かを狙っている人に会った。三脚を使っていないので,「ブレるでしょう?」と訊くと,「なあに,手振れ補正がありますよ。」とのこと。続いて,「しかし,狙ったものがうまく撮れるでしょうか?」と訊くと,「連写すれば中にいいのがありますよ。」との返事。さらに,「それでは構図がうまく決まらないでしょう?」との質問には「なあに,トリミングすればいいですよ。」ときた。写真の撮り方はこの十数年ですっかり変わってしまった。
 なお,今回の試写では日付の写し込みを忘れてしまった。

■2014年4月1日   木下亀吉

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