トイカメラの教科書第65回「写真を無断使用された時」

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こんにちは、雨樹一期(あまきいちご)です。毎日暑いですね。撮影しているとついつい夢中なってしまいます。熱中症だけにはくれぐれもお気を付け下さい。 さて、今回もテクニックとは無関係のお話です。まとめサイトなど(キュレーションメディア、バイラルメディア)に勝手に写真が使われることについて書いてみます。知らないサイトに自分の写真が載っていて、驚かれた方も多いはず。 ちゃんと写真使用の了解を得ているのならむしろいいサイトです。でも大半は無断です。これも昨年、DeNAの問題があって激減しましたが、ほとぼりが冷めたらまた増えてくる可能性もあります。だからやっぱり書いておこうかなと。 その多くは一応、どこから画像を取ってきたか「出典」と書いてリンクは貼られていることは多いです。でも、だからオッケーとはなりませんよね。 てことで、僕の思ったことをまとめてみます。間違えている部分もあるかもしれません。ま、僕は勝手に使う側ではなく、使われている側なので多めにみてやって下さいな。


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その多くは旅やグルメ(カフェ)のランキング
まとめサイトっていろいろありますが、実際に記事を書いているのは素人ということもあります。「なぜ素人が?」というのは後ほど。
で、ネット上に無限にある人の写真を存分に使うわけですから、いろんな場所のいろんな雰囲気の写真を載せた記事が出来る。そりゃ見応えのあるものにもなりますよね。特に旅系とか。
で、ランキングとか作ると興味も惹かれてFacebookでもシェアされる。どこの誰が作ったかも分からないランキングだけど、キレイな写真が並んでいるとそれだけで面白いですよね。
呆れるのは、「まとめ」から「他のまとめ」が丸々パクっているパターンもあります。別のサイトなのに、同じ写真で同じ説明で、ランキングの順番だけが違うとか。
旅系なら書いている人は行ったことがない。グルメ系なら、食べたことがない。でも写真はキレイだし、記事も実際に経験された方のブログ文を繋ぎ合わせたものだから、そこそこのものになる。


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何の為に制作されているのか?
で、なぜそんなサイトが満盈(まんえい)しているかというと、お金になるからです。ビジネスです。
記事中などにアフィリエイト(広告)が組み込まれているんですね。クリックしたりモノを買ったりすると、そのサイト(会社)にお金が入る仕組みです。アクセスが多くなると、当然購入する人も増えます。アフィリエイトでなくても、自社のショッピングサイトに誘導も出来ますからね。お金をかけずにアクセス数を稼ぐにはネットから拾った画像で記事にするのが一番です。
著作権ってもともと紙媒体なのかもしれないですよね。デジタルではかなりグレーになっています。音楽はもっと酷いです。聞きたい曲とかあると、だいたいフルで聞けちゃいますもんね。時代といえば時代かもしれませんが。


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どのようにして記事が書かれているのか?
全てではないですが、クラウドソーシングが多そうですね。DeNAのことでだいぶ減ったとは思いますが、仕事をしたい人と依頼したい人とをマッチングさせるサービスです。まとめサイトが外注でライターを募集します。実際に会って仕事を依頼するとかじゃなくて、ネット上だけで行う在宅ワークなので、責任感も薄くなります。『素人が書いた』、というのはそういう意味です。もちろん、プロのライターかもしれませんけどね。
家にいてお金を少しでも稼ぎたい、という方にとってはいいのかもしれませんね。僕は実際にやったことはないけど、写真関係でなにか仕事はあるか見てみると、商品の撮影なんかもありました。どれも単価はかなり安いですが。
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写真をどこから取ってくるのか分かりませんが、たとえばGoogleで「トイカメラ・クロスプロセス」を画像検索すると、僕の写真がたくさん出てきます。この中だけでも34枚中17枚あります。記事を書く時にそうやって検索して、そこから拾って記事にする。名所を検索したらステキな写真はたくさん出来てきますよね。
実際、僕はそこまで気にはしていないものの、どのように使われているか分からないのは気持ち悪いです。間違った情報になっているかもしれない。スマホの壁紙とかで、個人的に楽しむならいいんですが、世に公開されているわけですからね。
人気サイトのトイカメラの記事では掲載写真の半分が無断使用されていました。そんな気にしないとはいえ、やっぱり気分はよくない。厳密にはトイカメラじゃないのもありました(いまは全て差し替えられています)。
気分云々の前に、僕は仕事で写真を提供して使用料を貰うこともあります。5,000円もあれば10万円の時もあります。だから、ちゃんと頂いている会社に対して申し訳ない気持ちになります。
はじめに書きましたが、無断使用されることが多いのは旅の写真をアップされている方です。めっちゃ苦労して撮った写真もあるはずです。その場所に行くまでに時間もお金もかかります。極論だけど、それを見ず知らずの人が勝手に使って収入を得ている。中には記事ごとごっそりパクることもあるみたいです。


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どうすればなくなるのか?
これがとても難しいです。コピーライトを入れても、ブログ内に注意書きを入れていても、記事を書く人は見ていないですからね。そもそもこれって写真を撮ってない人からしたら関係のない話です。キレイな写真でまとめられている方がいいです。僕だって調べ物をしていて見ることがあります。検索にもかかりやすいように、タイトルなども考えられていますからね。
削除を要求すればいいかもしれないけど、そんなことにかける時間も勿体無いし面倒臭い。それなら、はじめから使用料を請求してみる方がいいかもしれない。実際に請求をして謝罪もあり、きちんと払ってもらっている方もいます。対応が悪い会社もあるようです。もめている方もいます。でも裁判にまでしちゃうと一週間そこらじゃ終わりません。ずっと苦痛だし、最終的に払われる金額は労力に見合いません。
それでもそういう方が増えてきたことで、閉鎖に追い込まれたり、無断使用されることは昨年より減りました。
ちなみに僕は写真にコピーライト入れたくないです。面倒なのも理由ですが、写真の印象が変わっちゃうからです。文字が入る方が引き締まることもあるけど、写真そのもので見せたいですからね。
長々と書いて何も解決出来ていませんが、とりあえず出来ることっていうかやらないことは、そういう記事をシェアしないことくらいですよね。使用されたら、すぐに削除、もしくは金額を指定して請求してもいいと思います。そうすることで、この現状がもっと広まっていけばさらに減って行くと思います。
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同じく、芸能人の顔写真や、ネットから拾って来た写真・アニメ・イラストなどをSNSなどのプロフィール写真に使うことも、著作権侵害に該当します。知らずに使用している方は意外と多いのでご注意下さい。まぁ、芸能人の顔写真で訴えられることはないとは思いますが。著作権が緩くなっている(グレーゾーンが増えた)反面、肖像権は厳しくなってきていますので、知らない人を載せる時も注意が必要です。
63回のコラムで「無料で撮ってくれと頼まれた時はどうすればいいか?」を書いたけど、撮影した写真だって無料ではないですからね。僕だってこれまでに撮影してきたものは全て愛しの我が子です。
僕に限らず、お金どうこうでもなく、たとえばAさんが撮った写真は、Aさんにとってとても大切なものだと知って頂ければなと思います。


今回は写真が少なめだったので、6月に横浜で開催したワークショップの写真を共有させて頂きます。なかなかの力作揃い。今回は同じ場所で、同じフィルムを使用しましたが、みなさん視点がそれぞれで面白いです。

□ 多重露光
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□ 光漏れ・レッドスケール
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最後に私事ですが、大阪にて毎月(木・日曜)ワークショップを開催中です。他の地域でも開催を予定しています(11月には東京谷中など)。ぜひチェックしてみて下さいね。

□日曜クラス
・8/20(日) 夏空とクロスプロセス(天保山)
・9/17(日) フィルムで操る色彩(神戸異人館)
・10/15(日) 雨樹一期とフィルムスワップ(万博公園)
・11/19(日) カメラシャッフル(中之島バラ園)
・12/17(日) 被写体の捉え方(淀屋橋)

詳細、お申し込みはコチラ

□木曜日クラス
・8/17(木) 多重露光の基礎とその応用
・9/21(木) フィルムで操る色彩
・10/19(木) 雨樹一期とフィルムスワップ
・11/16(木) カメラシャッフル
・12/21(木) 被写体の捉え方

詳細、お申込みはコチラ

雨樹一期写真事務所
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雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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