雨樹一期のトイカメラの教科書 第53回「トイカメラの上達方法その9 LOMO LC-Aの裏ワザ」
こんにちは雨樹一期(あまきいちご)です。毎日暑いですね。この暑さと紫外線、「撮影日和!」とはさすがに言えませんが、それでも夏にしか撮れないものだってあります。向日葵に入道雲。写真を愛するなら四季をおさめていきたいですね。ただ、熱中症にはくれぐれもお気を付け下さい。
さて、今回はLC-Aの裏ワザについてのコラムです。 まず、LC-AとLC-A+の違いをおさらいします。写りに関してはさほど違いはありません。それ以前に個体差のあるカメラです。LC-A、LC-A+に関係なく、露出や周辺光量落ちは少し変わります。 LC-Aの生産が終了して、根強い人気で再販されたのがLC-A+です。LC-Aはロシア製、LC-A+は中国製です。 感度設定はLC-Aが25〜400。LC-A+は100〜1600。LC-Aは絞りを調整出来ますが、シャッタースピードが1/60に固定されるので、あまり意味がない為、LC-A+ではその機能が無くなりました。その変わりに多重露光が出来るようになりました。カメラの底面にスイッチ(MXレバー)があり、何度でもシャッターを切ることが出来ます。フィルムを巻き送らない、すなわち同じ位置に撮り重ねるので、画像がズレません。 LC-Aにはそのスイッチが付いていません。一枚撮ると、シャッターがロックされるので、巻き送らないとシャッターを切ることが出来ません。なので、多重露光するためには第34回のコラムでも書いた通り、フィルムを一本撮りきって、巻き戻して、また始めから撮る方法を使います。ちょっと無理矢理です。 利点としては、「撮影地が違う場所」ということも可能なので、たとえば桜を撮ったフィルムとコスモスを重ねることも可能になります。 欠点は、全て多重露光になるということ。LC-Aが二台あればいいですが、一台だと普通の一枚写真が撮れません。また、『一枚目』と『重ねる二枚目』のコマの位置を合わせるのが難しく、少し画像がズレてしまうことです。 その為に、一回目の撮影時に以下の写真の用に印を入れ、二回目に撮る時に、スタート位置をそこに合わせます。
それでもやっぱり少しズレちゃいます。LC-Aは巻き送りも安定していませんからね。少しくらいは仕方ないかなという感じはあります。
左端を見ればズレているのが分かるかと思います。写真をLサイズ(127mm×89mm)にプリントすると、両端が切り取られるので隠れますし、自分でトリミングすればいいので、あまり問題はないかなと思いますが。 ということで、LC-Aでの多重露光は、はじめから多重露光前提で撮影をすることになります。 逆に、普通に撮っている時。一枚だけ多重露光したいって時もあるかと思います。そんな時に、これまた無理矢理の多重露光方法があります。
LC-Aでその場で多重露光する方法 まず、普通に一枚撮影します。たとえば花と観覧車として、花を撮影します(順番はどちらでもいいです)。次にフィルムを巻き送ったフリをします。そして観覧車を撮ります。はい、「どういうことやねん!」ってなりますよね(笑)。 説明が少しややこしくなりますが、フィルムをカメラの中で空回りさせながらフィルムを一枚分巻き送ります。するとシャッターのロックが解除されます。 はい、やっぱりややこしいですね(笑)。 撮影が終わって、フィルムを巻き戻す時に底面のボタンを押しますよね。何のためか知っていますか? これによって巻き送りのギアの部分が空回りするんです。このボタンを押さないと、中でギアが引っかかって巻き戻せません。 このボタンを活用します。
以下、手順です。
1、一枚撮影する
2、フィルム底面のボタンを押し込む(これでカメラの中の巻き送りが空回りする)
3、巻き戻しクランクが回らないように、上から指で押さえ込む(ここを押さえて固定しないと、フィルムが少し送られてしまうため)
4、いつも通りフィルムを一枚分巻き送る(シャッターロックが解除される)
5、撮影する
左手で底面のボタンを押しながら、巻き戻しクランクを押さえ、右手で巻き送ります。少し大変ですが、慣れるとスムーズに出来ます。
LC-Aに限らず、巻き上げが手動のフィルムカメラならこの方法は使えます。ほんとに無理矢理なんですけどね。でも、裏ワザっぽいでしょ。 もう一つ、簡単に出来る裏ワザがあります。
LC-Aで長時間露光をする方法 LC-Aは露出がオートです。カメラの正面から向かって、右上の窓で明るさを計っています。
オートなのでどんなシーンでも撮れるのですが、夜に車のライトの軌跡を撮りたいと思っても、シャッタースピードは調整出来ません。実際に撮影してみると、シャッターがおりるのが早いです。出来上がりはちょっと暗いです。
露出を測る窓に車のライトが当たった可能性もありますが、LC-Aは基本的に夜景などを撮影すると若干暗めになります。
オートは楽チンですが、自分でシャッタースピードを調整したい時ってありますよね。そんな時は、HOLGAなどに付いているバルブ撮影(B)をします。これでシャッターを押している間はシャッター窓も開きっぱなしになります。 方法は簡単です。露出を測る窓を隠せばいいだけ。指でもいいですが、指で押さえながらシャッターを押し続けるのは辛いので、黒のビニールテープを張りましょう。
これだけでオッケー。カメラは真っ暗だと判断するので、シャッターがおりなくなります。
この状態で5〜10秒くらいシャッターを開けていたら、以下のように光の軌跡を撮ることが出来ます。当然三脚は必須です。なければ地面や手すりなど、カメラを固定出来る場所に置いて撮影しましょう。
地べたにカメラを置いて撮影
手すりに置いて撮影。
太陽が沈んだ直後の暗くなった瞬間、露光時間を長くして明るく撮ることで、紫色の空になります。実際の空はもっと暗いです。
裏ワザと言えば他に接写もあります。最短撮影距離の80cmでも、花を撮ると小さいです。「もっとアップで撮りたい!」って方は「トイカメラの教科書 第20回」をご参考下さい。
最後に私事ですが。フィルムトイカメラ教室を大阪と名古屋で新たに開講します。大阪は平日クラス。名古屋は日曜日クラスになります。フィルム別の発色やクロスプロセス、多重露光などを学びます。一緒に撮影に行って、写真を見せ合いながら、スキルアップを図りましょう。
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