雨樹一期のトイカメラの教科書 第8回 「フィルム選び ネガ編」


こんにちは、雨樹です。これまでにフィルムの種類や感度を説明したのですが、ここからはフィルム選びについて書いていきますね。いやはや、今回のコラムはかなり苦労しました。要・保存版ではないでしょーか。とはいえあくまで主観なので、実際違うじゃないかってクレームはやめてくださいね(笑)。

まだフィルムの話?と言われそうですが、フィルムとはなかなか奥が深いのです。種類もたくさんあって、発色も微妙に違うんですね。

今はアナログプリントをする店舗ってほとんどなくなりました。たいていデジタルデータにしてからのプリントなんですよね。トイラボさんではデジタルデータをネットでダウンロードするという形で、フィルムカメラという「アナログ」と「デジタル」が入り交じっている感じですね。僕はトイラボさんでお世話になる以前、現像所で勤務してたので、自分で現像して自分でスキャニングしていました。このスキャンがまた時間かかるんですよね。なのでデータにして頂けるというサービスはとても嬉しいです。

デジタルデータにすることによってフィルムの特性は少し失われてしまうので、「フィルムで撮ったらアナログプリントをするべきだ!」という方もいますが、フィルム感や特性はやっぱり残ります。それに僕はモニターで見る写真も美しくって好きです。そしてやっぱり便利です。ていうより、僕はブログなんかで写真を見せたいんだから、デジタルにしなくちゃ話になりませんよね。アナログプリントしてそれをスキャンする手間も大変ですから。でも結局それもデジタルになっちゃうのかな。ま、そこからは好みの問題であって、無理に強要することでもなく、自分がいいと思う形で写真を楽しんでいけばいいと思っています。


さて。フィルムによってどれだけ発色が違うか。これもまた些細な違いかもしれません。一見「同じやん!」って思われそうではありますが、やっぱり違うんですよね。

感度のコラムの時に少しふれましたが、低感度フィルムの方が発色は鮮やかだと。全部がそうというわけでもないのですが、その説明も兼ねつつ今回はフィルム別の発色の違い(ネガ基本編)のコラムに致します。

ちなみにフィルムは生ものなので、期限があります。それを越えると発色が悪くなったり、像がちゃんと現れなかったりします。冷蔵庫などで保存していると期限が切れても少しくらい大丈夫。冷凍保存だと半永久的に使えます(とはいえ僕はまだ期限を4年過ぎたものしか使ったことないですけど 笑)。

まずは僕が一番好きなフィルムから。といっても、もう生産されてないので載せるべきではないかもしれないんですが、このフィルムの良さは伝えたいんですよねー。たまにオークションなんかで高額で売られています(笑)。

● AGFA ULTRA100
このフィルムはなんといっても鮮やか! 「ペンキで塗ったような発色」と言われたフィルムで、蜷川実花さんも使われていて、まだ大量にストックがあると聞いたこともあります。僕はもう10本もないかな。生産終了後くらいに写真をはじめたもんだから、そんなこと知りもしなかったんですよね。もっと買っておけば良かった。で、桜との相性が抜群にいいので、この春に何本か消費しました。このフィルムは是が非でも復刻をして欲しいですね。


 アグファシリーズでもう二つ。僕は最近めっきり使わなくなったんですが、アグファヴィスタ。トイカメラ向けとして販売もされているのを見かけます。元々はEU製だったんですが、現在売られているのは日本製。plusがついて販売されています。日本製になって優秀になったけど、個性がなくなったような気もしますねー。もっと撮り比べてみないと分からないですが、とりあえずEUと日本に分けて紹介を。

● AGFA vista100
感度100の割にはザラっとしてるし、色の再現も良くはないですね(フィルムの期限が切れていたからかも)。でもあらためて見てみると好きかもしれない(笑)。黄色がのってくるというのかな、どこか色褪せたようなレトロ感がありますね。そしてアグファは赤が得意なので、やっぱり赤い花なんか撮ると抜群の発色ですね。


● AGFA vista plus400
こちらは現行品のプラスがついたバージョン。EU製よりも色の再現がいいですね。割と見た目に近い感じで撮れるかなと思います。うん、いいフィルムですね。


次に僕が好きなフィルムがコダックのエクター100です。感度100の中では世界最高の粒状性を持つカラーネガフィルムと言われています。つまり、銀の粒子が細かいので大きく引き伸ばしても荒れた写真にはならないんですね。逆に粒子が大きいと画像のザラ付きが目立ちます。それはそれでフィルムらしくっていいんですが、それも好みですかね。とにかくこのフィルムは綺麗に写ります。グラデーションも滑らかです。発色はアグファウルトラみたいに派手ではないけど、忠実に色を再現してくれます。

●Ektar100


次はイタリアのフィルムメーカーFerrania社のSolarisです。フィルム感度は100と200と400と800があります。ここでさきほども書きました粒子。これは基本的に感度が高いほど大きくなり、画像が荒くなります。ソラリスはもともとそのザラ付きが強いフィルム。800になるとそのザラザラが気になりますね。

● Solaris100
色彩は赤や黄色が映えるレトロ調。コントラストも強めなので、トイカメラで撮るにはなかなかオススメのフィルム。

● Solaris200
他の感度と違って低彩度で落ち着いた色が特徴。僕はソラリスの中では200が一番好き。

● Solaris400
あまり使ったことはないんですけどね。100とよく似てレトロ調に。ソラリスは黄色かぶりをすることが多いらしいです。確かに赤が朱色に。コスモスの写真の中央のぼやっとしたピンクは光漏れによる効果です。ソラリスは光漏れとの相性がいいとかあるかもしれませんね(笑)。

● Solaris800
発色はやや弱め。200の低彩度とは違って色が薄いような感じ。少しザラつきも目立ちますね。室内での撮影にはいいかなと思います。


次は言わずと知れたロモグラフィーのフィルム。感度は100と400と800があります。

● Lomography Color Negative 100
鮮やかですね。アグファウルトラの代用品として一時期よく使っていました。価格も三本で800円ほど。天気のいい日に野外で撮影するならオススメです。

● Lomography Color Negative 400
100とは違って、400はとたんに落ち着いた色に。感度400なのでシャッタースピードはかせげるので、猫などの動く被写体にも使えますね。野外だけでなく室内でも撮るならこのフィルムを。ちなみに僕はあまり使いません。



次に安価で優秀なフィルムを。コダックのスーパーゴールド400です。色の再現も美しく割と鮮やか、色んな場面で活躍してくれるフィルムです。

● Kodak Super Gold 400



少し価格は高いのですが、コダックのポートラも紹介しておきます。昔はポートラシリーズはNCとVCに分かれていましたが、いまは統一されちゃいました。統一後はどちらかというとNCに吸収された感じなのかな。今はもう生産されていませんが、まだたまに見かけるのでNCとVCの紹介をします。NCというのはナチュラルカラー、VCというのはビビットカラー。どちらもとても優秀なフィルムですね。まずはNCとVCの違いを。以下の写真、左がPORTRA160NCで右がPORTRA160VCです。VCの方が若干鮮やかかなーって感じですね。ん?あまり分からないですかね(笑)。



● Kodak PORTRA160NC
色の再現もよく、グラデーションも滑らか。ソラリスなどのレトロ色などではなく、忠実な色再現。少し明るめに撮ると柔らかさも表現できます。エクターと比べると、ポートラの方が柔らかいかなって感じですね。

● Kodak PORTRA160VC
ビビットカラーとはいえ気持ち鮮やかという程度。ただ、僕にとってはこの「気持ち」分が重要で生産中止が惜しまれます。とにかくとても優秀なフィルムだなーって感じます。

● Kodak PORTRA400NC
160と同じく、こちらもとても優秀なフィルム。色の再現力もあって、グラデーションも滑らか。あらためて比べてみると感度400のフィルムの中では、断トツで一番いいなーって思います。フィルム特有の柔らかさもあるので、NATURA CLASSICAに入れて使うのもいいですね。感度も400ということで色んな場面で撮れます。ただ、見た目に近い感じで撮れるので、ソラリスと比べると面白みには欠けるかもしれません。現行品のPORTRA400もほぼ同じかなと思います。



● Kodak PORTRA800
これまたいいフィルムです。160や400と比べるとザラつきはやや目立ちますが、そこまで気にはならない程度です。もしろ高感度のフィルムなのに奇麗なくらい。暗い場所での撮影にも適していますが、コントラストがきつくないので明暗差が激しい場所でも色が飛び過ぎることがなく、どちらの色も再現してくれます。


最後に高感度フィルムのNATURA1600。これは富士のフィルムで僕が一番良く使っているフィルム。感度が高いのでフィルムのザラザラ感はありますが、何より多少暗いところでもノンフラッシュで手ぶれせずに撮影が出来ます。夜景を撮るときは必須ですね。もちろん室内撮影も可能です。高感度フィルムの割に色も鮮やかです。

そしてこのフィルムの優秀な部分はラチチュードが広いこと。「ラチチュード」というのは、露光の許容範囲。といっても意味が分かりにくいですね。写真には「適正露光」と言って必要な光の量が決まっています。これがズレると真っ暗になったり、明るすぎて真っ白になったりします。でもこのフィルムは特に明るい側への許容範囲がとても広いんです。多少明るくとっても、真っ白になることはありません。むしろ明るく撮ることをオススメしたいですね。たとえばLOMO LC-Aは感度設定が400までしかありませんが、あえて400で撮る方がいい写真になったりします。NATURA CLASSICAで撮影時にはNPモードになるのですが、これも実際は明るめに撮影されています。

● NATURA1600



さて、長々と書かせて頂きましたがどうでした? あれま、微妙で分からない? うーーん、一見そうかもしれないですが、使って行くと少しずつ違いも分かってくると思います。そしてこの微妙さを選ぶのが楽しくもなってきます。そしてやっぱり高価なフィルムは優れていますね。

次回は変わり種のネガフィルムとリバーサルフィルムについて書こうと思っています。さすがに今回ほどは長編にならないですが、今回よりも色彩の面では分かりやすいものになるかと思います。


さて、最後に現時点で決定している展示の告知を。
まずは11月のボダイジュエキスポです。NEW OSAKA HOTEL心斎橋さんを丸ごと貸し切って開催されるという、日本初のイベントです。http://expo.bodaiju-cafe.com/12月にはボダイジュカフェさんにて二人展を開催します。http://www.bodaiju-cafe.com/index.html
名古屋にて開催中のトイカメラ教室も生徒さんを随時募集しています。
http://www.chunichi-culture.com/

■ プロ・トイカメラマン雨樹一期オフィシャルサイト
http://www.amaki15.com/

■ トイカメラ日和
http://amaki15.blog90.fc2.com/

■ 猫レシピ
http://cat.amaki15.com

■Twitter
http://twitter.com/amaki15

雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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