雨樹一期のトイカメラの教科書 第5回 「トイカメラとは?」

 さて、今回のコラムは今更ですが、「そもそもトイカメラとは?」ってことを書かせて頂きたいと思います。+いくつかのトイカメラのサンプル写真を。これ、はじめにやるべきですよね(笑)。
 ま、とにかくよく質問されるんですよね。「トイカメラってなに?」ってことだけでなく、「そう聞かれた時にどう説明すればいいの?」とも。でもこれをどうも上手く答えにくかったりします。直訳して「おもちゃのカメラですのよ」と言っちゃうと、相手のリアクションはすこぶる悪いです。「あらそう…」と話も膨らみません。幾つかのサイトでは大人のおもちゃと説明されていますが、それはちょっとねぇ。さすがにどうかと思います。
 もっと良さを伝えたいけど、「誰でも簡単に雰囲気のある写真が撮れるカメラ」と言っちゃうのも無責任な気もします。トイカメラって案外難しいですからね。しかも自分の仕事を誰でも出来ると言ってしまってるようで少し抵抗(チンケなプライド)があります。なのでここでちゃんと説明させて頂きます。
の前に、文章ばかりになりそうなので少し写真を挟みます。

◆ LOMO LC-Aで撮影

◆ Vivitar Ultra Wide&Slim

 まず、Wikipediaでは以下のように書かれています。『トイカメラ(英語: Toy
Camera)は、玩具のような素材で製造され、年少者を中心とした大衆的な普及を目的とした写真機である。筐体・レンズ等、ほぼ全体を構成する素材が合成樹脂等から作られ、軽量であり、組立の構成が比較的簡単で、比較的安価である。香港製の銀塩写真機であるホルガがその代表とされる。同一の構造でも品質にばらつきが多くみられる製品も多い。その構造ゆえ、一般的なメーカー製カメラと比べて歪み・ぼけ・現実とかけ離れた色調が生じるなど、独特の写りをみせる製品が少なくない。プロカメラマンなどによりその奇妙な光学効果を逆に利用した写真が発表され、報道や芸術関連の分野で賞を得ることも生じ、それらの評価で人気に火がついた。現在でも愛好家や芸術家などに強く支持されている。』

 とまぁ、漢字ばかりでよく分からないですね。筐体(きょうたい)なんて辞書必須レベルの漢字です。ようは「プラスチックで出来た安い作りで、デジカメみたいにちゃんと写らないけど、味がある描写をするカメラ」ってことですね(笑)。とりあえずトイカメラを全く知らない方にはそんなニュアンスの説明でいいかなと。

 もう少し突っ込んでいきます。安くてプラスチックとなると、王道とも呼べるLOMO LC-Aはそこに含まれません。僕の好きなHORIZON PerfectもLubitel166+も違いますね。

 となるとこの説明からだとやっぱりVivitar Ultra Wide&SlimやHOLGA、Diana+なんかがトイカメラにあたるのかなと思います。これらは機能がほとんどありませんし、Vivitarはシャッタースピードは固定されています。なので暗いところはとっても苦手。雰囲気はいいですけどね。

◆Vivitar Ultra Wideで撮影

 でも今はロモグラフィーで売られてるカメラは全部トイカメラと思われているし、富士フィルムのNATURAまでしばしばトイカメラ扱いされています。そんなつもりはないんですが、僕もその一人かもしれないですね。露出もピントもオートでしっかり撮れるから全くトイではありません。
と、まぁとにかく説明が難しいのです。プロトイカメラマンという肩書きで仕事をしている僕も、基本のカメラがLOMO LC-Aなもんだから、さらに僕が説明するとややこしいややこしい。
  ということで、あくまで僕の中での結論。NATURA CLASSICAやLubitel166+やHORIZON Perfectはちゃんとキレイ撮れるし、ピントの甘さもあまりないし、構造がしっかりしているのでトイカメラではないけど、他はトイカメラでいいんじゃないかなと(笑)。たとえ販売する側がトイカメラとして扱っていなくても、受け取る側(購入する側)の方が肝心だし、そもそもLC-Aもトイカメラとして購入する方が多いですからね。買った人がどう考えようが自由かなって。ま、ほんとはどこからどこまでがトイカメラという説明は必要ないとは思うんですけどね。

◆NATURA CLASSICA写真

◆Lubitel166+写真

◆ HORIZON Perfect

 ということでここで自分なりに分類した表を作ってみました。右にいくほどトイカメラっぽくって、上にいくほど写りはぼんやりです。

 もう少しだけ補足します。トイカメラという分野に限っては、ある程度発言の影響力も出てきたかもしれないので、本当は安易に言えないですが、あくまで僕の考えとしては機械的な形成をされている高価なLC-Aもトイカメラということでいいじゃないかと。ピント合わせ以外はオートで撮れるけど、周辺光量落ちや露出には個体差があるし。それが突如ランダムで狂うことだし。でもそれがいい訳であって、全部ちゃんと撮れるようになり過ぎると面白くないですから。

 やっぱりトイカメラは不完全さこそが味だと思います。はい、やっぱりここですね。『不完全さ』です。ダイアナは全体的にぼんやりで、ホルガは中心以外がぼける。両者はまれに意図もしない光漏れをおこす。LC-Aは意外としっかり撮れるけど、周辺光量落ちがありノスタルジック。時に想像もしない写真が撮れ、その場の空気感ごと写してくれる。

 全部に共通して言えることですが、トイカメラって中途半端な失敗よりも、おもいっきり失敗した方がより味がでます。

◆ Diana+

◆HOLGA

◆ LOMOLC-A

 上の写真の通り、それぞれ特徴は全く違いますがどこかにトイカメラらしさがありますよね。

「トイカメラって?」

 それは「ピント合わせが目測だからということもありますが、今主流の輪郭くっきりなデジタル一眼とは逆行したような緩い写りで、思ってもいないような色彩の写真が撮れたり、失敗しても味が出たり、その場の空気感ごと写してくれたり、昔撮った写真みたいにノスタルジックに写ったり。撮影に慣れてきたと思っていても、突然言うこと聞いてくれなくなるようなあまのじゃくさもある困ったカメラです。でも、そんな不完全さも含めて楽しめるのがトイカメラ」だと思います。

 また、外観がオシャレで可愛いものが多いのでファッションアイテムとしても好まれますね。そして一台では物足りず、何台かは持ちたくなるのがトイカメラの特徴です。一度にたくさん持ち過ぎるとどれも使いこなせなくなるので、浮気はほどほどに。まずはやっぱり初心者でも扱いやすいLC-Aがオススメですね。

■ プロ・トイカメラマン雨樹一期オフィシャルサイト
http://www.amaki15.com/

■ トイカメラ日和
http://amaki15.blog90.fc2.com/

 

(参考サイト)
◆LOMO LC-A
http://japan.shop.lomography.com/cameras/lc-a-cameras

◆ Vivitar Ultra Wide&Slim
http://www.gizmoshop.jp/products/detail.php?product_id=6

◆NATURA CLASSICA
http://fujifilm.jp/personal/filmandcamera/filmcamera/35mm/naturaclassica/index.html

◆Lubitel166+
http://microsites.lomography.jp/lubitel166+jp/

◆ HORIZON Perfect
http://japan.shop.lomography.com/cameras/horizon

◆ Diana+
http://microsites.lomography.jp/dianajp/diana-f-camera

◆HOLGA
http://superheadz.com/holga/

雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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