雨樹一期のトイカメラの教科書 第45回 トイカメラの上達方法その4「露出を知る」

こんにちばんは、雨樹一期です。トイカメラの教科書は今回で第回。これまでにいろんなことを書いてきましたが、番外編として『トイカメラの上達方法』に絞って書かせて頂いております。
第一回は距離を合わせることを。第二回はフィルムの保存方法や装填した後の注意点を。
第三回はフィルムカメラを楽しむための裏ワザを書きました。
とにかく、楽しむことって大切です。でもフィルムトイカメラをはじめようと思っても、分からないことだらけな方もたくさんいるかと思います。
そしてやっぱり、うっかりミスや失敗は多いです。
第二回では、フィルムがちゃんと巻き送られているかどうか確認することを書きました。フィルムをちゃんとセットしないと、空回りして一枚も撮れてなかったということがありますからね。注意しましょう。今回はそれに次いで多い失敗を書いていきます。

と、その前に。今回は掲載写真の少ないコラムになりそうなので、9月に東京の神田明神で撮った写真を数枚。
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歳を重ねるに連れて、神社やお寺が好きになりつつあります。神聖な空気を吸い込みたくなるんですかね。昔は何の興味もなかったのに、不思議です。ちなみに僕は願い事なんて言いません。「来ました。健康にやってます!」って報告するだけです。

では、本題に。
トイカメラで多い失敗とは、光のコントロールを誤ってしまい、真っ白や真っ黒写真になることです。そのために露出を知りましょう。
まずはそんな失敗を減らすために、ここからは単純かつ、やや極論で書いていきます。

露出とは?
『露出=カメラで、レンズのシャッターを開閉して、乾板・フィルムの感光膜や、CCDなどのイメージセンサーに光を当てること』
デジタル一眼をやっている方ならある程度分かるかとは思います。写真教室では一番はじめに教えることですね。
写真は光がないと撮れません。その光の量を、絞りとシャッタースピードで調整することがとても大切です。
でも、スマホやコンパクトデジタルカメラでした撮ったことがないと、そこを覚えずに素通りすることが多いです。なぜかと言うと、カメラがそれらを勝手に調整してくれるからです。
カメラ初心者にはこの時点で少し「??」かもしれませんね。出来る限り、簡単に書いていきます。
絞りとはシャッター窓が開いた時の、穴の大きさです。
シャッタースピードとは、その穴が開いている時間です。
穴が大きいと、光がたくさん取り込まれます。穴の開いている時間が長いのも同様です。
これを調整して、必要な光の量をちゃんと集めることで、ちゃんとした写真が撮れます(これを適正露光、または適正露出といいます)。たとえば、光が足りないと暗い写真に。光を入れ過ぎると明るい写真になります。
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トイカメラは適正露光で撮れない
明るめに撮る写真(ハイキー)は、女性に人気がありますが、目指すは適正露光での撮影です。先ほども書きましたが、スマホやデジカメの露出はオートなので、ほぼ適正露光で撮影が可能です。
ですが、トイカメラはこれがとっても苦手なんです。特に暗い場所にとても弱いです。夜景に限らず、部屋の中での撮影でも、とても暗くなってしまいます。
これの原因は、シャッタースピードと絞りが、ほぼ固定されているからなんですね。調整が出来ません。つまり、日中の明るい野外だろうと、夜景だろうと、同じシャッタースピード、同じ絞りで撮影してしまうんですね。
当然、明るい場所なら光がたくさん入りますが、暗い場所だと少ししか入りません。結果、上記のような写真になってしまうんですね。

トイカメラ初心者で露出を理解していない方は、明るさに関係なく撮影してしまいます。外で撮影して、家に帰って来てペットを撮影する。そして「上手く撮れない」と言う。当然のことなんですね。
たとえばHOLGAですと、シャッタースピードは1/100の固定です。絞りはf/8とf/11の2種類だけ。絞りはレンズ部分のお天気マークで調整します。微々たる差ですが、2種類あるだけでもいい方です。絞りが固定のトイカメラもあります。
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シャッタースピードや絞りの数値を言われても、それがどれくらいのものは分からないかもしれませんが、とにかく光量の調整が苦手ということは分かるかなと思います。

フィルムの感度を知る
さて、少し難しく感じてきた方もいるかもしれませんが、もう少し頑張って下さい。露出で重要なことがもう一つあります。
それはフィルムの感度です。ISO(イソ)で表記されています。これは何かと言うと、光に対する能力です。数字が大きいほど、能力が高くなります。つまり、少ない光でも撮影が出来るということです。
* 現在販売されているフィルムだと、35mmはISO50〜1600まで。ブローニだと100〜800まで。
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単純に言うと、明るい場所で撮るなら100400の間のフィルムを。家の中だと4001600のフィルムを使えば、ある程度の露出を合わせることが出来ます。
フィルム名に入ってる数字がそのまま感度になります。たとえばPROVIA100Fなら感度が100NATURA1600なら感度は1600です。以下の写真のフィルムだと、感度は400になります。

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実際にどうすればいいか?
極端に言えば、外か家か、どちらかでしか撮らないということです。もしくは中間の感度400のフィルムを使うかです。400のフィルムでも家の中では少し暗く写りますが、一番無難ですね。
100のフィルムを入れたなら、外オンリーで撮りましょう。それくらいの極論で撮影していくと、失敗は随分減って来ると思います。
また、フィルムの種類にはモノクロとネガとリバーサルがありますが(第3回のコラム参照 https://cafe.toylab.jp/column/amaki15/6303/)、それぞれ特徴があります。
ネガは適正露光で撮れなくてもある程度カバーをしてくれますが、リバーサルは光量が少し狂うだけで、もろに影響を受けてしまいます。つまり、少し光が足りないだけで、真っ暗な写真になってしまいます。光が多いと、真っ白になります。
ということから、トイカメラには基本的にはネガフィルムを使用することをオススメします。
もちろん、前回のコラム同様に、天気のいい日に撮影するなら、リバーサルフィルムで撮って、クロスプロセス現像もおすすめです!
また、トイカメラといっても、露出がオートのLC-Aなどもあります。今回は安価でプラスチックで作られた、HOLGAやDiana+やDiana Miniなどで撮る時の注意点になります。
この3台はトイカメラの中では定番。持っている方も多いですが、上手く撮れないという方がほとんどです。その原因の一つが『露出を知らないから』、なんですね。

ということで、まとめると。
日中に野外で撮るだけなら、感度100か400のフィルムを。いろんなシーンで撮りたいなら、感度400か800のネガフィルムで撮る、です。


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雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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