雨樹一期のトイカメラの教科書 第2回 「LOMO LC−A(+)の説明書」

雨樹一期のトイカメラの教科書 第2回「LOMO LC−A(+)の説明書」

 今回のコラムは愛すべき僕の変わらない相棒、LOMO LC-A(+)です。確かにこれまでに、HOLGAやHORIZONやSPROCKET ROCKETやNATURAやDiana+やblackbird,flyやLubitel166+に浮気はしました(笑)。でもずっとそばにいたのはいつもLC-A(+)でした。ま、そうは言っても3台目。今使ってるのは限定で発売された青ロモちゃん。塗装が剥げてボロボロですが。なんとか、迷彩柄だと思って見て下さい(笑)。

 今回はそんな相棒の超基本や、LC-AとLC-A+の違いなんかを書かせて頂きます。ここまで基本を書くのははじめて。でもそれが誰かにとってLC-A(+)をはじめるきっかけになってくれたら嬉しいし、もうすでに持ってる方はもっかい初心からおさらいをして頂ければと思います。


『トンネル効果』

まずLC-Aは現在は生産されていません。生産中止になったんですよね。だけど人気があったことから、LC-A+として、再販されたんです。ロシア製から中国製になりましたが。

写りの違いに関してはさほどありませんが、そもそもLC-Aの描写は一台一台微妙な違いがあります。品質が安定していないからだそうで、レンズも設計上の欠陥から周辺が光量落ちします。これがいわゆる「トンネル効果」ってやつですね。逆光で撮ると如実にあらわれます。このトンネル効果が好きでトイカメラはじめる方がいるのに、それがレンズの欠陥だなんて面白いですよね。そのトンネル効果はLC-A(+)によっても若干違います。

日本製の几帳面なほどしっかりと作られたカメラやレンズとは全く違いますね。
 
 


『感度設定』

機能面も若干違います。まずは、感度設定ですね。LC-AはISO25~400なのに対して、LC-A+はISO100~1600まであります[ISO=感度。LC-A(+)はASA表示]。これに関しては僕はLC-Aの方が良かったかなと。ISO1600のフィルムといえば、定番となるのがNATURA1600です。当然それを使うならLC-A+と思いきや、感度設定が400までしかないLC-Aでも問題ありません。

少し明るく撮れますが、このフィルムは多少の露出のズレくらい何ともありません。特に明るく撮る側にはかなりカバーしてくれるんですね。

もちろん設定は400なのでシャッタースピードはおちますが、感度設定を100より下げたい時があってもLC-A+では出来ないのでちょいと困ります。ISO100のフィルムで少し明るく撮りたい時もあるし、明るく撮れば面白い発色をするレッドスケールというフィルムもありますからね。

ISO(イソ)とは感度のことで、簡単に言うと光に対する能力のことです。数字があがるほど能力も高くなります。ISO100のフィルムは光がたくさん必要なのに対し、ISO1600は少しの光でいいので暗い場所でも撮影可能です。こう書くとISO1600の方がいいかと思われますが、ISO100の方が微粒子だったり鮮やかだったり、それぞれメリット・デメリットがあります。またこれに関してはいつか改めて、詳しく説明します。

■ ISO100のフィルムで撮った写真
 

 ■ ISO1600のフィルムで撮った写真
 


『ケーブルレリーズ』

LC-A+にはシャッターボタンに穴が開いています。これはケーブルレリーズを差す為にあります。これを使うことで離れた場所からシャッターを切ることが出来ます。ケーブルの先端をシャッターに差し込んで、反対側を押し込むことでシャッターが切れます。
 

 これはセルフ撮りをする時にも使えますが、長時間露光の時に特に役に立ちます。シャッターボタンを押した瞬間にブレることも防げますね。

そしてなにより、シャッターを指で押し続けなくてもいいので助かります。LC-A(+)はシャッターを離すと、自動的にシャッターが閉じるようになっているので、自然に閉じるまでは押し続けないといけないんです。

たとえば、ケーブルレリーズがない状態、光のほとんどない場所で、シャッターを30秒〜1分程度開かないといけないとなると、ブレないように気を付けながらも、シャッターが閉じるまでずっと押してなくちゃいけない。指が吊りますよ、これ(笑)。


『ワイドアングルレンズ』

LC-A+には専用のアクセサリーが充実しています。中でも僕が好きなのはワイドアングルレンズ。その名の通り広角に撮れます。少しお高いのが難点。
 
 


『多重露光』

次に多重露光スイッチの有無です。LC-Aでは1枚撮ると、フィルムを巻き送らないとシャッターが下りないようになってますが、LC-A+はそれを解除するスイッチが底面にあります。これで何度でも同じ場所に撮影することが可能になりました。これに関してはあった方がいいですね。


『絞り』

あとは逆になくなった機能を。LC-Aには本体を正面から見て左側に絞り設定がありましたが、LC-A+でそれはオートになりました。

絞りというのはシャッターを開いた時の穴の大きさです。穴が大きいほど、当然光がたくさん入ります。これってなかなか使える機能なんですが、シャッタースピード(シャッターを開いている時間)が1/60秒に固定されるという致命的な欠点があります。つまりLC-Aで絞りを設定してしまうと、暗く撮れたり明るく撮れたり。適正で撮れなくなるんです。

写真には必要な光の量が決まっています。シャッターを開いて光を取り込むのですが、夜景なんかだと長い時間シャッターを開く必要があります。それなのにシャッタースピードが1/60なんかじゃ真っ暗ですからね。

絞りとシャッタースピードの関係はトイカメラにはあまり必要ないのですが、知っておいて損はないので、これもまた改めて説明出来ればと思っています。

 LC-Aでも絞りはオートに出来るので、結局はほとんどオートで撮影するので、LC-A+ではこれはいらないだろーって理由で省かれたと思います。どちらも何やかんやで露出はちゃんとオートではかってくれるので、撮影は楽チンです。とにかく失敗の少ないトイカメラですね。ここまでくるとトイカメラと言っていいのか分からないくらい電子的ですが、そのオートでの露出も完璧には安定はしていないので、やっぱりトイカメラに分けられるのかなーと(笑)。

ただ、その不安定さがあるからこそ、思いも寄らない写真が撮れたりするんですよね。それこそが味です。


『撮影前の注意点-1』

電子的なので撮影には電池が必要になってきます。底面にある電池ボックスにボタン電池を入れます。SR-44かLR-44という電池を3個使います。

そこで撮影前の注意点を。それは、電池があるかどうかの確認です。電池がないと、撮影は出来ませんから。でもシャッターは開いたような音がするので、厄介です。一年ぐらいなら変えなくても大丈夫という人もいますが、一概には言えないので、念の為に確認を。

それは覗き窓の赤いランプが点灯するのを確認するだけです。シャッターを半押しするとファインダー内の左の赤いランプが光ります。ちゃんと光っていたら電池が残っているということ。これが消えていたり、うっすらしか光っていないとちゃんと撮れない可能性があります。右のランプは手振れ注意の知らせ。暗い場所だとシャッタースピードは遅くなるので、右のランプが点灯する場所ではカメラを出来るだけ固定して撮影しましょう。

またLC-A(+)は全面のレンズカバーを開かないととシャッターがおりないようにようになっています。確認の際にはカバーを開いて下さいね。


『撮影前の注意点-2』

次の注意点はフィルムの巻き送りがちゃんとされてるかどうかです。空回りしていて一枚も撮れていないミスってよくありますから。それを避ける為、フィルムを巻き送る際に、巻き戻しクランクが回ってるのを確認しましょう。


『撮影前の注意点-3』

最後の注意点は感度設定です。フィルムの感度と感度設定窓の数字を合わせましょう。僕はISO100のフィルムを使うことが多いのですが、たまにISO400を入れちゃうと、その時はISO400にするものの、次にISO100を入れた時に400から100に戻すのを忘れちゃうんです。


 この三点を確認する癖をつけておきましょう。僕は何度か失敗してます。失敗してる人もよく見かけます。空回りは初期に一度失敗しただけですが、電池や感度設定の方がやっかいですね。だってついつい確認を忘れがちですもん。久しぶりに撮影する時は特に確認を。

 それさえクリアー出来れば、あとはもうどこにでも連れ出しましょう。鞄にも入るサイズだし外観も可愛いし。なんといっても嬉しいのが、写真を撮ることで日常にある些細な素敵に気付くようになります。普段の通学路や通勤路がこれまでより少し輝いて見えてきます。意識が変わるというのかな、写真を撮ることで気付ける幸せもあるんですよね。


『描写』

さーて、まだ続きますよ(笑)。はじめに少しふれましたが、つぎは描写ですね。ピントですが、基本ぼんやりです。もちろん撮る人の腕にもよりますが(笑)。

 LC-A(+)は本体サイドにあるレバーで焦点を調整するのですが(80cm,1.5m,3m,∞)、最短距離の80cmや∞ならなんとかなるけど、1.5mや3mの距離感が難しいです。

まずは自分の中での感覚を掴みましょう。たとえば80cmは手を伸ばしてギリギリ届くか届かない距離という感じで。1.5mだったら、自分がそのまま被写体に倒れ込んで目に当たるくらいとか(笑)。

ちなみにレバーは4段回ですが、80cmと1.5mの間で止めて1mにピントを合わせることも可能です。結構知らない人が多いけど、さほど必要でもないです(笑)。

ピントの確認はファインダーを覗いても確認出来ないので、合ってるのかは現像するまで分からないです。でもそれが結果、何とも言えない味になっていたりするんですよね。わざとぼかして撮るのもありだと思います。現像を待つ楽しみもありますね。

フィルムを撮り終えたら底面にある小さなボタンを押しながら、フィルムが空回りするまで巻き戻しクランクを時計方向にまわして下さい。あとはトイラボさんにフィルム送って現像を待ちましょう♪


さて。そろそろまとめます。露出や色調の崩れが意図しない写真を作り出す。その偶然性こそがトイカメラの魅力だと思います。

LC-Aの価格は他のトイカメラと比べると少し高いですが、僕はそれ以上のものを貰ってきました。初心者の方でも扱いやすいのに、トイカメラらしさもたっぷり含んでいる、ほんと一番おすすめのカメラです。デジタルにはない魅力たっぷり。フィルムだからこその色彩。日常をドラマティックに変えてくれる。なんて書いていたら、引きこもってコラム書いてないで、撮影に行きたくなってきましたよー。

最後にもう一度。写真で説明するにはお見苦しいくらいの塗装ハゲハゲのLC-A写真でごめんなさい。

ではでは、そんなLC-A(+)で撮った写真をもう少しだけ。

 ■ ネガ現像
 

 ■ リバーサル現像
 

 ■ クロスプロセス現像
 


 さてさて、勝手ながら写真展の告知もさせて下さい。大阪の扇町にありますボダイジュカフェさんにて、個展を開催致します。雨樹一期 観覧車写真展「追憶」。期間は12/12〜12/25まで。まだこのコラムを書いている時は搬入前なのですが、これまで展示してきた中では一番満足感のある出来です。カフェは広いので、少し別にスペースを使って猫の写真も展示致します。観覧車が9割ですが、猫の作品もかなりいい感じに出来ました。それぞれのフォトカードや2012年のカレンダーも販売しています。ぜひぜひお時間を見つけてお越し下さい。

  また、名古屋にて開催しているトイカメラ教室でもグループ展を開催しています。「恋するカメラ〜幸せのカケラ」。生徒さんも随時募集していますー。トイカメラ初心者さんも歓迎です♪ お問い合わせは栄中日文化センターまで。

雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

 

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