わたしのカメラ三昧 第31回 ミラーシャッター一眼レフ「Fujica ST-F」

1.はじめに
 小生はコンパクトカメラやレンジファインダーカメラが好きだ。しかし,多くの場合,パララックスの問題がある。一眼レフは本質的にこの問題がないのであるが,大きくて重い。 そんな中で今回のカメラは一眼レフでありながらフラッシュをも搭載しつつ非常にコンパクトにまとめている。むしろ,コンパクトカメラを一眼レフ化したものと考えた方が当たっているかもしれない。写真1にその外観を示す


写真1.フジカST-Fの外観

 

2.仕様と特徴
 まず,このカメラの仕様を確認しておこう。例によって,間違っているかもしれないことをあらかじめお断りしておく。

(1)名称:Fujica ST-F
(2)型式:35mmミラーシャッター式一眼レフカメラ
(3)感光材料:135判フィルム(ASA 64, 100, 400のみ)
(4)フィルム送り:背面ダイアル巻き上げ,クランク巻き戻し
(5)フィルム計数:自動リセット順算式
(6)画面寸法:24×36 mm
(7)レンズ:FUJINON 1:2.8 f=40mm,レンズ交換不可
(8)ファインダー:スプリットイメージ
(9)距離調節:手動
(10)露出調節:手動(CdS露出計内蔵)
(11)シャッター:プログラム式ミラーシャッター
   (1/60秒・F2.8~1/750秒・F22)
(12)シンクロ接点:なし。フラッシュ内蔵(フラッシュマチック機能あり)
(13)電池:単三電池2個(電池がなくても撮影できる)
(14)質量:約400 g(単三電池2個を含む実測値)
(15)概略寸法:約850 H×130 W×750 D〔mm〕(レンズキャップを含む実測値)
(16)発売(製造)年:1979(昭和54)年
(17)発売価格:29,800円
(18)製造・販売元:富士写真フィルム

 さて,このカメラの特徴は何と言っても「ミラーシャッター」であろう。
ご存知のとおり,一眼レフではミラー(鏡)で入射光を上に反射してさらにペンタプリズムで2度反射し,最後にファインダー接眼部へと導くのが一般的である。このとき入射光はミラーに邪魔されてフィルムに到達できない。(本当はシャッターによって阻止されている。)シャッターボタンを押すとこのミラーが跳ね上がり,入射光がフィルムにあたって露光する。露光時間はシャッターの開閉動作によって決まる。この露光中はファインダーが真っ暗になる。
 上の記述で気づいた方もおられようが,入射光はミラーとシャッターの2箇所で遮断される。では,どちらかをなくせないか?一眼レフであるから,ミラーはなくせない。(なくしたら一眼「レフ」ではなくなる。)
 それでは,シャッターをなくしてミラーにシャッターを兼用させたらどうだろうか?この発想を実現したのがこのカメラであった(と思う)。
 写真2をご覧いただきたい。カメラのレンズ部分を外してフィルム側から見たものである。レンズの上側に金色の曲がった金具が,また下側に黒色の金具が認められよう。この写真は絞りを一杯に開いた状態である。上の金具の先端部分(写真では○で囲まれた部分)がミラーのストッパーになっていて,跳ね上がったミラーはこの場所で止まる。したがって,ミラーはレンズを通過する光の一部分たりとも遮らない。


写真2.絞りを一番開いたとき

 つぎに絞りを一番絞ったときの状態が写真3である。上下の金具がレンズの中央に移動しているのがお分かり頂けるであろう。この動作によって絞りを調節している。
図1はこれらのことを図解したものである。図1の(1)は写真3の状態に対応し,図1の(2)は写真2に対応している。


写真3.絞りを一番絞ったとき

 図1の(1)では下側の金具(絞り板)は上に上がっており,ミラーストッパは下に下がっている。したがって,シャッターボタンを押すとミラーは図のような位置まで跳ね上がって元にもどる。つまり,開口(絞り)は狭く露光時間は短くなる。

図1.絞りとシャッタースピード設定の機構解説図

 一方,図1の(2)では下側の金具(絞り板)は下に下がっており,ミラーストッパは上に上がっている。したがって,この状態でシャッターボタンを押すとミラーは図のように最大限上に跳ね上がって元にもどる。つまり,絞りは大きく開かれ露光時間は長くなるのである。

 

3.使い方
鏡胴部分には距離と絞りの設定リングがあるが,シャッタースピードのそれがない。シャッタースピードは絞りと連動して決まるのである。インターネットで調べたところ,1/60秒・F2.8から1/750秒・F22まで直線的に変化するのだそうだ。このことを知っていれば電池が装填されていなくても手動で露出を調整できる。また,最低速度が60分の1秒であるから手振れの心配もなかろう。
しかし,直線的とは言っても,具体的にたとえば晴れた日の屋外では普通1/125秒・F11,すなわちEV=14であるが,このカメラではどうしたらいいのだろう?絞りを11にしたらシャッター速度は1/125秒になるのだろうか?
まずはグラフに表現してみた。図2をご覧いただきたい。絞り11だとシャッタースピードは300分の1秒あたりだろうか?

図2.絞りとシャッター速スピードの逆数との関係

 数値計算できっちり解いてみよう。「1/60秒・F2.8から1/750秒・F22まで直線的に変化する」ということで式を立てそれをシャッタースピードについて解くことにする。
その前に,数列について考える。
まず,シャッタースピード。普通60分の1秒とか125分の1秒とか言う。これらは公比2の等比数列になっている。つまり,1 2 4 8 16 32 64 128 256 512 1024 …なのである。実際はこれらの逆数であるが,とにかく2倍,2倍…の数列である。それを丸めて60とか125にしているのである。よって,以下の計算では丸めない数値を用いることにする。
ここで問題になるのが最高スピードの750分の1秒。上記の数列には現れない。500(512)と1000(1024)の中間値である。ここではつぎのように考える。本来の数列と丸めた数値との比を取ってみると125分の1秒から1000分の1秒までは1.024である。よって,750分の1秒も丸めた数値と考え,その元の数値を750×1.024=768分の1秒とする。
つぎに絞りの数値。これは絞り窓の面積が2分の1倍,4分の1倍…になっているのであるが,表示はその分母の平方根を使っているというところにややこしさがある。つまり,1 2 4 8 16 32 64 …であるが,表示はそれらの平方根を丸めて,
1.0 1.4 2.0 2.8 4.0 5.6 8 11 16 22 …としているのである。よって,ここでも公比2の等比数列の平方根を使うことにする。
まず,「1/60秒・F2.8から1/750秒・F22まで直線的に変化する」ということから,関数関係をつぎのように仮定する。Tをシャッタースピードの逆数(たとえば,シャッタースピードが1/125秒ならT = 125)とし,Fを絞り(F値)とすると,
(式1)log T=alog F+b
ただし,ここでabは未知の定数である。この式に2組のデータ(22, 768)と(2.8, 64)を代入すると,つぎの連立方程式が得られる。


(式2)から(式3)を引くと,

となる。これをaについて解いて,

を得る。
つぎに,(式3)をbについて解き,これに(式5)の結果を代入すると,

を得る。(式5)と(式6)を最初の(式1)に代入する。

これでは不便なのでT = の式に変形する。

これから

となる。
検算してみよう。まず,F = 2.8(8の平方根)のときは

また,F = 22(512の平方根)では

となる。当然ながら「1/60秒・F2.8~1/750秒・F22」の両端では合致している。そこで,(式9)が正しいとして,F=4, 5.6, 8, 11, 16に対するシャッタースピードの逆数を計算してまとめると下の表のようになる。

すでに述べたように,小生は晴れた日の屋外では「絞り11,シャッター1/125」を唯一のよりどころとして覚えている。これに対して,このカメラではシャッタースピードが1段階速く設定されているということになる。

 

4.初期状態と問題点
レンズは綺麗である。シャッターも切れているようである。まずはこの2点で安心である。最低限カメラの機能は果たしている。
しかし,細かく見てみると以下のような問題が発見された。

(1)露出計が機能しない(ファインダー内の表示灯が点灯しない)
(2)フラッシュが発光しない(昇圧完了表示灯も点灯しない)
(3)フィルム覗き穴の遮光材が劣化している
(4)レンズキャップがゆるい
修理の過程で判明したこととして,
(5)ミラーが戻らないことがあった

 

5.修理
まず,ファインダー内の表示灯であるが,これはいつの間にか良くなっていた。こう書くと何とも頼りない話であるが,実際フラッシュが発光しない原因調査なども含めて電池・電源系を調べているうちに良くなったのである。電池室内の接触子を磨いたり,ばねを強くしたりいろいろしたわけである。この中のいずれかに効果があって良くなったと理解したい。

写真4.軍艦部の内部(緑色の○で囲まれた部品が昇圧完了表示灯)

 つぎにフラッシュが発光しない件。これもいじっているうちに発光するようになっていた。上記のファインダー内の表示灯が点灯するようになったのと同時に良くなったのかも知れない――。このように歯切れが悪いのは昇圧完了の表示灯が点灯しなかったからである。フラッシュは発光するようになったが,この昇圧完了の表示灯は点灯しないままなので気づくのが遅れたというわけである。
トップカバーを開けたところが写真4である。緑色の○で囲まれた部品が問題の昇圧完了表示灯である。LEDではなく,放電管のようである。
フラッシュユニットを引き上げて昇圧し,放電管の両端の電圧を測定すると220 Vほどあった。本来何ボルトあるべきかは知らないが,220 Vもあればよかろうと思い,それでも点灯しないのは放電管の故障と判断した。
放電管の予備は持っていない。(実はあったが,この時点では気づかなかった。)そこで,LEDに置き換えてみようと考えた。放電管の電流制限抵抗がどれかはっきりしないが,1MΩ程度の抵抗がプリント基板上に実装されていて,どうもその抵抗がそれらしい。LEDでは20mA程度の電流が必要なので220〔V〕÷20〔mA〕=11〔kΩ〕であるから,手許にあった10kΩを使って回路を構成した。
しかし,LEDは点灯しなかった。それどころか,フラッシュも発光しなくなった。回路・動作原理を理解しないまま目の子で対策を講じたのが駄目だったようだ。本当はこのような雑なやり方はしたくないのだが,プリント基板が外れないので回路を調べようにも調べようがないのである。無理に外したらもとに戻せなくなる心配がある。
ここに至って,冷静に考えると手元のジャンク箱の中にフラッシュフジカの残骸があったことを思い出した。すぐさまそれを取り出して,放電管を取り外し,ST-Fに移植した。
しかし,放電管は点灯しなかった。
放電管が2個とも不良とは考えにくい。そこで,頭を冷やしてこの放電管の点灯試験をすることにした。幸い手許に真空管試験用の電源装置があるのでそれを使った。
写真5をご覧いただきたい。電圧計は240 Vを示しているのがおわかりいただけるであろうか?(この電圧計は誤差が大きいが,)放電管を点灯させるためには240 V以上の電圧が必要なのである。2個ともほぼ同じ電圧であった。カメラの昇圧回路を働かせても電圧は220 V程度までしか上がらない。

写真5.放電管の点灯試験

つまり電圧が足りないのだ。わずか20V程度であるが,それでも点灯しないものはしない。放電管は壊れていなかった。昇圧回路の能力が低下していると考えられる。
 電子回路で経年変化の著しい部品は電解コンデンサである。しかも昇圧回路では重要な働きをする。そのコンデンサは底蓋を開けたところにあった。ここでも目の子であるが,取り敢えずこのコンデンサの静電容量が低下していると仮定して68μFを並列に接続してみた。写真6である。
 しかし,放電管はやはり点灯しなかった。電圧は220 V以上には上昇しなかったのである。

写真6.充電用コンデンサ(楕円の中)と追加コンデンサ

 これ以上進めるには木端微塵になることを覚悟してかからなければならない。もともと,フラッシュを使わない撮影では何も問題はないし,昇圧・充電の確認はできないもののフラッシュは発光するので実用上も問題ない。やや言い訳になろうが,取り敢えずこのまま使うことにしよう。

写真7.(左から)放電管表示灯,その内蔵ランプ,カメラに内蔵されていた放電管

 ――と,一旦あきらめたのであるが,やはり昇圧が完了したことを確認できないのは心もとない。
そこで近くの電子部品を売っている店で放電管表示灯を2個買って帰った。そのうちの1個を分解して中身を取り出して点灯開始電圧を測定したら100V程度であった。これでは正確に昇圧が完了したかどうかはわからないが,何もないよりはよかろう。写真7にその放電管表示灯とその内部に納められていた放電管ランプを示す。同時にこのカメラに内蔵されていた放電管も比較のため示している。
ランプが2倍ほど大きい。しかし,何とか収まりそうだ。写真8はカメラに取り付けて昇圧した状態を示している。ランプが点灯しているのがお分かり頂けるであろう。

写真8.移植した放電管

 このランプが点灯したからと言って必ずしも電圧が適正な値にまで達したことにはならないが,とにかく当面はこれで我慢することにした。
では,遮光材の劣化について対策を講じよう。
このカメラは裏蓋の蝶番のところとフィルム覗き窓の2箇所に遮光材の痕跡が残っていた。写真9でそのことがお分かり頂けるであろうか?

写真9.劣化した遮光材

 いずれもまず残骸を綺麗に取り去った。ただし,覗き窓の周囲はかなり強力な接着剤が使用されたとみえ,完全には取れなかった。ついで,いつものとおり蝶番のところには習字で使う下敷き(フェルト)を裁断して両面テープで貼りつけた。また,覗き窓のほうは厚さ5mmのスポンジを切り出して貼り付けた。こちらは最初から両面テープが貼られている。
仕上がりは写真10でご覧いただきたい。蝶番のほうはボケているが,覗き窓のほうはよくわかるであろう。灰色に写っているが,これは光の加減であって,実際は真っ黒である。問題3が解決した。

写真10.再生した遮光材

 つぎに,レンズキャップがゆるい問題。
このカメラには写真1でお分かりいただけるとおり,レンズキャップが付属している。何と,紛失しないようキャップと一体注型と思われるヒモがついている。これが如何にも安っぽい。しかも,このヒモが案外固く,キャップが緩いとこれを外してしまうほどの力が働くのである。
そこで,キャップ内部の突起部分を綺麗に除去したうえ,人造皮革を幅5mmに裁断してキャップ内部に張り付けた。ちょっときついが少々の力では抜けないほどきっちりと取り付けることができるようになった。解決!
最後にミラーが上がったまま戻らない件。
その後何度シャッターを切ってもミラーは確実に戻った。したがって,原因がわからないし,対策の立てようもない。
しかし,絞りリングを回しながらシャッターを切っていたら再現した。絞りを開放にしたときだけミラーが上がったままになることが判明したのである。
ここでも心もとない話になるが,この不具合もいろいろいじっているうちに消えてしまった。どうも長年使用せずに放置されていたため,埃や油成分が固着して動きが鈍くなっていたと考えられる。それでいじっているうちに埃などの不純物が取り除かれて動きが滑らかになったのであろう。

 修理のところで最後に一言。

 軍艦部カバーと底板を外してカメラ本体をいじり回していたら小さな部品が1個転がり出てきた。もとの場所に戻そうとしたのだが,その場所がどうしてもわからなかった。動作には特に支障がないようなのでそのままにしてある。

 

6.試写結果

 さっそくコダックのカラーネガフィルムを装填した。このコダックのフィルム,今ではASA200のものしか手に入らない。このカメラはASA100と400しか使えないが,まあ何とかなるだろうということで気楽に考えた。内蔵露出計の指示より一絞り絞ればいいだろうということのほか,ネガカラーフィルムのラチチュードが広いことに期待したのである。
しかし,撮り始めて間もなく異変に気付いた。
まず,フィルムカウンターが動かないのだ。たしかに動いていたのだが,現実動かなくなっているのでどうしようもない。部品が1個余ったためだろうか?
つぎにフラッシュが発光したりしなかったり。フィルムカウンターはともかく,これには困った。昇圧完了ランプは点灯するが,フラッシュが発光するかしないかはまったく予想できないのである。
しかたがないので数枚撮ったところで打ち止めにした。念のため,フィルムは現像した。露出過多気味のものもあったが,そこそこに撮れていた。

 

7.再修理

 まず,フィルムカウンターの件。
トップカバーを外してカウンター部分を眺めたところ,ばねが2本外れていた。本来どのようにかかっていたか?図面や写真がないので,これは推理するしかない。試行錯誤の末カウンターが機能するようになった。余った部品は使う場面がなかった。

 つぎにフラッシュの件。
詳細な記録を取っていないので正確なことは言えないが,結局昇圧完了表示灯を元の状態に戻したら良くなった。うまく説明できないが,この放電管は昇圧回路の一部を構成していると考えられる。それは当たり前じゃないかと言われるかもしれないが,小生の言いたいのは単なる表示回路ではなく,昇圧回路そのものの中に組み込まれた部品だということである。したがって,この放電管の特性が変わると昇圧動作も変わるのである。最初の改造で,表示灯から取り出した放電管を移植したが,この結果昇圧される電圧が低下し,フラッシュが発光するぎりぎりの状態であった考えられるのである。
取っておいた放電管をもとに戻すと写真11のとおり鮮やかに点灯した。フラッシュも安定して発光するようになった。

写真11.蘇った昇圧完了表示灯

では,最初の症状は何だったのだろうか?
一つ考えられるのは電解コンデンサが長時間放置されていたため容量抜けしていて,それが今回の修理や試写などの一連の稼働に伴って再加勢されたのではないかということである。これは電解コンデンサの使用方法として一般に知られていることである。ただし,本来再加勢は低い電圧から徐々に上昇させてやらなければならない。

 

8.再試写

再度試写に挑戦した。
今度は少し値段が高いがASA100のカラーネガフィルムを買って装填した。前回フィルムカウンターが動かなかったので,今回は絶えずカウンターの表示を確認した。今度は大丈夫。フラッシュも発光した。
ところが,まったく恥ずかしいことだが,フィルム巻き上げに失敗した。すべて未露光であった。普段はフィルムを巻き上げるとき,フィルム巻き戻し軸が回転することを確認しているのだが,今回はフィルムカウンターが気になってそちらばかりを注視していたため,おろそかになったのである。それにしても一度も確認していなかったことが悔しく,情けなく,恥ずかしい。
言い訳になるが,改めて見てみると,このカメラはフィルムの装填が非常に難しいのである。どのように難しいかは言葉で説明しにくいが,再々試写にあたってフィルムを装填したときかなり手こずったのである。

写真12.遠景

9.再々試写
と言うことで,再々試写に臨んだ。
今度は値段の安いASA200のカラーネガフィルムを使った。装填には少してこずったが,今度こそ完璧である。
まず,遠景。写真12をご覧いただきたい。まあまあの出来ではないか?しかし,良く見ると左右のビルが傾いている。また,周辺の光量が不足しているように感じられる。
今度は中距離景。写真13をご覧いただきたい。これも遠景と同じくそこそこに撮れているということだろうか?不思議なのは,この写真では周辺の歪が感じられないということである。距離が違うと周辺の歪も違ってくるのだろうか?周辺の光量はやや落ちているようである。

写真13.中距離景

最後にフラッシュの能力を確認しよう。写真14は小生の家の玄関に飾られている象の人形である。象の人形とは変だろうか?象だから象形と言うのだろうか?それはともかく,フラッシュ撮影も上出来である。

写真14.フラッシュ撮影の例

 

10.コンバージョンレンズ
一連の作業を記事にし終えたので,ここで「おわりに」を書こうとしていたら思いがけずコンバージョンレンズが手に入った。
近郊をドライブしていたらリサイクルショップが目に付いた。さっそく中に入ってカメラが置かれている場所を検めると,何と幻の(?)コンバージョンレンズがあったのである。インターネットでその存在は知っていたが実物を見るのは初めてであった。

写真15.コンバージョンレンズ

 改めて周囲を眺めるとFujica ST-Fも鎮座していた。そのST-Fにこのコンバージョンレンズを装着し,さらにもう1台のカメラを加えて500円であった。いい買い物をした。

写真16.キャップをつけたコンバージョンレンズ

 コンバージョンレンズの側面には「1:5.6 1.5X for FUJICA ST-F」と書かれている。すると,このコンバージョンレンズを装着すれば焦点距離が40×1.5=60 mmになるのだろうか?標準よりちょっと長めのレンズということになる。
ただし,このコンバージョンレンズを装着すると明るさが5.6に減ずる。つまり,2.8から2段階暗くなるのである。
ところで,写真15をもう一度よくご覧いただきたい。レンズの周囲にドーナツ状の透明体があるのがお分かり頂けるであろう。小生も最初これが何かわからなかったが,結局受光素子に光を当てるための苦肉の策(?)であることがわかった。受光素子は本体側レンズの上部に配置されているのである。
さて,コンバージョンレンズを装着したところを写真16と17に示す。前者はキャップを装着したところであり,後者はキャップを外したところである。
キャップを装着すると,本体側レンズのキャップが残されて何とも間の抜けた構図になる。リサイクルショップで一緒に買って帰ったST-Fはレンズキャップが外されていたが,その理由がわかった。

写真17.キャップを外したコンバージョンレンズ

 

11.続再々試写
では,コンバージョンレンズを使うとどのような写真が撮れるのだろうか?試写してみた。
写真18と19はカバの親子像である。前者はコンバージョンレンズをつけずに撮ったものであり,後者はコンバージョンレンズをつけて撮ったものである。もちろん,いずれも同じ位置から撮影した。距離はおよそ1.5 mほどであったろう。

写真18.カバの親子(コンバージョンレンズなし)


写真19.カバの親子(コンバージョンレンズ付き)

 2枚の写真を比較すると1.5Xの効果がよくわかる。この2枚の写真ではあまり明確ではないが,コンバージョンレンズを使うと画質がやや劣る。鮮明さに欠けるうえ,発色も悪いのである。
ということで,今後このコンバージョンレンズの出番はないであろう。

 

12.おわりに
このカメラにはずいぶん遊ばせてもらった。記事の量からもそれがうかがえるであろう。
使用感としては,ファインダーが大きく明るくて見やすいということである。また,露出計(ランプ表示)は正確であった。

■2013年8月27日   木下亀吉

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