わたしのカメラ三昧 第40回 「フジカドライブ」


1.はじめに

 ぜんまいによるフィルムの自動巻き上げ方式はリコーの製品に限られると思っていたら,富士写真フイルムからも出されていた。インターネットオークションを閲覧していて偶然発見したのである。早速落札。格安の438円であった。
 まずはその外観を写真1でご覧いただきたい。カメラの底にあるぜんまい巻き上げの大きなノブが目立つ。その大きさはカメラ全体を支えるほどである。
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写真1.フジカドライブ斜め前から

 レンズはf2.8,28mm。あまりに扁平なので開梱したときレンズが付いていないのではないかと一瞬疑ったほどである。
 フジカハーフをご存知の方はこのカメラがそれに酷似していると思われるであろう。フジカハーフのフィルム巻き上げレバーをなくし,代わりにぜんまい巻き上げノブを追加したらフジカドライブになる。
 ところで,これを機会にスプリングモータを使ったカメラを調べてみた。すると,特別な存在でもないことがわかった。インターネットで調べたところによるメーカ・機種などを羅列すると以下のとおり。ただし,間違いがあるかも知れないことをあらかじめお断りしておく。また,すべてを網羅したものでもない。

ロボット社・ロボットシリーズ(24×24)
ベル&ハネウェル・フォトン(24×36)
リコー・オートハーフシリーズ(24×17)
リコー・オートショット,ハイカラー,スーパーショット,AD1(24×36)
キヤノン・ダイアル(24×17)
コニカ・オートSE(24×36)
コダック・モータマチック(24×36)
ロモ・135M(24×36)
そして,このフジカ・ドライブ(24×17)

 この調査で一つ知見を得た。それは,ぜんまいによる巻き上げであるから,蓄えられるエネルギーには限りがある。できるだけ多くのコマ数を巻き上げるため,画面サイズをロボットでは24×24 mmに,その他の機種の多くがハーフサイズ(24×17 mm)を採用したということである。ただし,もちろんフルサイズ(24×36 mm)のものもあるので,ちょうどハーフサイズカメラの流行期と重なったことも原因ではなかろうか?
 さらに,面白いことを知った。それは,スプリングモータ駆動のカメラといえども,後期のものになると電池を使用するということである。内蔵露出計や電子シャッターの電源として必要だったのであろう。電池を使うのなら電気モータで巻き上げればいいではないかと考えたくなる。しかし,当時はまだいろんな意味で,電気モータで巻き上げるだけの技術がなかったに違いない。

 

2.仕様と特徴
 インターネットに掲載された「富士フイルムのあゆみ」を参照しながら現物を見て自分でまとめた。以下のとおり。例によって間違いがあるかも知れないことをあらかじめご承知おき願いたい。
(1)名称:Fujica Drive
(2)型式:ハーフサイズレンズシャッターカメラ
(3)感光材料:135判フィルム(自動露出時適合感度: ASA 10~200)
(4)フィルム送り:スプリングモータによる自動巻き上げ,クランク巻き戻し
(5)フィルム計数:自動リセット順算式
(6)画面寸法:23.5×17 mm(開口部実測)
(7)レンズ:Fujinon 1:2.8 f=2.8cm
(8)ファインダー:ブライトフレーム
(9)距離調節:回転ヘリコイド,手動(最短撮影距離0.6 m)
(10)露出調節:自動:プログラムオート,セレン光電池による
        手動:絞り設定範囲 2.8~22
(11)シャッター:Seikosha-L 手動: B・30・60・125・300
(12)シンクロ接点:あり
(13)電池:不要
(14)概略質量:510 g(実測)
(15)概略寸法:113 W×92 H×45 D 〔mm〕(突起物含まず)
(16)発売(製造)年:1964(昭和39)年6月
(17)発売価格:14,900円(?)
(18)製造・販売元:富士写真フイルム

 仕様は以上のとおりであるが,このカメラの特徴は何と言ってもスプリングモータによるフィルムの自動巻き上げであろう。逆に言うとこれ以外に特徴と言えるほどのものは備えていないし,スプリングモータによるフィルムの巻き上げもこのカメラ独特のものでもない。しいて言えばセルフタイマーであろうか?写真1を再度ご覧いただきたい。フィルム巻き戻し軸の周りに円環が認められよう。これがセルフタイマーの設定ダイヤルである。かなり固いがこれを時計方向に回すことによってタイマーのぜんまいを巻くのである。
 ファインダーを覗くと,その左端に絞りとシャッター速度とおぼしき数列が示されている。これが自動露出時の絞りとシャッター速度の組み合わせであろう。グラフにしてみた。図1である。

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図1.自動露出時のシャッター速度と絞りとの関係

 ASA100のフィルムでは,晴れた日の屋外では絞り11でシャッター速度125分の1秒(LV=14)である。図1を見ると丁度そのようになっている。
ところで,ファインダー内の数列は,絞りについてはF2.8から22まで通常の刻みである。一方,シャッター速度も通常の刻みの30分の1秒から250分の1秒までであるが,そのシャッター速度の数値の間に●が2個ずつ置かれている。これは何か?(絞りの数列に比べて数が少ないので)単なる穴埋めだろうか?
 しかし,何となく気になるので図1のグラフにLV値を記入してみた。すると,シャッター速度数列欄の●とLV値が対応するではないか?再度図1をご覧いただきたい。

 

3.初期状態と問題点
 まず気になるのはシャッターである。開梱してさっそくシャッターボタンを押してみた。
 何となく反応が悪い。ほとんどの場合シャッター羽根が開閉しない。また,シャッター羽根が開閉してもフィルムの巻き上げが行われないことがある。
 シャッターのつぎはレンズ。レンズは綺麗なほうであろう。このままで充分使えるとみた。
 つぎに露出計。このカメラはセレンを使った自動露出機能があり,ファインダーの中に指針が示される。しかし,明るい方を向いても指針は振れない。(←実はこれは正常。シャッターボタンを押さなければ指針は振れない。)シャッターボタンを押すとまれに鈍く振れることがある。鈍くというより,動きが緩慢なのである。およそ露出計の指針の動きではない。
 ファインダーは光の具合によってはやや曇りが感じられるが,概して綺麗である。画面左側に絞りとシャッター速度の数列が鮮明に見える。このままでよかろう。
 裏蓋を開けて内部を観察する。内部は綺麗で特に問題になるようなことは見当たらなかった。ただ,蓋の周囲に貼られていた遮光材が劣化している。多くの場合,劣化すると固くボロボロになるのだが,このカメラの場合コールタールのようにべとべとしている。
 いろいろいじっていると,ぜんまい巻き上げノブがぽろりと落ちた。見ると固定ねじが2本ともなくなっていた。

以上の鑑定から,このカメラの問題点をつぎのように決定した。

(1)シャッター動作不安定(フィルム巻き上げ,シャッターチャージを含む)
(2)露出計動作不良
(3)遮光材の劣化(べとべと)
(4)スプリングモータの巻き上げノブの固定ねじ紛失

 

4.手入れ・修理
 まず,シャッターを解決しなければならない。シャッターが切れなければ使い物にならない。
 シャッターボタンを何度も押しながら慎重に反応を観測する。シャッターが切れることもある。しかし,1度切れたらつぎはなかなか切れない。フィルムの巻き上げも行われたり,行われなかったりする。
 シャッター羽根の粘りかも知れないと思うに至った。
  そこで,裏蓋を開け,フィルム室からレンズをはずした。しかし,そこからシャッター羽根を洗浄することはできなかった。(ついでにレンズを綺麗にしておいた。)
 仕方がないので前面から接近することにした。前面のレンズをはずしたが,ここからもシャッター羽根には手が届かなかった。(ここでも,ついでにレンズを綺麗にしておいた。)
 シャッター羽根の洗浄は一旦保留し,カメラ前面の板をはずした。写真2である。
 中の動きを眺めながらシャッターボタンを何度も押した。指がだるくなったのでシャッターレリーズケーブルを使うことにした。すると,シャッターは確実に切れるではないか。ということは,軍艦部に出ているシャッターボタンを一杯に押しても内部のシャッターロッド(と言うのだろうか?)は充分に押されていないことになる。シャッターボタンとシャッターロッドの連結が悪いのであろう。写真3の赤○で囲んだ部分にシャッターボタンとシャッターロッドとの間に隙間がある。その隙間が広すぎるのである。
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写真2.前板をはずす

 そのロッドの先端(シャッターボタンに近い方)には長さ(間隙)調節機構があるように見える。回転させればいいのだが,その仕方がわからない。少し考えた結果,シャッターボタンの上から細い-ドライバーを突っ込んで回せばできることが分かった。
 シャッター羽根は開閉するようになった。
しかし,どうしても数回に1回の割合でフィルムの巻き上げがスムーズに行われない。
試みにレリーズを使ってみた。写真3である。すると,不思議なことに毎回完全に巻き上げが行われた。つまり,内部の動きには問題ない訳で,原因はシャッターボタンそのものにあると考えざるを得ない。単純に考えると,ボタンの動きが固いとか,引っかかりがあるとかであろう。
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写真3.ケーブルレリーズでシャッターを切る

 そこで,少量注油した。その結果,ほぼ完璧に改善された。何のことはない。最初からシャッターボタンに注油すればよかったのである。レリーズケーブルを用いたら確実なことはすでに明らかになっていたのである。また,シャッターボタンを押して,フィルムの巻き上げが行われなかったとき,ボタンにショックを与えたら巻き上げが行われていたのである。
 結局,シャッターまわりの不具合の主な原因は以下のようだったと今になって思われる。

(ア)シャッター羽根が開かないのはシャッターボタンとシャッターロッドとの間隙大(イ)フィルムの巻き上げとシャッターチャージが行われないのはシャッターボタンの摩擦大

何と言っても,最初の鑑定が重要である。これをおろそかにしたため余計な作業と時間を要してしまった。問題(1)と(2)が解決した。

つぎに露出計。
 実は上記の修理の過程で内部の機構の動きの悪いところに注油していた。このことにより,この露出計の指針の動きも同時に解決していたのである。問題(1)から(3)が一気に解決していたのである。

つぎは遮光材。
 このカメラの遮光材は何だろう?劣化しているのは仕方がないが,べとべとなのである。丁度コールタールのようになっている。ベンジンを使っても容易に取れない。爪楊枝とピンセットを使って丁寧に一粒ひとつぶ摘まんでいった。

おおよそ綺麗になったところでフェルトを裁断して溝に埋め込んだ。

これまで習字用の下敷きを使ってきたが,今回はホームセンターで見つけた「プロテクトシート」なるものを使ってみた。下敷きより繊維が出にくい気がする。写真4をご覧いただきたい。裏面に両面テープが貼りつけられているので使いやすい。しかし,厚さ1 mmというのがやや物足りない。もちろん,薄ければ二重に貼り付ければいい。
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写真4.新たに見つけた遮光材の代用品

 最後はぜんまい巻き上げノブの固定。適合するねじをジャンク品の中から探したが見つからなかった。このとき,過日ホームセンターでM1.7の皿ねじを買っておいたことを思い出した。これを使ったところ,ぴったり納まった。ノブはしっかりと固定された。
以上で修理・手入れは完了した。

 

5.使い方
 このカメラ,距離は目測で設定しなければならないが,露出は自動である。もちろん,手動露出も可能である。自動の場合は絞りリングをAに合わせればよい。
 撮影のためにはまずフィルムを装填しなければならない。これは通常の作業と大差ない。ただし,終末期のカメラとは違って,フィルムの先端を巻き取り軸の隙間に差し込んでやらなければならない。
 フィルムを装填したら忘れないように感度を設定しよう。この機構はカメラの背面右上にある。写真5をご覧いただきたい。写真ではDIN21/ASA100に合わせているのだがお分かり頂けるであろうか?
 この設定機構には撮影枚数も設定できるようになっている。ただし,これは単なるメモである。ご丁寧にカラーとモノクロに分けて数字が並んでいる。カラーは赤字で24・40・72の3つ。フルサイズの場合の12枚・20枚・36枚の倍数である。

余談になるが,ここでフィルムの撮影枚数について一言。

 135判フィルム(普通35ミリフィルムと呼ばれる。)では12枚,20枚,36枚の3種類があった。(かなり経ってから20枚が24枚になり,27枚というのも現れた。)わたしはこの数列を奇異に感じていた。12枚,36枚ならその中間を埋めるものは24枚でなければならないと思う。つまり,12n(n=1,2,3)という一般式にのるからである。それが,20なのである。
 後にわかったことだが,135フィルムの開発当初撮影枚数を40枚に設定していたそうだ。しかし,どうしてもパトローネに収まらず,1割削減して36枚になったということである。
 これから先はわたしの勝手な推理であるが,40枚撮りの半分として20枚撮りが初めから計画されていたのではなかろうか?そして40枚は36枚に変更されたが,20枚のほうはそのまま製品化された。そして,20枚よりさらに少ない枚数の要求に応えるため36枚の3分の1の12枚撮りが追加された。多分10枚撮りという案もあったと思われるが,そこはヨーロッパの文化,12進法が顔を出したと思うのである。あくまでわたしの勝手気ままな推理である。
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写真5.背面

 さて,シャッターボタンの押し方について一言申し上げる。
シャッターボタンは,これを押すときシャッター羽根が開閉し,これを離すときフィルム巻き上げとシャッターチャージが行われることを頭に入れておいてほしい。もちろん,意識しなくても撮影に支障はないが,知っているとリズミカルに操作できるし巻き上げとシャッターチャージの動作を確認できる。
 セルフタイマーで撮るときは,まず背面左上のスイッチS←→LをL(Lock)側に設定してタイマーのぜんまいを巻き上げる。そして,撮影するときはスイッチをS(Start)側に動かしてやればいい。
 なお,撮影に際してはカメラの底のぜんまい巻き上げノブを回してぜんまいを巻き上げておかなければならないことは言うまでもない。

 

6.試写結果
 富士フイルムの業務用カラーネガ36枚撮りを装填して試写に臨んだ。感度はASA 100である。
 このカメラはマニュアル撮影も可能であるが,セレンによる自動露出機能を確かめる目的もあってすべて自動とした。
 最近,近くの小学校の校庭に二宮金次郎の像が立っているのを発見した。まずそれをパチリ。写真6である。朝だったので光が横から射している。しかも,このように背景が明るいと露出は背景に引っ張られて金次郎さんには気の毒な結果になった。
 ところで,わたしが子供の頃大概の小学校の校庭に二宮金次郎の像が立っていた。薪を背負って歩きながら本を読んでいる姿である。わたしの母校にもあった。それが最近ほとんど見られなくなった。古臭いと言うことで撤去されたのだろうか?像はどこに行ったのだろうか?
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写真6.二宮金次郎像

 昼ごろ遠景を撮ってみた。写真7をご覧いただきたい。
中央遥か遠方に二又の山が見える。実はその右側にもとがった山があったのであるが,石灰石採掘のため削られてしまった。
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写真7.遠景

 この山は古代史的にも有名であるが,五木博之氏の「青春の門」で一躍有名になった(と思っている)。その青春の門の冒頭にこの山が出てきたと記憶している。
残念ながらこの数日間は霞んだ日が多く,遠景写真のできは良くない。もっとスカーッと透明感の優れた日に撮りたい。
 帰宅して付近を散歩していると水仙の花が目に付いた。やや盛りを過ぎた感もあるが,とりあえず近景として1枚撮った。写真8である。ピントは一番前の花付近に合わせた。近距離だけあって,背景は適度にボケている。
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写真8.水仙の花

 当地では人に物事を頼んだり勧めたりするとき「~(し)ちゃり」という。「(し)てやりなさい」→「(し)てやり」→「(し)ちゃり」に変化したのだろう。
 交差点の角にこの「ちゃり」が書かれた標識が貼られていた。写真9をご覧いただきたい。自転車のことを俗にチャリンコとかチャリとか言うそうだが,これをかけた表現であろう。
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写真9.道路標識
撮影距離は最短の0.8 mほどであった。

 

7.おわりに
 作例を眺めていると,「やはりハーフサイズだな」を思わずにいられない。ライカ判の半分の面積であるから,それだけ分解能の低下は避けられない。
 ハーフサイズカメラは1960年代に流行し,その後急速に消えていった。当時はフィルム代が高く,通常の倍の枚数撮れるというのは確かに大きな魅力であったに違いない。12枚撮りで24枚,20枚撮りで40枚。36枚撮りなら何と72枚も撮れるのである。しかし,現像・焼き付け代は従来どおり必要で,たくさん撮ればそれだけ費用もかさむことに気付いた。さらに,面積が半分になるだけ引き伸ばしに耐えず,機体の小さいのが特徴だったのにほとんど同じ大きさのフルサイズ機が発売されるとなると,ハーフサイズ機の魅力は一気に低下していったと言われている。
 さて,シャッターボタンが深過ぎてシャッターが切れなかったことはすでに述べた。それを切れるように調節したのであるが,使っているうちにまた深くなった。シャッターロッドのねじが勝手に回ったのか?定かではないが,もともと誤ってシャッターボタンが押されるのを避けるために深めにしているのではなかろうか?
 気になっていた自動露出機構は健全であった。
 今回この記事を書きながら,富士フイルムは富士フィルムではなく,富士フイルムであることを初めて知った。これはキャノンではなく,キヤノンであることと同じである。

■2014年3月24日   木下亀吉

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