わたしのカメラ三昧 第34回 「サモカ 35 III」


1.はじめに
 気になっているカメラの一つサモカ。今回その35IIIという型のジャンク品を手に入れた。シャッター不動という。500円であった。しかし,送料が1,000円を超え,何となく釈然としないものがある。ともかく,その外観を写真1でご覧いただきたい。
Samoca35Ⅲ
写真1.サモカ35IIIの外観

 シャッター不動だけでなく,金属部分は方々でメッキがはがれ,さびが出ている。動くようにうまく修復できるのか不安であった。
 向かって左上がフィルム巻き上げノブ,右が巻き戻しノブである。シャッターユニットの同じく向かって左上の突起がシャッターレリーズボタン,右がシャッターチャージボタン,右下はシャッター速度設定ダイヤルである。ピントと絞りは鏡胴の設定リングで行う。

 

2.仕様と特徴
 まず,このカメラの仕様を確認しておこう。例によって,間違っているかもしれないことをあらかじめお断りしておく。
(1)名称 : Samoca 35 III
(2)型式 : レンズシャッター式35ミリカメラ
(3)感光材料 : 135判フィルム
(4)フィルム送り :ノブ巻き上げ,ノブ巻き戻し
(5)フィルム計数 :手動リセット順算式
(6)画面寸法 :24×36 mm
(7)レンズ :Ezumar Anastigmat 1:3.5  f=50 mm
(8)ファインダー :逆ガリレオ式透視ファインダー
(9)距離調節 :目測手動設定(最短撮影距離3.5 f)
(10)露出調節 :目測手動設定
(11)シャッター :セット式2枚羽根,B, 100, 50, 25
(12)シンクロ接点 :あり
(13)電池 :不要
(14)質量 : 430 g(実測)
(15)概略寸法 :105 W×75 H×68 D〔mm〕(実測,突起物を含まない)
(16)発売(製造)年 :1954(昭和29)年
(17)発売価格 :6,800円(ケース付き)
(18)製造・販売元  三栄産業(株)・(株)服部時計店
 以上のとおりであるが,シャッターの呼び名がわからない。ギロチンではなかろう。当時のカタログによるとセット式と書かれていたのでその名を使った。
 このカメラが35IIIということは,I, IIがあったはずである。その系譜を調べてみるとつぎの表のようになる。

表1.サモカ35の系譜

発売年

特徴 備考
1952 サモカ35    7,500円
1953 サモカ35II アクセサリシューが付いた。

7,500円

1954 サモカ35III

直進ヘリコイド、被写界深度目盛り追加。

 6,800円

 ご覧のとおり,あまり大きな変化ではない。最後のこの35IIIが一番安い価格に設定されているのが意味深長である。

 

3.初期状態の確認と問題点
(1)シャッターが切れない
 シャッター羽根を押しあけると何やらごみのようなものがレンズとの間に挟まっているのがわかった。
(2)フィルムの巻き上げができない
(3)レンズが汚れている
(4)ファインファーが汚れている

 

4.手入れ
 まず,シャッター不調の件。
正面の4本のねじを抜いたらシャッター部分が鏡胴ごとはずれた。下の写真をご覧いただきたい。本体側にはフィルムを送るためのスプロケットがギサギサに見えている。半円板状態のもの上下2つのうち,下側は圧板に映っているのである。圧板はニッケルかクロムでピカピカにめっきされている。
Samoca35
写真2.シャッターユニット

 さて,シャッターの動きを見ながら状況を仔細に観察するとシャッター羽根とレンズとの間のごみはフィルムの破片であることが分かった。直ちにつまみ出したが,シャッターの機能は回復しなかった。
 さらによく観察していると,ばねが1本はずれているのがわかった。引っ張りコイルばねであるが,片方が固定されていないのである。さっそくかけようとしたが,その仕掛けがない。それが壊れたとしてもその形跡すら見つからない。
 いろいろ考えた末,これはシャッターユニットを本体に止めているねじを兼用しているのだろうということになった。つまり,正面向かって右上のねじはばねの固定を兼ねているのであり,むやみに外してはいけないのであった。
 しかし,やはりシャッターは回復しなかった。正直に言うと,良くなったのかどうか判断できなかったのである。その理由は結局のところ動作原理がよく理解できていなかったからである。
 さらに観察を続けていくと,他のばねが外れているのがわかった。それは写真3の○で囲んだ部分であり,軍艦部に属するところである。
samoca35_3
写真3.軍艦部の内部

 このばねも引っかけるところがない。また,どう見てもばねが折れた形跡がない。結局ばねの中心部をペンチで強引に変形させることによって引っかけることができた。(この部分,言葉では説明しにくい。理解しがたいであろうがご容赦を。)
 以上のほか若干の矯正などを施した結果シャッターが動くようになった。
しかし,最後にトップカバーを装着するのが大変であった。これも筆舌に尽くしがたい。巻き戻し軸にフィルムカウンターが配置されているのであるが,このところの機構が邪魔してカバーが素直にはまらないのである。糸と細い針金を使ってレバーを引っ張っておいてそっとカバーをかぶせた。
 レンズとファインダーの汚れは,シャッターの修理のときにばらしたついでにアルコールで洗浄して綺麗にした。やはり,ファインダーが綺麗なのは何とも言えず気持ちがいい。
以上で手入れは無事終えた。

 

5.使い方
 まず,フィルムの装填。
このカメラの巻き上げ軸には着脱可能なスプールが付属していた。写真4をご覧いただきたい。巻き戻し軸にフィルムのパトローネをセットし,フィルムを引き出してその先端を巻き上げスプールに挟み込む。ここまでは普通のカメラと同じである。違うのは,蝶番のついた圧板を下げてフィルムを挟むことである。(写真4はこの圧板を上に上げているところである。)もちろん,フィルムの両側に開いている穴にスプロケットの突起合わせなければならない。 
 裏蓋を閉じてカチッと止まるまでフィルムを巻き上げる。
つぎに正面右にある突起を押す。これによってシャッターがチャージされ,フィルムカウンターが1だけ加算される。またフィルム巻き止めが解除される。
 以上の操作を2,3度繰り返してから送りを終える。
本機は完全マニュアル機であるから,撮影するにはシャッター速度,絞り,距離を合わせなければならない。シャッター速度は向かって右下にあるダイヤルで合わせる。1/25, 1/50, 1/100秒の中から選ぶ。普通は1/100秒とするが,状況によっては1/50秒,あるいは1/25秒とする。1/25秒のときは手振れに注意しなければならない。三脚で固定するのが良い。
 絞りは鏡胴に備えられている絞りリングで設定する。わたしは晴れの日の屋外では1/100秒f11とする。晴れの日の日陰や曇りの日はf8としている。(ただし,感度100の場合。)もちろん,正確に合わせるには露出計を使う。
 距離はピントリングで合わせる。目測であるうえ,フィートであることに注意しなければならない。
Samoca35
写真4.フィルム室

 撮影条件が決まったら,フィルムを巻き上げ,シャッターチャージボタンを押し,シャッターボタンを押す。これで一コマの撮影完了である。
 なお,フィルムを一コマ分巻き上げるとカチッと音がしてロックされるのであるが,それに気づかずにさらに回すとフィルムの穴を引き破って巻き上げられてしまう。実際わたしもやってしまった。手にしたときシャッター羽根とレンズの間にフィルムの破片が入っていたが,以前の持ち主が同様のことをしたのかも知れない。
 フィルムを巻き戻すときは,シャッターチャージボタンを押したまま巻き戻しノブを回せばよい。

 

6.試写結果
 近郊のリサイクルショップに富士フィルムの業務記録用フィルムが1本150円で売られていた。さっそく10本程度仕入れておいたので今回もこのフィルムを使った。
 あいにくの天気で,写真撮影には不向きであったが止むを得ない。何しろ早く結果を知りたいのである。どうもわたしはこのせっかちが故に失敗や損失が多いように思う。しかし,この歳になったらもう如何ともしがたい。
 もっとも,初日は晴天に恵まれた。写真5をご覧いただきたい。近くの町にある,何と言うか,最近はやりの農協が経営主体の農産物売り場に隣接した広場に行って撮ったものである。たしかT-33Aジェット戦闘機で,練習用ではなかったろうか?実はこの機体,最近まで別の町に長年展示されていたもののようである。貸与期限が過ぎたので化粧直しして第三(?)の人生をこの地で送ることになったらしい。
 前置きが長くなった。これは最初に撮ったものであるが,なかなか良く撮れているではないか?被写体までの距離はおよそ30フィートだった。全体的にかなり白っぽく見えるが,これは機体も地面も白いためであろう。背景の木立や建物は正常に写っている。
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写真5.中距離から,ジェット戦闘機

 つぎは最短距離からの撮影。写真6である。被写体のマムシ草の実(?)までの距離はおよそ3.5フィートであった。目測だがなかなかよく撮れているとは思わないだろうか?
 この写真,中央が明るく写っているようだが,フラッシュを使ったわけではない。周辺の光量落ちであろう。周辺光量落ちというのは本来好ましいものではないが,このような写真では中央を引き立たせるのに効果がある。新しい発見だ。もちろん,背景もほどよくボケている。
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写真6.最短距離から,マムシ草の実(?)

 つぎもわりに近い距離から撮ったものである。写真7をご覧いただきたい。古びた道標がなかなか味わいよく撮れたと思っている。距離は10フィート程度だったであろう。背景のボケもまあまあである。
 断っておくが,わたしは撮影に関しては全くの素人というか下手の下に糞が付くほどの腕しかない。ここで写真を吟味しているのは芸術性ではなく,あくまで「カメラ修理の結果」を判断するためである。
 余談。この道標の立っている道は「○○自然歩道」になっているのであるが,通る人はほとんどいない。その分,この時期は一人静かに思う存分紅葉を楽しみながら歩けるというものである。
 ついでにもう一つ余談。重要な写真とか,記録を残すなどのために,写るのが確実なデジタルカメラも携行した。そして初めてこの道標を撮ったのであるが,いや撮ろうとしたのであるが,なぜか警告音がしてシャッターが切れなかった。モニター画面を見ると「記録メディアがない」とのこと。この失敗はこれが2度目であった。
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写真7.近距離から,道標

 つぎも近距離の画像。紅葉した楓である。写真8をご覧いただきたい。発色にも問題ないことを示している。残念ながら天気が良くなかった(時折小雨が降るような状態)ので背景が灰色で面白くない。10フィートほどであったと思う。
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写真8.紅葉

 天気が良くなかったので遠景は撮らなかった。強いて言えばつぎの写真が遠景だろうか?山上の池のほとりの紅葉を撮ったものである。小雨が降っていたのでレンズに水滴がかからないよう気を付けた。
 さすがにこのサイズにまで小さくしてしまうと風景写真も鑑賞するのが厳しい。それでも紅葉や水面の輝きなどが想像できるであろう。
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写真9.遠景

 

7.おわりに
 試写結果が思いのほかいいのに驚いた。意外といえば意外であった。正直,これほどいい写真が撮れるとは思ってもいなかったのである。初日を除いて天気に恵まれなかったので,シャッター速度も100分の1秒から25分の1秒まで切り替えたし,絞りも11から開放(3.5)まで変化させた。長い眠りから覚めたカメラが発揮した実力だろう。外観をもう少し綺麗にして再度持ち歩いてみたいと思っている。

参考文献
(1)アサヒカメラ編集部:「国産カメラの歴史」,朝日新聞社,1994

 

■2013年11月25日   木下亀吉

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