わたしのカメラ三昧 第27回 横長画面のハーフサイズカメラ「Fuji Twing TW-3」


1.はじめに
 小生は古い型のカメラが好きなのだが,時々新型のカメラが気になることがある。新型とはいってもフィルム式であり,ほとんどが生産を終了している。今回の富士写真フィルム製TW-3もこのようなカメラである。35ミリハーフサイズであるが,横長画面で斬新な外観が気に入った。写真1である。


写真1.カメラ前面

背面は写真2のようになっている。ファインダーのほかは状態を示す発光ダイオードが3個付いているだけである。非常にすっきりしている。(他のカメラも背面はこんなものか?)

 
写真2.カメラ背面

このカメラにはケースが付属していた。写真3のとおり,ビニル製の軽装である。外観はまあまあであるが,肝心のカメラの出し入れは容易でない。つまり,「速写」ケースとは言えない。


写真3.カメラケース

2.仕様など
 このカメラの特徴を簡潔に言うと,「広角と望遠を切り替え式にした横長画面のハーフサイズカメラ」であろうか?もちろん,このほかにも特徴がある。仕様のようなものをまとめると以下のとおりである。例によって,間違いがあるかもしれないことをあらかじめご承知おき願いたい。
(1)名称 : Twing TW-3
(2)型式 : 35mmハーフサイズレンズシャッターカメラ
(3)適合フィルム : 135判(DXコード付き)
(4)フィルム送り:プリワインド式電動自動巻き上げ・巻き戻し
(5)フィルム計数 : 自動プリセット減算式
(6)画面寸法 : 17×24 mm
(7)レンズ : 広角FUJINON 1:8  f=23mm; 望遠FUJINON 1:8  f=69mm
(8)ファインダー : 透視ファインダー
(9)距離調節 : 手動
           広角(ゾーンフォーカス2段)0.5~1m/1~∞m
           望遠(ゾーンフォーカス3段)4~6m/6~12m/12~∞m
(10)露出調節 : 自動
(11)シャッター : 自動
(12)シンクロ接点 : フラッシュ搭載,広角時自動発光
(13)電池 : 専用リチウム電池6V
(14)質量 : 315g(電池を含む実測値)
(15)概略寸法 : 約85H×113W×40D〔mm〕(実測値)
(16)発売(製造)年 : 1985(昭和60)年
(17)発売価格 : 39,800円
(18)製造・販売元 : 富士写真フィルム
 通常のカメラはフィルムを水平方向に送る。だから,一般にハーフサイズの場合は縦長の画面になっている。しかし,このカメラの画面は横長である。これを実現するためにフィルムは上下方向に送る機構になっている。
 なお,このカメラの名称はTwingというのだそうだが,現物にはそのような表示はない。

 

3.初期状態と問題点
 内蔵電池が切れていて,まったく動かない。正確に言うと,動きを確認できないのだ。カメラとは言いながら,この種のものは電気・電子製品である。この時点で把握できる問題点は
(1)電池が切れている
(2)モルトが劣化している
ということ以外にない。まずは電池を正常にしてから不具合も明確になろうというものだ。

 

4.修理(その1)
 電池の交換は「修理」とは言えまい。しかし,このカメラの場合はその交換が大変なのである。何しろ,特殊な電池を使っており,さらにこれが問題なのだが,交換にあたってはメーカまたはそのサービス業者の手を煩わさなければならなかったという。
 写真4はこのカメラの裏蓋を開いたところである。問題の電池は左端の筒の部分に格納されている。

写真4.カメラの内部(白い円内は劣化したモルト)

 その筒の部分の上下2か所のねじを外すと内部を露出させることができる。写真5をご覧いただきたい。緑色をした細長い電池が現れた。このカメラ専用の電池なのか?電圧6ボルトのリチウム電池である。
 分解した訳ではないが,内部は3Vのリチウム電池が2個直列に接続されているだけのようだ。念のため市内の量販店に行って探したが,同一の電池は見当たらなかった。
 そこで,CR123Aという3Vのリチウム電池を2個買って帰った。これを直列につないで代用品にしようという魂胆である。
 具体的にどのように構成しようか?数日間考えた。理想的な形は,電池ホルダーを作ってCR123Aをいつでも誰でも交換できるようにすることである。もちろん,その電池ホルダーは非常に薄型に仕上げなければならない。

写真5.内蔵電池

以上の構想をもって再度電池収納部分を開いた。その結果,電池ホルダーなどとても納まる空間のないことを知った。CR123Aを2個入れたらそれでもう一杯なのである。
 仕方がないので2個を直列につないでビニルテープで連結して電池収納場所に納めて両電極には古い電池からはぎとった電線付き電極を挟み込んだ。写真6である。


写真6.交換した電池(モルトも貼り替え済み=白い円内)

 なお,このとき,以前の電池に巻かれていた金属の帯も同じように巻いた。これには(多分)温度ヒューズが連結されていて,万一電池が過熱したら回路を遮断するように計画されているのであろう。
 電池交換の作業に比べればモルトの交換など屁みたいなものである。例によって書道に使うフェルト製下敷きを切り取って両面テープで貼り付けた。写真6でそのことがわかるであろう。(ところが,実はこの「屁」によって泣かされることになったのである。)

 

4.使い方
 特に難しいことは何もない。
フィルムを入れて蓋を閉じると,ジャーと音がしてフィルムの巻き上げが始まる。プレワインディングである。パトローネに納まっているフィルムを一旦すべて巻き上げてしまい,写真を撮るたびにパトローネに巻き戻す方式である。この方式の利点は: ①撮影途中に万一裏蓋が開いても撮り終わった部分のほとんどが救われる。また,プレワインディング時にフィルムの長さを計測し,これによって②正確な枚数をフィルムカウンタにプリセットできる,と言われている。
 プレワインディングが終わったら撮影準備ができている。
まず,被写体に適合するようカメラ前面の円盤を回して,広角か望遠かを選択する。つぎに,距離を設定する。これはスライドスイッチの操作による。あとは被写体をファインダーで確認して構図を決め,シャッターボタンを押せばいい。ただし,広角の場合の近距離設定はスライドスイッチが自動復帰型なので指で押さえたままシャッターボタンを押さなければならない。
 問題というか,変に感ずることを一つ。
すべてを撮り終わってもいつまでもシャッターが切れるし,広角の場合はフラッシュが発光する。気をつけなければ空打ちが何枚も発生することになる。
 ところで,レンズの下に押しボタンスイッチが2つある。一つはTV MODEであり,いま一つはBLCである。前者はテレビの画面を撮影するときのためのものであって,このボタンを押したままシャッターボタンを押すと,シャッター速度は1/30秒になり,フラッシュは発光しない。また,いま一つのボタンを押したままシャッターボタンを押すと,絞りが1段(?)余計に開くのだそうだ。いわゆる露出補正または逆光補正である。たとえば,明るい背景で人物を撮ったら顔が暗くなるが,このボタンを押したままシャッターを切ると暗くならないのである。ただし,背景が露出過多になるのは止むを得ない。
 また,このカメラのシャッターボタンの横に小さな突起がある。Cとだけ表示されているが,このボタンを押したままシャッターボタンを押すと約1秒に1回の割合で連写ができるのである。フラッシュは発光しない。ただし,一つの指で2つのボタンを同時に押すのはかなりコツがいる。

 

5.試写結果(その1)
 さっそく感度100のカラーネガフィルムを装填して試し撮りに臨んだ。
24枚撮りであるが,ハーフサイズであるからその倍の48枚撮れるはずである。しかし,実際に撮れたのは54枚であった。半自動装填であるから,手で装填する場合とは違って空送りが不要であり,また最後の最後まで使える分だけ多く撮れるのであろう。
さて,肝心な試写結果であるが,惨憺たる結果であった。光が漏れているようなのである。光の漏れ方はコマごとに違うが,その典型的な画像を写真7に示す。
 写真でおわかりのとおり,中央部やや上方と下辺部にオレンジ色の帯が横に引かれている。コマによって,中央部だけの場合もあり,下辺部だけの場合もある。また,まったく感じられないものもある。


写真7.作例

 このカメラにはパトローネを覗く窓以外にはモルトは使用されていない。プラスティックの成形で巧妙にかみ合わせる構造にしてモルトを使わないように工夫されているのである。よって,光漏れはパトローネを覗く窓から以外には考えられない。
 ただし,仔細に観察するともう1か所モルトが使われていた。写真8の楕円で囲んだ部分である。しかし,この部分が原因とは考えられない。

 

6.修理(その2)

写真8.厚みを増したモルト(白い楕円内はもう1か所のモルト)

 モルトの厚みが不足したのである。そこでDIY店に行って,厚さ5mmの黒いスポンジを買ってきた。それを加工して貼り付け,さらに前回使用したフェルトをその上に貼ったので合計の高さは6~7mmほどにもなろう。写真7をご覧いただきたい。これで光漏れを完璧に防止できるはずである。

 

7.試写結果(その2)
 今回も感度100のコダック製カラーネガフィルムを使用した。
たまたま,近くでお田植祭があったのでそれを見物がてら写真に収めた。当日は曇りで,また,お田植祭は山の中腹で行われたので樹木の影響などもあって,撮影条件は決してよくはなかった。
 実は,不届きながら小さなザック一杯にビールを詰め(本当は安い発泡酒だったが),それだけでは物足らず温めた酒を魔法瓶に入れて赴いた。春とはいえ,山はまだまだ肌寒いのである。もちろん,運転はできないので電車・バス・徒歩という交通手段となった。
 まずは,電車を降りてバス停でバスを待つ。定刻にバスが来た。乗客は小生一人。行き先を告げながら座席に座ると,そのバスは目的地には行かないとのこと。あわてて降りて,時刻表を再確認。どうも変だと思うのと同時に当日は平日だということを認識した。――そう,その日は平日で,仕事を休んだのであった。自分が休みなのですっかり土日と思い込んで休日の発車時刻を見ていたのであった。
 それでも20分ほどして目的地方向に行くバスが来た。写真9をご覧いただきたい。市営の小型バスである。大手のバス会社が採算が取れないため撤退したので住民サービスのため市が始めたらしい。

写真9.市営バス
 乗ったのは小生一人であったが,間もなく老女が3人乗り込んできた。バスの運転手とは顔なじみのようであり,雑談が弾んだ。しかし,ほどなくその3人が下車したため,再び乗客は小生一人となった。運転手との会話が始まった。丁度桜の満開の時期であって,その土地の有名な桜を紹介された。
 しかし,このバスは小生の本来の目的地までは行かなかった。しかたなく歩き始めたのであるが,途中川岸に水車があったのでさっそく写した。写真10のとおりである。かなりいい具合に写っていると思うのだが,どうだろうか?煉瓦一つひとつの色の違いが出ていていい。ただし,全体的にやや荒っぽい感じがする。
 この水車,単なる観光目的のものか,実際に何かの仕事をしているのか?残念ながら,先を急いでいたので詳しく調べないままその場を離れた。何しろ,神楽がもう始まりそうなのである。距離と時間を考えると間に合わないのは確実だが,一刻も早く到着したいのであった。


写真10.水車

 神楽は始まっていた。「御崎」という演目が演じられていた。さっそく写真を何枚か撮ったのであるが,何しろ場所が悪く,暗く,さらに被写体が軽快に動くので満足な写真が得られなかった。それでも,写真11でこの場の雰囲気を感じてもらいたい。


写真11.神楽「御崎」

 お囃子はいつもの太鼓,鉦,それに笛であった。後で知ったことであるが,2人の娘さんは地元の高校生だとのこと。写真12をご覧いただきたい。正面から撮った写真もあるのだが,何分本人等の承諾を得ていないので後姿で我慢していただきたい。とにかく,高校生でこれだけ立派に笛が吹けるのは大したものだ。いや,それ以前に長時間正座できることだけでも素晴らしい。
 写真撮影のため,広場の周りをうろついていたが,写真12が撮れる場所に腰を据えた。
腰を据えたのでビールでも飲もうかと思っておもむろに周りを見回すと,そんな人は一人もいなかった。そんな中で自分一人ビールを飲む勇気はない。そういえば,数年前にもまったく同様のことを経験したことを思い出した。すっかり忘れていたのである。
写真12.お囃子の3人

 間もなく神楽は終わり,1時間の休憩をおいてお田植祭が始まった。毎年同じであるが,面白い。(正確に言うと,毎年見ているわけではない。)小生は特に牛が好きだ。写真13をご覧いただきたい。かつて田んぼを耕すための労力として動員された牛である。もちろん,お田植祭の牛は本物ではない。しかし,その牛の怠ける様がなかなかユーモラスなのだ。目がまたかわいい。


写真13.お田植祭の牛

 お田植祭は①畦(あぜ)切り,②田打ち,③畦塗り,④田鋤(す)き,⑤種蒔き,⑥田植え,⑦孕(はら)み女・うない,⑧田誉め,の順に行われる。いずれも現代の若者以下の人たちにとっては想像すらできないかもしれない。小生は農家の生まれではないが,子供の頃近くの田んぼで毎年繰り返されていた作業を実際に見てきたのでほぼ理解できる。写真13は④の「田鋤き」の場面である。
 最後に出演者全員が輪になって2周した。⑧の「田誉め」である。こって牛も回っていた。写真14である。


写真14.お田植祭の最終場面

ここでは省略したが,子供達の演ずるのが可愛らしくてなかなかいい。写真14では空色の衣裳を着けている。

 

8.おわりに
 ハーフサイズであることから,「メモ代わりに撮る」という感覚で試写に臨んだ。細かいことは考えず,広角・望遠を適宜切り替えながら撮った。
 ほとんどのハーフサイズカメラは縦長の画面であるのに対し,このカメラは横長である。そのため,普通の35ミリカメラと同様の感覚でファインダーを覗き,構図を決めることができた。
 いつもはシャッターボタンを押すと,ジャーと音がするのであるが,半分ほど撮ったとき,カチッと音がしてジャーと鳴らないことがあった。おや?と思いつつそのままつぎの写真を撮ろうとしたら赤い発光ダイオードが点灯した。つまり,露出不足の警告である。電池が外れてフラッシュ回路に充電できなくなったのかと思い,振動を加えたりゆすったりしたが駄目であった。しかし,冷静に考えたら発光ダイオードが点灯しているのだから電池が外れているはずがないことに思い至った。
 いろいろ悩んだが,結局シャッターボタンを強引に押すとジャーと音がしてフィルムの巻き上げが行われた。(「強引に」というのは言葉のはずみでそう表現したまでで,操作としてはただ単に押しただけである。デジタルカメラと違って,フィルムカメラの場合はシャッターボタンを押すとき非常に慎重になるのである。)
 原因ははっきりしないが,このカメラのシャッターは一つのボタンでシャッターの開閉とフィルムの巻き上げの2つのスイッチを押しているのではなかろうか?で,2つのスイッチの動作位置にわずかな違いがあり,シャッター開閉のみ起動され,フィルムの巻き上げが起動されなかったのではなかろうか?あくまで推論である。このようなことは完全機械式カメラでも起こることがある。シャッター羽根は開閉してもフィルム巻き上げ拘束が解除されないことがあるのである。シャッターボタンは一気に深く押し込まなければならない。
 その後は撮影できたのであるが,終わりごろになって変なことに気づいた。それはフィルムの残りの表示が 23枚あたりで止まっていたのである。本来,シャッターを切るたびに残りの枚数を確認すべきであるが,数字が小さく場所も暗かったのでそれを怠ったのである。50枚ほどは撮れるということで油断したことも一因であろう。
 残り枚数がわからなくなったのであるが,それでもヤマ勘で「もうそろそろだろう」というときに撮影を止めた。その結果,空打ちは1~2枚程度に収まった。
 断っておくが,試写の前にダミーのフィルムで一連の動作を確認済みであった。そのときは異常なく動いたのである。原因はやはり不明だが,不安定なところがあるのであろう。
 肝心の写真の写りであるが,ハーフサイズということで多くを望まなければ結構使えるのではなかろうか?それは試写結果をご覧になればお分かりいただけると思う。

参考文献
(1)歴史的カメラ審査委員会編:「日本の歴史的カメラ(増補改訂版)」,日本カメラ博物館,2004

■2013年5月16日   木下亀吉

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