わたしのカメラ三昧 第22回 「オリンパスペンD」


1.はじめに
小生の部屋の棚にはたくさんのカメラが並んでいる。長い間放置しているので皆ほこりをかぶっている。何気なくその中の1台を取り出したところ,それはオリンパスのハーフサイズカメラ,ペンDであった。(写真1参照。)

写真1.オリンパスペンD

フィルムを巻き上げ(る操作をし)てシャッターボタンを押し,もう一度フィルムを巻き上げようとしたら,ダイヤルが回らなかった。<あれ?このカメラたしか健全なはずだったが,壊れたかな?>
数日して軍艦部を開けてみた。
写真2.軍艦部をあける

開けるのは簡単だった。フィルム巻き戻しクランクの下2本,フィルムカウンタの中心軸1本,それにハンドストラップの付いた方の側面の1本の計4本のねじを外せばよい。巻き戻しクランクの部分は分解不要であった。なお,フィルムカウンタの中心軸のねじは逆ねじなので要注意。
しかし,肝心のシャッターの動作不良の原因に関しては,子細に観察したがわからなかった。
一旦元に戻して,翌日今度は正面からレンズを外し,シャッター羽根をベンジンで拭いてみた。すると,カチッと音がしてシャッター羽根は一瞬開いた。何のことはない。シャッター羽根が固着していたのだった。(写真3参照)

写真3.レンズを外し,シャッター羽根を見る

すると,このカメラは不動品を手に入れてそのままにしていたのだろうか?では,修理しようと思い,写真を撮ってパソコンに格納すると,何とすでにこのカメラの写真が収められていた。しかも写真4でお分かりのとおり,シャッターまで露わになっているではないか。

写真4.シャッター

何となく思い出したが,詳細はどうしても思い出せない。修理ノートをひもといてみたが関連する記録は見当たらなかった。とにかく,写真4が残されていたということは不動品であったことは確かである。しかし,修理できていたのかどうか不明。
いきなり修理の話になってしまった。今回はこのオリンパスペンDをご紹介しよう。

2.仕様
まず,このカメラの仕様を見ておこう。例によって間違いがあるかもしれないことをご承知おき願いたい。参考にした図書を「参考文献」として収録しておいた。
(1)名称:PEN-D
(2)型式:35ミリハーフサイズレンズシャッター式カメラ
(3)適合フィルム:135判
(4)フィルム送り:背面ダイヤル巻き上げ,クランク巻き戻し
(5)フィルム計数:減算式,最大72枚
(6)画面寸法:24×17 mm
(7)レンズ:Olympus F.Zuiko,1:1.9,f=32mm
(8)ファインダー:逆ガリレオ?
(9)距離調節:手動,最短撮影距離0.8 m
(10)露出調節:手動,f1.9~16; セレン式単独露出計を搭載
(11)シャッター:B,1/8~1/500秒
(12)シンクロ接点:あり(アクセサリシューなし)
(13)電池:不要
(14)質量:約435 g(実測)
(15)寸法:約65 H×105 W×50D〔mm〕(突起物を除く実測値)
(16)発売(製造)年:1962(昭和37)年
(17)発売価格:13,000円(ケースは別に800円)
(18)製造・販売元:オリンパス光学工業

 以上のとおり,距離,絞り,シャッター速度のすべてを設定できる(見方によっては「設定しなければならない」)完全マニュアル機であり,大口径レンズを使った高級機でもある。セレン式の露出計が付いているのが助かる。

3.問題点
 最初に述べたとおり,このカメラはシャッターが固着していた。シャッター羽根をベンジンで洗浄したら良くなったのだが,翌日操作したらまた動かなかった。
 洗浄が不完全だったのだろうと解釈して,再度洗浄した。シャッターは快適に切れるようになった。翌日も問題なかった。
 しかし,さらにその翌日操作してみるとやはりシャッターが動かなかった。<これはシャッター羽根の単なる粘着ではない!>
 また,実際フィルムを装填して撮影しようと思うとモルトの状態が気になった。
よって,改めてこのカメラの問題点を以下の2点に設定した。

(1)シャッター羽根の動きが悪い。
(2)モルトの劣化が著しい。

4.修理対応
 まず,シャッターが切れなければどうにもならない。
フィルム巻き上げ動作に続いてシャッターボタンを押すという操作を何度も繰り返し,シャッター羽根の不完全な動きを示すときの状況を子細に観察した。
その観察の途中で,ごくまれにフィルムを巻き上げ終えてもさらに巻き上げができる状態のあることがわかった。普通はフィルムを巻き上げたらそれ以上巻き上げることができなくなる。その拘束機能が不完全になっているのであろう。さらに重要なのは,このときにシャッターが正常に動かなくなるということが判明したのである。
 そこで軍艦部を開けて内部の動きを観察することにした。写真5をご覧いただきたい。トップカバーを外し,露出計も外したところである。露出計は3本のねじを外せば簡単に外せた。単独露出計であるから本体との電気的,機械的な連結がないのである。

写真5.問題の連結部

この状態でフィルムの巻き上げ動作とシャッターボタンを押す操作を繰り返し,内部の機械の動きを詳しく観察した。
その結果,写真5でフィルム巻き上げダイヤルの手前にある赤と白に着色されている金具部分の動きが何となく怪しいことがわかった。この部分を細い棒で動かしてやると動作が正常になるのである。
最初はよかったはずだから油切れが原因だろうと考え,注油してみた。ついでにいろんな場所にも注油した。しかし,状況は改善されなかった。
ところで,赤白の塗料のようなものはねじを覆っていた。緩み止めのようである。とすると,ここは微調整する場所であろう。そうであれば,その微調整が何らかの理由でずれたことが考えられる。
そこで,思い切ってこのねじを動かししてみた。
しかし,簡単には改善されなかった。それでも試行錯誤を繰り返した後,何とか二重巻き上げが拘束されるように調整できた。(正直に言うと,完璧ではなかったが,ここに説明するのは難しいので省略する。しかし,それも組み立て終えると完璧になっていた。なぜ?―それは追及しないことにしよう。)調整後はねじが緩まないようにボンドを付けておいた。問題(1)が解決。
つぎにモルトであるが,これはただ単に粛々と作業すればよい。特に難しいこところはない。
まず,劣化したモルトを丁寧に取り除いた。このとき竹で細いヘラのようなものを作って使った。これはなかなか使い勝手がよかった。
つぎに,数年前に100円ショップで買った習字の下敷きの残りを裁断して両面テープで張り付けた。
以上で問題(2)も解決した。

 

5.使い方
このカメラの使い方はごく標準的なものであり,改めて説明することはない。しかし,フィルムの自動装填,自動巻き上げ・巻き戻し,さらにAE, AFしか知らない人には難しいかも知れない。
ただ,つぎの2点だけ指摘しておこう。

(1)フィルムカウンタの初期設定
このカメラのフィルム計数は減算式である。したがって,フィルムを装填したらそのフィルムの最大撮影枚数を設定してやらなければならない。24枚撮りなら48に設定する。もちろん,撮り始めたら,指示される数字は「残り枚数」である。便利であるが,初期設定を忘れたら役に立たないことになる。

(2)フィルム感度の設定
このカメラにはセレン式単独露出計が搭載されている。これを有効に使うには事前にフィルム感度を設定してやる必要がある。設定目盛りはレンズ鏡胴の付け根部分のカメラの底に近いところにある。ASAとして10から400までの目盛りがある。ASAは現在のISOである。
実は,はずかしながら小生はこの設定を確認せずにかなりの写真を撮った。撮りながら,シャッター速度と絞りの関係がどうも変だと思い続けた。何のことはない。この感度設定が若干ずれていたのだ。
なお,露出計の指示はLV値である。

6.試写結果
修理・手入れが終わったので試写してみた。ASA100の24枚撮りカラーネガフィルムを装填した。
写真6は公園のシマウマである。1メートルほどから撮った。距離は目測だが,まあまあ良く撮れているではないか?朝8時半頃で,やや逆光であったが曇っていたので事なきを得たようである。背景のボケも丁度よく,シマウマの顔から胸にかけて浮き上がって見える。

写真6.シマウマの像(近距離)

つぎに中程度の距離で撮ってみた。写真7である。
この日もあまりいい天気ではなかった。ポストまでの距離はおよそ4メートルほどだったと思う。屋根の下なので露出が難しいが,搭載されている露出計を使って満足に撮れた。
写真7.郵便局前のポスト(中距離)

余談だが,最近この形のポストが少なくなった。都市部では見かけない。小生の住んでいる場所から最も近いところにあるポストまででも10 kmほどはあろう。田舎に行けばまだ少しは残っているということになる。所要で田舎に行くといつの間にかこのポストを探している自分に気づく。何と言っても愛嬌と言うか,親近感がある。色もいい。真っ赤でないところがいい。
さて,最後に遠距離から撮った写真をお見せしよう。写真8をご覧いただきたい。
石のアーチ橋である。距離は∞に設定。被写界深度をできるだけ深くして撮影した(つもりである)。何しろ橋の手前から向こうまでを写さなければならない。
この写真をよく見ると欄干が崩壊しているのがお分かりいただけるであろう。この夏の洪水の被害を受けたのである。橋の近くに建設の記念碑が立っており,それには「大正十二年三月竣工」とある。今回のこの被害が初めてのことだとしたら,89年ぶりの大水害だったということになる。
それにしても美しい橋である。もちろん,危険なので今この橋は通行止めとなっている。

写真8.石橋(遠距離)

7.終わりに
正直言って,ハーフサイズだからそこそこ(我慢できる程度)の写りだろうと思っていた。しかし,実際に撮ってみてこのカメラの描写力には感心した。35ミリフルサイズと遜色ないのではなかろうか?はっきり言って,ペンシリーズの最高峰と目されているペンFよりいいのではないか?
ただし,距離が目測なのが難点である。とにかく写ればいいということなら被写界深度を深くすればいいのだが,やはり被写体によっては浅くしたいことがある。そんなとき,ピントが気になるのである。この点は一眼レフであるペンFの方が安心。このカメラは単独露出計が付いていることだし,ついでにレンジファインダーも載せて欲しかった。

参考文献
(1)白松 正:「カメラの歴史散歩道」,朝日ソノラマ,2004
(2)アサヒカメラ編集部編:「広告にみる国産カメラの歴史」,朝日新聞社,1994

■2013年1月25日   木下亀吉

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