トイカメラの教科書 第55回「トイカメラの上達方法その10 多重露光の応用」

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こんにちは、雨樹一期(あまきいちご)です。ようやく少し涼しくなりましたね。これからしばらくは撮影日和。コスモスの開花が待ち遠しいです。
さて、今回は多重露光の応用のお話しを。多重露光の基本的な方法については、ここでも何度か書かせて頂いています(コラムの第34回を参照下さい)。ちなみにTOPの向日葵と観覧車の写真。パッと見では気付かないかもしれませんがこれも多重露光です。
念の為、説明しますと『多重露光とは、複数の画像を重ねる撮影方法』です。重ね過ぎると何だか分からない写真になるので、基本的には二重露光をするのですが、それでもごちゃっとした写真になりがちです。そこで、そんな問題を改善しつつも不思議な世界を創り出す方法をご紹介します。

スプリッツァーを使う
まずLC-A+なら撮影アクセサリーのスプリッツァーを使います。これは露光範囲を意図的に決めることが出来るものです。
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多重露光というより、分割して撮影という感じですね。たとえば下半分に花畑を撮影、上に観覧車を撮影すると、TOPの写真のようにあたかも花畑の向こうに観覧車があるかのような撮影も可能になります。
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また露光される範囲をかなり絞ることも出来るので、細かく変えながら重ねていくと面白いかもしれません。

このアクセサリーは定価2,500円ほどでお安いのですがLC-A+専用なので、LC-Aや他のカメラには使えません。そんな方は黒のビニールテープを使いましょう。スプリッツァーと同じように隠して撮影すればいいだけ。黒のテープが光を遮ってくれます。
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上の写真はまずは全面に空を撮影(スピリッツァー未装着)。その後、上半分に観覧車を撮影しました(下半分を隠している状態)。
まるで天空に観覧車があるように見えますよね。半分隠したからといって、きっちり中心で半分に分かれるというよりも、自然に繋がっているような感じになります。観覧車が雲の中に消えて行くように表現されていますね。
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こちらは上半分、下半分で分けて撮影しました。 過去コラムでも失敗しない多重露光の方法は花と重ねること、と書きましたがスプリッツァーを使用しても同じですね。花のない場所に花を咲かせることが出来るのもいいですね。観覧車や太陽の塔は僕的にはとても好きな被写体なのですが、ただ撮るだけではなくて+αの何かが欲しいです。花畑越しにあれば嬉しいのですが、そう都合良く花も咲いていませんからね。そんな時にも使えます。

【注意点】 花を真っすぐ撮ったなら、観覧車も真っすぐ撮ること。上や下に角度をつけて撮影すると重なり方も不自然になります。


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こちらは子供の横顔を接写撮影。その後に斜め半分隠して、髪の毛の部分に「猫と観覧車」の風景を撮影しました。これも普通に重ねると、子供の顔の部分にも風景が写り込んでごちゃごちゃとした写真になってしまいますよね。スプリッツァーを使うことでシンプルに見やすくすることが可能です。 頭の中で【あの猫ちゃんどうしてるかな〜】ってなことを思い浮かべているような不思議な写真が出来上がりました。

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露光を遮ることさえ出来れば、どんなカメラでもこの方法は使えます。

・ スプロケットロケット
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・ HORIZOM PERFECT

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多重露光といっても、ただ重ねるだけではなくって、アイデア次第でいろんな表現が出来るようになります。思い通りに重ねるのは難しいですが、いろいろチャレンジして下さいね。 まずは、半分ずつ撮影からチャレンジしていくのがいいかなと思います。


さて、ここからは8月に東京で開催したワークショップの参加者が撮影された写真をご紹介。一日目はレッドスケールの制作で、二日目は多重露光で開催しました。これがなかなかの力作揃い。

■レッドスケール制作ワークショップ

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使用したフィルムは、ロモグラフィーの100と800のフィルムです。800の方が赤みが強くなりますが、カメラによっても違いますね。

■多重露光ワークショップ
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使用したフィルムは富士のC200。廃盤となった、コダックのエクタクローム、エクストラカラーです。折り紙をグラデーション風に重ねたり、花や空、逆光を意識して頂きながらの撮影。

ワークショップは両日とも東京タワー近辺で開催しました。同じ場所とは思えない写真になりましたね。フィルムの色味や多重露光ということだけでなく、被写体選びも変わるのかもしれませんね。 暑かったけど、楽しいワークショップになりました。僕は時間の都合もあって、多重露光を撮ることが出来なかったので、また皆さんの写真も参考にリベンジしようと思います。てことで、下見のロケの時に撮影した、レッドスケールの写真を少しだけ。
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今年は尾道、東京でワークショップを開催しましたが、10月には本拠地の大阪で開催致します。
デジタル世代の今、フィルムは生産終了や値上げが多いのですが、それでもまだまだたくさん売られています。新たに販売されることもあります。こちらのコラムでも何度か書いていますが、フィルムにはいろんな種類があって、どれを使うかで、また現像方法を変えることで、色味や雰囲気もガラッと変わります。これがフィルムの醍醐味でもあります。
それを楽しんでもらえるワークショップを開催です。
こちらで発色に特徴のあるフィルムを10種類ほど準備、それぞれの特徴をお話した後、くじ引き形式で選んでもらって、撮影に出かけます。


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【日時】 10/16(日) 13時〜16時まで
*10/30(日) 13時〜ボダイジュカフェにて講評会+500円で参加(参加自由)
【場所】大阪淀屋橋の教室で講座後に撮影会
【料金】 5,500円 (税込み)
*フィルム+現像+写真のプリント(Lサイズ)+データ化(16BASE)料金込み。
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雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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