雨樹一期のトイカメラの教科書 第47回 トイカメラの上達方法その6「フィルムの特性を知る」

こんにちばんは、雨樹一期です。トイカメラの上達方法も今回で6回目。約半年続けて来ました。写真初心者の方なら、ちゃんとした先生にしっかりと個人レッスンで教われば、その日が最も上達しますが、半年〜1年の間も色んなことがしっかりと理解出来てくるので、ぐんぐんレベルアップ出来る時期です。
僕も出来ることなら直接指導して、そこで上達して頂けることが一番嬉しいです。全国をまわることはなかなか出来ていませんが、大阪を中心に教室や個人レッスンもおこなっているので、ご参加、お声掛け頂ければ嬉しいです。来年は東京や広島、他にもどこかでワークショップをいたします。このコラムを読んで頂ける方にもいつかお会い出来れば嬉しいです。
とはいえ、このコラムでもしっかり読んで実践すれば、ちゃんと上達出来る様に書いていますので、どんどんステップアップして頂ければと思っています。
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さて、前回は「カメラの特性を知る」でしたが、今回は「フィルムの特性を知る」です。 フィルムはどのフィルムを使うかによって、鮮やかさやコントラスト、色味や柔らかさが変わります。それは現像方法によっても変わります。今回はとっても重要なお話です。
トイラボさんでのフィルムのスキャニングは無補正 つまり、フィルムそのままの色味を出してくれます。逆に言うと、『好きな写真家さんの色味にして欲しい』ということは出来ません。その写真家がどのフィルムを使っているのかを調べて、そのフィルムを使いましょう。 初心者の方は勘違いしがちな部分なので、もう少し言うと、『LOMO LC-Aで撮れば全部ド派手な色になる!』なんてことはありません。「爽やかに撮りたい」、「ノスタルジーな雰囲気がいい」、「派手にしたい」、それはフィルム選びからです。ここがめっちゃ大切。というか面白い部分ですね。同じカメラでもフィルムを変えるだけで、色んな色合いや雰囲気で撮影が出来るんですから。

大切なのは、『自分がどの色味が好きか、どんな風合いで撮影したいか』です。お気に入りのフィルムを見つけることが、フィルムカメラの上達に不可欠です。

そこで今回は、僕がオススメするフィルムとその現像方法をご紹介します。
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『ローライクローム200CR Proのリバーサル現像』
ふんわり ★★★★★
鮮やかさ ★★☆☆☆
ノスタルジー ★★★☆☆
ドリーミー ★★☆☆☆
面白さ ★★☆☆☆

以前のコラムでも「これいいですよー!」と紹介しましたが、その後もずっと僕の中ではメインとなっています。描写はふんわり柔らかく、発色もしっかりと出ます。少し明るめに撮るのがオススメ。被写体も選ばずで、何にでも合いますね。デジタルでは表現出来ないフィルムならではの柔らかさなので、手放せません。オススメ度でいうと満点です。
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『FUJI PRO400Hのネガ現像』 ふんわり ★★★★☆
鮮やか ★☆☆☆☆
ノスタルジー ★☆☆☆☆
ドリーミー ★★★★☆
面白さ ★☆☆☆☆

定番で常に持っておきたいフィルムです。ハイキーの走りとなったフィルムで、発色は低彩度。青〜緑被りします。このフィルムも明るめに撮るのがオススメ。 僕はLubitelやHORIZONによく使用します。LC−Aよりも、フィルムの一眼やNATURA CLASSICAのように、しっかり撮れるカメラとの相性がいいですね。かわいいをさらにかわいく撮れるフィルムです。
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『FUJI PROVIA100Fのクロスプロセス現像』 ふんわり ☆☆☆☆☆
鮮やか ★★★★★
ノスタルジー ★☆☆☆☆
ドリーミー ★☆☆☆☆
面白さ ★★★★☆

トイカメラの上達方法の第三回でご紹介しました。やはり外せない一つ。青空は緑〜青味が強くなり、バラなどの赤も強烈な発色をします。全体的に強めの緑被りをするので、ポートレートにはあまり合いません。可愛く撮るのは難しいですが、格好よく撮れます。色味ですが、順光なら青に、逆光なら緑に転びます。

クロスプロセス現像は博打要素もあるので、失敗することもありますが、想像以上の写真が撮れることがあるので、面白いですよ。
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『Lomo chrome Turquoise XR100-400のネガ現像』
ふんわり ★☆☆☆☆
鮮やか ★☆☆☆☆
ノスタルジー ★★★★☆
ドリーミー ★★☆☆☆
面白さ ★★★★☆

僕自身使用頻度もほぼなく、オススメという訳ではないのですが(笑)。デジタルにはない発色をするので、一度くらいは使ってみてもいいかなーというフィルム(もちろん気に入れば何度でも)。

天気が悪くて撮影テンションがあがらない時に、意外な活躍をしてくれることも。ロモグラフィー曰く、『淡い色はアクアブルー、空を撮ればゴールデン色』。でも、トイカメラ教室でサンプル写真を見せながら「ゴールデン色になります」って言ったら、全員の頭の上に「ん?ゴールデン?」というクエスチョンマークが。確かにゴールデンではないですが、赤というかオレンジというか茶色というか、とにかく独特の発色をします。
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『FUJI Velvia100のリバーサル現像』
ふんわり ★☆☆☆☆
鮮やか ★★★★★
ノスタルジー ★☆☆☆☆
ドリーミー★☆☆☆☆
面白さ ★★☆☆☆

これまた使用頻度は少ないのですが、外せないリバーサルフィルム。コントラストは強く鮮やか。特に赤の発色が強く、夕暮れ撮影時には大活躍してくれます。トイカメラ特有の周辺光量落ちと夕暮れの描写はたまりません。

ただ、少し堅い写真になるので、ふんわり感を出すのは難しいです。ポートレートや動物よりも、花や空向きですね。
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『nostalgie red のネガ現像』
ふんわり ★☆☆☆☆
鮮やか ☆☆☆☆☆
ノスタルジー ★★★★★
ドリーミー ☆☆☆☆☆
面白さ ★★★☆☆

フィルムを反転(裏表を逆に)して撮影することで、オレンジ〜赤の発色をします。かつて、ロモグラフィーから「Red Scale」という名称で販売されていました。ローライからも「Red Bird」という名称で販売されています。ノスタルジー感がたまりません。

上記のフィルム写真は、僕がフィルムを反転して詰め替え、パトローネの写真までを自作したものです(第36回のコラムにて制作方法も書いています)。

『Lomo chrome Turquoise』と同じく、天気の悪い日に大活躍してくれます。明るめに撮影することで、赤とオレンジ以外も少しだけ発色します。
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ということで、オススメ&特徴の違うフィルムを6点ご紹介しました。使用頻度こそ違いますが、どれも僕にとっては必須なフィルム。『Lomo chrome Turquoise』だけは、面白さでチョイスしてみましたが。
今回のコラムで伝えたかったことは、「自分自身が撮りたい雰囲気の写真は、フィルム選びから」、ということです。
好きな雰囲気のフィルムがあれば、一度それを購入してみましょう。店舗ならビックカメラやヨドバシカメラ。ネットショップならどれも購入可能かと思います。

さて、今年も残りあとわずかですね。次のコラムはまた来年となります。来年はまたワークショップや個展を予定していますので、お近くの方はぜひ会いにきて下さい。大阪では「フィルムトイカメラ教室」の二期生を募集いたします。もろもろの詳細はブログにて(http://amaki15.com/blog/)
寒くなってきましたが、風邪などひかれぬようご自愛下さい。ではでは、よいお年を。


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雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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