雨樹一期のトイカメラの教科書 第43回 トイカメラの上達方法その2「これだけは知っておきたいフィルムの注意点」

こんにちばんは、雨樹一期(あまきいちご)です。前回に引き続き、トイカメラの上達方法です。と、その前に、今回は「フィルムの注意点」についてです。写真の腕よりも大切な部分ですので、ここもしっかりおさえておきましょう。

フィルムとは光の情報を記録する感光材料です。いきなりややこしくてすいません。とりあえず、なるべくサラリと書いておきます(笑)。飛ばしてくれても大丈夫です。
フィルムは、デジタルカメラでいうと、イメージセンサー(撮影素子)になります。イメージセンサーは光の情報を電気信号に変えます。
イメージセンサーには大きさがあり、「フルサイズのデジタル一眼レフ」は35mmのフィルムに相当します。なので、フィルムからデジタルに移項する方はフルサイズの方が馴染みやすいです。
「APS-Cのデジタル一眼」はコストを抑えるために作られたもので、小さいイメージセンサーになります。その為に35mmフィルムとは焦点距離が変わります。同じレンズを使っても写る範囲が変わります。電気屋でデジタル一眼やレンズを見ていると、店員さんが「35mm換算で~」と訳のわからない説明をしてきますが、まさにこの部分。フィルムを知らない方にとってはややこしい話です。混乱します。
とまぁ、そんなややこしいメカニズムはさておき。

フィルムは光に弱いです。光に当たった部分は真っ白になります。カメラに装填する時にフィルムを少し引っ張り出しますが、その部分は撮影が出来ません。撮影途中でカメラの裏蓋を開けても同様です。カメラの右側に巻き取られている部分は、全てがダメになるわけではありませんが、目視出来る部分はアウトです。
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飛行機のX線にも気を付けましょう。預けた荷物は強いX線にかけられるので、手荷物で持って入りましょう。感度1600などの高感度フィルムは、X線を通さずに目視で見てもらうのが無難かもしれません。X線を通さない袋などがありますが、中身が見えないことで、逆に強いX線を当てられる結果になるらしく、オススメは出来ません。
逆にそれを活かした撮影方法もあります。わざと光に当てちゃうんです。フィルムでしか出来ない撮影方法ですね。荒技でもありますが面白いです。その方法は、いつかじっくりと書きたいと思います。
撮影途中に間違って裏蓋を開けてしまっても、諦めないで現像に出しましょう。思いの他、いい感じの写真になることもあります。
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フィルムは現像に出すまで確認が出来ないのが難点でもあり、面白い部分ですが、「何も撮れていなかったー」ということがあります。原因は2つあります。

【シャッターが開いていなかった】
フィルム装填前に、シャッターがちゃんと開いているか確認しましょう。電池残量がなくなっていると、シャッターも開きません。
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【フィルムが巻き送られていなかった】
フィルムはしっかり装填しましょう。空回りしていたら、一枚も撮れません。フィルムを入れたら、巻き送る際に巻き取りレバーが連動して動いているのを確認する癖を付けましょう。
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この2点は注意しておきましょう。僕はフィルムカメラ一年生の時に、どちらもやっちゃったことあります。


次に、フィルムには期限というものがあります。フィルム初心者の方にとってはこれが意外かもしれません。魚や肉みたいにすぐに悪くはなりませんが、生ものと考えましょう。
期限は製造されてから2〜3年くらい。それもちゃんと保存していればの話です。高温多湿など、保存状態が悪ければもっと短いです。たとえば、真夏の車の中に置いていたら、すぐに劣化します。スナック菓子が湿気るようなものです。
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【期限が切れるとどうなるか】
フィルム特有のザラ付きがひどくなり、鮮やかさがなくなります。程度にもよりますし、トイカメラは逆に期限切れで味が出ることもありますが、基本的には期限内に使いましょう。保存状態が良ければ、期限が過ぎてもさほど劣化はありません。
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【保存方法】
リバーサルフィルムは保存状態が悪いとすぐに劣化します。ネガやモノクロに比べるとデリケートです。購入したら冷蔵庫に入れておきましょう。
また、「冷凍庫」に保存すれば期限が切れても大丈夫です。僕は生産終了した貴重なフィルムを冷凍保存しています。多いのは、コダックのリバーサルフィルムや富士のタングステンフィルムです。『ここぞ!』という時に使います。使う時は前日に冷蔵庫で解凍してから使用しています。
撮影済みのフィルムも同様です。現像に出さずにいつまでも置いておかず、なるべく早めに現像に出した方がいいです。数本まとめて現像に出したいなどの理由ですぐに出さない時は、念の為に冷蔵保存しておきましょう。
また、カメラにフィルムを入れたら早めに撮りましょう。出来れば1ヶ月~3ヶ月以内。特にフィルムの伸びている部分は弱いです(1枚目の写真の赤いラインの部分)。たとえば、15枚撮影したところで止まっていたら、その前後は劣化が早いです。そこだけ色が変わってしまうこともあります。
ちなみに、冷蔵庫をフィルムが占領すると妻や母親などに怒られます(笑)。僕はフィルム専用の冷蔵庫があります。
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これも光同様に、わざと期限切れフィルムを使うこともありです。たいていは失敗しますが、これがうまくいくと思ってもいなかった色彩になります。
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フィルムを入れたら感度設定も忘れずに。ホルガなど、安価なトイカメラには設定がありませんが、露出がオートのLC-Aや一眼は、つい忘れがちです。
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『シャッター確認➡︎フィルム装填➡︎巻き送りの連動を確認➡︎感度設定』

失敗のないように、一連の流れを癖にしておきましょう。以上が、これだけは知っておくべきフィルムの注意点です。


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雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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