雨樹一期のトイカメラの教科書 第38回 「フィルムカメラの魅力」


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こんにちばんは、雨樹一期です。今年もあっという間に3月。これからどんどん暖かくなってきますね。長かった冬ともおさらば。やってきました、撮影の季節です。
さて、今回は珍しく文章メインのコラムになります。自分としてはとても大切なことを書いていくつもりなので、通勤電車や待ち時間、就寝前にでも読んで頂ければ嬉しいです。
いまはデジタル全盛期です。フィルムを知らない人もいますよね。存在そのものを知らない方もいて驚きます。

どんな時代も、何かが伸びると一方で対抗勢力みたいなものが出てきます。それは小さくても強いもの。
同じように、デジタル主流の今はアナログの良さが際立っています。好きな人はどんどんフィルムにのめり込んでいきます。僕もその一人。
対抗勢力と書いたけど、別にデジタルに勝とうとは思いません、戦いを挑みません、否定もしません。今回のコラムではフィルムの魅力を伝えたいと思います。

まず、どちらかを好きな人は一方を否定しがち、らしいです。僕は直接否定されたことないけど、よく聞きます。そんな文章も見かけます。助言というより否定です。どっちもカメラと写真ということには変わりはないんですけどね。
フィルム好きの中でも、「アナログプリントしないとフィルムで撮った意味がない」と言う人もいます。確かにモノクロの銀塩プリントはなんともいえない味があるので、言いたいことは分からないでもないけど、フィルムで撮った意味がなくなるわけではありません。

トイラボさんは、フィルムを郵送してそれを現像。そこまではアナログですが、スキャニングしているので、デジタルデータになります。完全なアナログではありません。でも僕は写真をいろんな方と共有したくて、ブログやFacebookで公開するので、それがとても便利です。アナログプリントだとそれが出来ませんからね。アナログプリントしても、それをスキャニングしたらそれはもうデジタルですから。

デジタル化するとフィルムの良さは少しなくなるかもしれませんが、それでも充分その良さは残ります。なので、トイラボさんは、僕のスタイルと一番合っています。写真なんて自分のスタイルでいいと思います。言ってしまうとただの趣味ですからね。自分が楽しければそれでいい。他人のスタイルを間違っていると言うのはお門違いですよね。

ではフィルムの魅力を書いていきますね。

それは不便で、手間がかかること。いきなり短所ですよね(笑)。でも、いまどきの洋風な一軒家より古民家が好きな僕は、その手間が好きです。
フィルムを選んでカメラに装填、シャッターを押す感覚、巻き戻す瞬間。現像を待つ間のドキドキ。全てが楽しくて、「あーー、写真を撮ってるなーー」と強く感じます。
デジタルだと、どんな条件下でもオートで撮ってくれるし、少し設定を変えれば済みますが、フィルムは始めの『フィルム選び』も大切だし、シーンによってはフィルターも必要です。撮影にもいろいろ手間がかかります。
それが面倒臭いって方はフィルムとは合ってないのかもしれませんが、写真のことを知るにはフィルムの方が勉強にもなりますね。
デジタルはカメラ任せで気軽に撮るだけなら、あまり勉強になりません。でも突き詰めていくと、いろんな設定が出来て、ある意味フィルムよりもややこしいです。

僕が一番好きなのはフィルム選びです。被写体に対して、どういう色味で撮ろうか、どういう世界観で撮ろうか、と考えている時間が好きです。
色味や描写、柔らかさはフィルムによって変わります。現像方法によっても変わります。カメラによって変わります。それがとても面白いです。
以下はほんの一例です。
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「このフィルムだとこんな色味になるから、このアングルで撮ろう!」とか、フィルムによって撮り方も少し変えています。初めからその出来上がりをイメージしているから、シャッターを押す瞬間にも、その場にある空気感を閉じ込めようとします。それも結果に影響していると思っています。
そしてワクワクしながら現像に出します。待つという楽しみが出来ます。結果に愕然とすることもあるし、思い描いたように撮れている時もあります。時には、想像以上のものが出来上がる時もあります。その瞬間の楽しさと嬉しさは、他に変わるものがありません。

次に、これは感覚的なことですが、フィルムの方が写真に暖かみが出ます。たとえばアナログのレコードとか聞くと、いい音だなーって、心がホッとする感覚ってありませんか?それは僕が幼い頃、その音の中で育ってきたからかもしれません。針を乗せた時のバリバリって音も好きです。これって僕の年代(1970年代生まれ)だからこそ分かる感覚かもしれませんね(笑)。平成生まれの方にはアナログの感覚ってあまりないのかもしれせん。
でも自分が幼い頃のアルバムはフィルム写真だと思います。父親が頑張って使い方を覚えて撮った写真(想像ですが)を見ると、暖かみを感じませんか?少しザラっとしていて、ピントが甘いからかもしれません。時間が経って色褪せたからかもしれません。愛情がそのままシャッターに伝わっているからかもしれません。その中にはいろんな要因があると思います。
旅行で撮影したフィルムを楽しみに現像に出して、帰ってきたらロクな写真がなくて、母親が怒ったかもしれません(笑)。そんな全てが、暖かさになるんだと思っています。それが、ほぼ自己完結してしまうデジタルとの大きな違いです。

もっと単純で極端な話。デジタルがパキっなら、フィルムはボヤっです。僕の使うフィルムカメラはトイカメラが中心なので、さらにボヤボヤっです。
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ボヤっと写るのは性能が悪いともいえますが、それくらい不完全な方が愛着もわくんですよね。フィルムカメラは可愛いデザインも多いです。クラシックカメラって故障していてもう撮れなくても、そのボディーが芸術品です。って、もはや写りは関係ないですね。

僕はデジタルのパキパキになかなか馴染めない気持ちもあります。でも動くものを撮ったり、室内で撮るとき、商品撮影はデジタルじゃないと困ります。仕事でもたいていの企業はデジタル前提で納期を決めてきます。フィルムで撮って現像に出している時間もありません。あがりが分からないので怖いです。待つ時間は、ワクワク<不安です。
その点、デジタルだとその場ですぐに確認出来るので、ちょっと違うなって思ったら、設定変えるだけですからね。素晴らしいです。
なので、仕事としてはもうフィルムの出番って少ないです。僕はフィルム前提で仕事を頂くことが多いので、まだやっていけますが、いまの時代のカメラマンはほぼデジタルです。
フィルムは、あくまで趣味や、自分のペースでの作品撮りが中心です。ただ、そこに、いつかもっと火を灯したいと思っています。フィルムが流行るムーブメントを起こしたいです。
まだまだすぐになくなるものではありません。でもフィルムの種類はどんどん減っていっています。フィルムで写真を撮ること、それはいましか出来ないかもしれません。デジタルはいつだって出来ます。だから、どうせ趣味なら、手間暇かけましょう(笑)。
あとは、フィルムはお金がかかりますね。だからこそ、一枚一枚を大切に撮るようになります。僕にとって、その大切に撮る気持ちは作品撮りにも向いていますね。

もう少しだけ続けます。つい最近のことですが、仕事でカメラの個人レッスンをはじめました。デジタルとフィルムのコースに分けています。どちらのコースにしても、教えることは好きだし、上手くなってくれたら嬉しいですが、フィルムコースで、初心者を個展が出来るまで育てることが、僕の今の目標です。どんな展示にするか、企画から展示方法まで全面的にサポートしてみたいです。
写真の撮り方や向き合い方、どうすれば上達するか、自分に出来ることはたくさんあります。その成長を見守りたいし、その達成感や、写真をはじめたことの喜びを感じて頂きたいです。それはデジタルだろうと、フィルムだろうと関係ないかもしれませんが、フィルムの方がその気持ちを強く感じてもらえる気がします。

写真を好きになると日常が変わります。天気だけでなく、空の色や雲の形も気になるようになるし、花が咲く時期にも詳しくなります。訪れたくなる場所が増えるし、見慣れた景色も違ってみえます。職場からの帰り道も、寄り道する場所が変わってきます。いつもは真っ直ぐ帰っていたけど、少し夕日が見えるとこへ行って、写真を撮って。その自然の美しさに心が洗い流されて、「明日からまた頑張ろう」って活力になるかもしれません。
僕は「自然が美しい」と、より感じるようになりました。「日常って案外ステキなことが転がっている」って思えるようになりました。
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デジタルもフィルムも関係ない感じにまとまりましたが、写真ともう少し深く向き合って頂くことで、そんな方が少しでも増えると嬉しいです。
まだフィルムで撮ったことがない方や、気になっていた方は、この記事を一つのきっかけとしてはじめてみませんか。めっちゃ楽しいですよ。


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雨樹 一期(あまき いちご)
1977年生まれ。大阪出身のプロ・トイカメラマン。観覧車写真家。トイカメラならではの色彩と、淡く鮮明な表現を自在に操り、写真を通してどこか懐かしくポエティックな視覚世界を表現する写真作家。東京ドーム『SPA LaQua』にて環境映像作品「心の観覧車」の上映。WEBや雑誌にてトイカメラコラムの連載。携帯のきせかえツール、スマートフォンのきせかえカレンダーへのコンテンツ提供。電子書籍の出版。東京、大阪、パリで写真展の開催。トイカメラ講師など、幅広い活動を展開中。書籍に「しあわせの観覧車」「一期一会」など。

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